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■ 008:三野勉稔 さん (東京)・・・フルフラットAスタイルマンドリン
■楽器:フラットマンドリン
■製作者:三野勉稔
■仕様:
TOP : Sitka Spruce Grade-AAA
SIDE: Flamed White Sycamore
BACK: Flamed White Sycamore
NECK: Mahogany/Ebony 5ply
Rose: Padauk
ScaleLength: 355mm
FingerBoard: Ebony(30mm:0Flet/40mm:12Flet)
MachineHead: Shaller MG-3(A-Type Gold)
TailPiece : RandyAllen Type(Gold)
■コメント:
バンドリンと平行製作を行ったフラットマンドリン。アメリカのA型マンドリンをモチーフにフルフラット構造にアレンジしてみたものです。
● 写真2:Modified X-Bracing
このFF−Aモデルは、アメリカで一般にA型と呼ばれるスタイルのマンドリンをモチーフとした物で、表面板にフル・フラット構造(つまりアーチトップではなく平面)を採用しています。フル・フラットで設計の自由度を上げることで、ブレイシング構造を研究する材料にしようと試作したものです。
● 写真3:製作の様子
今回は、最近、F型マンドリン等で採用されることの多いXブレイシングをアレンジしてみることにしました。フル・フラットにすることで設計の自由度は高くなるものの、ブリッジに掛かる絃のテンションをアーチトップの様に表面板周囲に分散することが出来ないため、構造には非常に気を遣いました。試行錯誤の結果、今回は、通常のXブレイシングを改良し、補助の力木を3本追加(Xブレイシングのクロス部分から横に延びた2本と、X開口部に設けた低音抑制用の1本)することにしました。
● 音作りとしては、バロックで使えるマンドリンを目指し、各絃、各ポジションでの音の分離を重視しました。フラットバック構造独自の残響感を失わないように、サイド&バックにはホワイト・シカモアを用い、裏板、表面板には若干のドーミング加工を施しています。ロゼッタはパドオークの自然の色合いを生かしたシンプルなものにしました。。
● 写真4:パドオークのシンプルなロゼッタ
● 写真5:絃楽器フェアに出展!
● 感想
音はまさにフラットマンドリンの音。A型というよりはF型に近い、ふくよかな音をしています。普段クラシックマンドリンを弾いている人でも弾き易い楽器になったと思っています。ただ、ネックのセット角度を設けすぎた関係で、当初の予定より表面板に掛かる力が大きすぎてしまい、若干表面板が落ち込んでしまいました。この辺は表面板の支持機構などを含め改善しなければなりません。。
● 反省点
初めての楽器製作ということで、見よう見真似の部分も多く、作ったその場から反省点が出てくる等、色々とトラブルはあったものの良い製作資料になったのではないかと思っています。木工技術、楽器としての構造等、まだまだ学ばなければならないことは沢山ありますが、これからも地道に頑張っていくつもりです。
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御感想、お問い合わせ先:三野勉稔 mitsuno@ua.airnet.ne.jp
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ホームページ: MusicSalon/Workshop -WANDERLUST-
【Webmasterより】
2001絃楽器フェアではこれらのマンドリンを鶴田も触らせていただきましたが、ちっちゃくてまるっこくてカワイイです。来場者の皆さんも興味深くこの兄弟マンドリンを御覧になっていたようです。なにしろ周りのマンドリンはいわゆるボウル型ですから目立ちますよねこりは....。ヘッドの形状で遠くからでもすぐに三野マンドリンとわかるデザイン。数々の興味深い実験も試みておられます(ワカル、ワカル、そのキモチ...ついつい手が出ちゃふのよ、ウン、ウン)。楽器は演奏だけやっていていると楽器の音色が気になって、そのうち絃の種類が気になって、その次は構造や材料が気になって.....そして、そして、気が付けばノミとカンナを両手に持っている......という、じつに不思議な世界なのです。ブレイシングやネック角度など、ふだん気になっているトコロを思う存分こねくりまわして製作し、実際に自分で弾いてそれを確かめてみる.....これは絃楽器製作の大きな楽しみのひとつなんですよね。
私もそういったココロミ(私の場合はお遊びともいふ)が大好きですが、なかなか思うようにいかないんです。しかし部分的であれうまくいったりなんかすると、楽器作りが病みつきになっちゃうワケです......。