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■ 028:「MINIGUITAR TYPE-S」
■楽器名:「MINIGUITAR TYPE-S」
■製作者:abe さん
●「MINIGUITAR TYPE-S」
Sは孫の名前のイニシャルです。孫Sは「イルカのギター」と呼んでいます。
● 製作のきっかけ:
私がギターを弾いたりいじったりしていますので、好奇心旺盛な子供にとってはとても興味があるらしく私の真似をしてギターを弾くような格好をします。随分前に買ったスケール620mmの市販のギターがあるので、それをあずけておりましたが、1歳に満たない体には大き過ぎてかわそうと思っていました。同居していない孫ですが寝る時にはギターの代わりに形の似ているプラスチックのスコップを持っていないと寝ないことを聞いて可哀そうになってしまいました。そこで、ベニヤ板でギターの形をくり抜きフレットの線を描いて糸を張った程度の小さなギターらしきものを作ってあげようと考え、カレンダーの裏に製図をはじめたところ気がついたらこんなギターになってしまいました。
孫の母(私の娘)には、孫がこのギターを壊そうが傷つけようが、けして怒らないようにお願いしています。怒られたらつまらないし悲しいですから。また、興味がなくなって触らなくなってもほおって置くように言ってあります。無理に勧めるようなことは何の役にもたちません。
● コンセプト:
2歳児向けの大きさで、とにかくギターに親しみを持てることが目的で、音色よりも頑強な構造、踏んづけても壊れないがディテールは本物志向
● ギター形状:
全長=670mm
ボディ最大幅=250mm
ボディ厚さ=60.0mm
スケール=433.8mm(通常の650mmの2/3で、7フレットの長さに相当です)
表板厚さ=4mm
側板厚さ=3mm(曲げ加工の関係で3mm以上はきびしい)
裏板厚さ=3mm
指板幅= 45mm(ヘッド側)、 指板表面は平面でなくR=300mmの曲面仕上げとし子供の手でも押さえやすい形状とした。
糸巻きは子供でも扱いやすいようにフォークギター用を使いました
● 主な材料:
表板=エンゲルマンスプルース(端材だったので木目の密度が外側にいくほど狭い。音色重視ではないにしても見る人が見ればおかしく感じるはず)
側板=アフリカンマホガニー
裏板=アフリカンマホガニー
指板=インドローズウッド
ネック=アフリカンマホガニー
ヘッド=桂
ブリッジ=インドローズウッド(指板と同じ材料)
塗装=とのこ、カシュー(クリア)、仕上げはピカール
● 調弦:
現代ギターの5フレットにカポタストを取り付けた音程にしています。弦長さが2/3で音程が4/3ですので張力は(2/3)/(3/4)=約0.89となり子供の力でも押さえ易くしています。
弦はもともとテンションの弱いEXCELLENCE CECILLIA ローS(通常36.8kg)を使っていますので、このギターでのテンションは約32.8kgです。これ以上弱めるとびびりが発生してしまうし音程が安定しません。
● 象嵌:
子供のマークになりえて好きになってくれそうなものを考え、ヘッドの中央にイルカを象嵌しました。前回の19世紀ギターのようにアワビでは難しい形状なのでメープルのバーズアイを使用しました。バーズアイのきらめきを実感するには象嵌の面積が小さ過ぎました。孫にこのギターをあげた前日に偶然にも水族館のイルカショーを観ていたので孫は大喜びでした。
● 音色:
「思ったよりも音が出る」というのが正直な感想です。こんな小さなボディで表板厚が4mmもあるような音には感じません。しかし、高音域はやっぱり弱いです。
● 製作期間:
2011年5月上旬〜2011年8月中旬、作り始めの時に孫のSは2歳未満でしたが、今(8月)は2歳になりました。
● 製作ツール:
前回投稿の19世紀ギター製作時にはアイロンがありませんでしたが、今回はドライヤーを改造して茶筒の中に装填する形状のアイロンを作りました。買いたかったのですがオークションにも出ていなかったんです。
● 製作の写真
・写真1 ボディ製作中
・写真2 完成。ラベルなど。
・写真3 ボディ裏板
・写真4 ボトム
・写真5 ヘッドと糸巻き
【鶴田より】
おじいちゃん手作りの本格的なギター。玩具を遙かに通り越して立派な作品に仕上がっていますね。お孫さんのS君もご満悦の様子。
茶筒とドライヤーを使った自作のベンディングアイロンはなかなかのアイディアツール。手身近にあるものでも工夫次第でこうやって立派に機能するわけですなぁ、スバラシイ。板厚や塗装など、全体的に頑丈にできているとのこと。裏板もピカピカ! 当分は壊れることもなく楽しめるでしょう。
ナイロン弦でもラウンド指板で、機械式糸巻きもスロテッドではなく、弦のテンションもお子様向けと、至る所に思いやりとコダワリを感じますね。
いや、それにしてもちっちゃい手でギターを抱えるS君はなんとも可愛らしい。将来が楽しみですなぁ。