● ブレイス・マス(1800年頃製作)
製作者:ブレイス・マス(BLAISE MAST)/(フランス) 1800年頃製作
ぎりぎり19世紀ギター(笑)。よく見るとボディラインが先に紹介したバロックギターとよく似た形状で、くびれも浅いです。このギターは単弦の6本です。表面板はネックまで達しており、18世紀の名残を見ることができます。時代の過渡期を物語っているようです。
弦長は 約650mm ですが現代のギターと異なりボディがネックの11フレット付近まで膨らんでいますので事実上約640mmの演奏感覚なのです。
表面板のワレが無く、フレット(象牙製)の状態も悪くありません。側板には小さなキズが1つだけ見られますが修復済みで、この時代のものにしては じつに良いコンディションです。ヘッドのデザインは近代的ですね。この楽器は良く鳴りますよ。約200年前の楽器! およそ100万円ナリ。 (注:1998年現在の販売価格です)
・全長:905mm
・胴長:447mm
・弦長:648mm
・表面板:松
・裏板・側板:メープル(単板)
裏板・側板はツキ板ではなくメープル(カエデ)の1枚板。 装飾はアワビをカットしたものです。資料によるとドイツ(ベルリン)とスイス(ジュネーブ)の博物館にこの製作者ブレイス・マス氏の楽器が展示されているそうです。
■ 写真2 :裏面。ボディのくびれは浅く、さきほどのバロックギターのラインに良く似ています。
■ 写真3 :ブリッジの取り付け位置がさきほどのバロックギターよりもやや上に位置しています。弦は結ばずピンで固定し、ブリッジの「へり」の部分が骨棒の役目を果たします。ベアクロウの表面板が美しいです。
■ 写真4 :サウンドホールとローゼット。製作者の焼き印を御覧ください。表面板の裏側にも製作年の刻印があるそうです。
■ 写真5 :ヘッド部の拡大。19世紀ギターにはこのようにボディ全体に装飾を施したものが多く見られます。
■ 写真6 :ヘッド部裏面。この時代にはすでに機械式の糸巻きも存在したようですが、このモデルは木ペグです。ちゃんとペグワックスとかで調整しておけば調弦はカンタンです。
■ 写真7 :ヘッドの角度を示す写真です。ペグには貝の丸い装飾があります。
■ 写真8 :表面板はネックまで延び、フレットが表面板上に配してあります。
■ 写真9 :ネックは典型的な19世紀のスタイル。フレットは象牙ですが、板状なので低音部分のフレットが傷んでいるものをよく見かけます、チェックポイントのひとつです。
■ 写真10 :2L版の写真と製作者に関する資料のひとつ。