● 製作者不明 (1900年代初期)
製作者不明 1800年代後期〜1900年初頭
ここに紹介するギターは1900年前後に製作されたスチール弦のギターですが、一見するとマーチンの古いモデルに似ています。表面板のバーは3本のみのシンプルな構造です。さきのゲオルク・シュタウファー工房(ウイーン)で初代マーチン氏は1811年(15歳)から弟子入りしてギター製作を学び、やがて独立してアメリカへ渡りスチール弦ギターの世界に広く影響を及ぼすことになります。以下のギターはC.F.マーチンが1826年に帰郷(ドイツ:ザクソン郡マークノイキルヘン)して1835年頃に製作したものです。20世紀に至るまでマーチン社は独自の力木(Xブレーシングなど)を考案したりドレッドノートというボディ形状を世に出していきます(正確にはドレッドノートはOEM先のオリバー・ディットソン社の考案)。
そんなマーチンの影響がみられる1本です。糸巻きは当時のオリジナルですがグリップが象牙でベイカー社や19世紀のそれに類似しており、ひょっとしたらナイロン弦が張られていた可能性もあります。この楽器は20世紀初頭の無名のギターでさきのマーチンを強く意識したものであることがわかりますがロゼッタの装飾などから、たぶんドイツで製作されたものかもしれません。
・弦長:635mm
・胴長:30.5mm
・表面板:松
・裏板・側板:メープル(カエデ)
■ 写真 :表面板拡大。いくつかの割れの跡が見られますが修復されています。ボディはメイプルですがかなり傷んでおり内部も応急処置的な修復がなされたままです。ロゼッタの貝細工が特徴的。