● ベルテのバロックギター 1766年製作
製作者:ベルテ(BERTET)/(フランス) 1766年製作 まず、歴史を順に追いながら作品をご紹介してまいります。これは典型的な18世紀のバロックギターのオリジナル!(レプリカではありません)。ベルテはフランスを中心に活躍した製作家で、コメディア・フランセーズ(現在の国立劇場)と関係の深かった人物といわれています。
この頃まではギターは5コース、つまり複弦で2本づつ5組(合計10本)の弦を張っています。フレットもガットを巻きます。現在張られている低音弦は特殊なものです。表面板がネックの10フレット付近まではみ出ている点に注目。
・全長:887mm
・胴長:415mm
・弦長:635mm
・裏板・側板:メープルとウオールナットのコンビ。
・5コース(10弦)
ローゼットは羊皮紙であり、オリジナルの状態を良く保っています、全体に割れも確認されず大きなダメージも無い貴重な楽器。重量は非常に軽く、持った感じとしてはたぶんリュートと同程度の重量で、たぶんパノルモよりも30%は軽いと思います。さすがに私は恐れ多くて試奏しませんでした、これは博物館モノでしょう。価格は250万円(ギタルラ社)とのこと、あなたには高い?安い? (注:1998年現在の販売価格です)
■ 写真1 :表面板拡大。ボディのくびれが浅いことに注目。
■ 写真2 :裏面です。メープルとウオールナットのコンビ。
■ 写真3 :側面も裏面と同様のコンビです。
■ 写真4 :ネックのジョイント構造は19世紀に引き継がれますが、じつはこの楽器は凝った作りになっているようで、ヒールの部分が3ピースです。
■ 写真5 :ブリッジの装飾はオリジナルを保っています。これは左側ですが、右側にはわずかな補修がなされていました。弦はこのように2本で1組です。
■ 写真6 :ブリッジ自体の構造はリュートのそれとよく似ています、つまり骨棒を持たないわけですね。リュートのようにキリで丸い穴を空けて弦を通しているのではなく、これは下駄のような溝をあらかじめ10本分掘ったものを表面板へ接着してあります(だから表面板に接した四角い穴なのです....この写真では見えませんが)。
■ 写真7 :一般的なリュートのローゼットは表面板を彫り抜きますが、バロックギターでは羊皮紙を彫ったものが用いられます。これも傷みはほとんど見られません。
■ 写真8 :19世紀ギターはボディが薄めものが多いようですが、これはモダンギター並の厚さ。テールにボタン(たぶんストラップ用)が着いており脱着可能。
■ 写真9 :典型的なバロックギターのヘッド部(かなり凝ったものも存在しますけど)です、これはシンプルなデザイン。木ペグです。
■ 写真10 :ヘッドの裏側。表と裏にローズの板を貼ることでペグの摩擦をかせいでいます。
■ 写真11 :これを御覧いただけば、小柄なサイズを確認できるでしょう。弦長が635mmで弾きやすいです。ちなみに私の持つ6コースリュートの弦長は610mmです。
■ 参考 :このバロックギターは内部をリュートのように布で裏板同志を接着しています。