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■ 034:「so-ju7f32p」
■楽器名:so-ju7f32p
■製作者:東西南北の西
● 仕様と材料
スケール=弦長374mm
スルーネック
センター部と両脇ウイング部:ホンジュラスマホガニー
ペグ:ブラックウォルナット
ブリッジピン:チーク
サドル:紫檀
フレット:黒檀
ナット:鉄刀木
背面のアボガドプレート:パープルハート
● 構造
・写真1:ボディはソリッドではなく掘り抜きのホロウ
・写真2:ネック裏は「七五三」の凹み付き
【鶴田より補足説明など】
今回はちょっと ... どころか、かなり特殊なウクレレの御紹介です。
最初の写真を一目見て、ソリッドボディ(エレキギターのような無垢材)かと思ったらホロウボディ(中空/空洞)なんですね、コレ。しかも、すべてルーターと彫刻刀による「掘り抜き」です。掘削ともいふ。二枚貝のように彫ったものを貼り合わせるのではなく、28mm程度の無垢板の内部ををひたすら彫り進むのだそうです ... ひゃ〜〜! やりすぎ!! ちなみにこのモデルでは両脇(ウイング)部分だけでなくセンター部分も空洞です。ネックやヘッドも同じノリで作られており、楽器自体がほとんど彫刻刀とルーターで作った楽器と考えるべきでしょうか。完成まで累計270時間だそうです。まいったなぁ。いや、ホントにマイッタなぁ ....
さらに驚くのは、この楽器、車の運転席で作られているということです。
作者は長距離トラックの運転手。このタイプのウクレレは8本目、「今回は四分の三がハンドル上で製作」とのこと。写真で御覧のとおり、じつにうまく新聞紙をステアリングに巻き付けて削り屑が溜まるようになっています。日本全国を昼夜走り巡る弦楽器工房なんてきいたことがありません。たぶん地球上、いや銀河系で唯一でしょう。しかも、たんに彫って作りましたというわけではなく彫塑の醍醐味が随所に顕れています。ボディのみならずヘッドの形状のごとく、全体にわたってノコとカンナと接着剤では成し得ない仕事といえます。もちろん木ペグだってオリジナルデザインで1本づつ削り出し。素晴らしい。
もう、↓この写真なんか見てたら私は泣きそうになりました。ほんとにステアリング・ルシアーが存在するのだ ....
フレットには真鍮の丸棒を使ったモデルもあるそうです。
3ピースボディのセンターはスルーネックなのですが、ボディと一体化する部分の造形が非常になめらかでむしろ柔らかみを感じます。御本人いわく「Jライン」のデザインとして部分意匠登録されているそうです。また、写真では少しわかりにくいのですが表面の仕上げがまた独特で、単純に平面に塗装してあるわけではなく、部位によってはルーターの研磨ビットでフジツボ状の凹凸面が展開されています(畳のようで心地良い肌触りだそうです)。
部材を接着していく足し算工法とは対象的な超「引き算工法」。素晴らしい。
楽器が造形作品でもあることをあらためて認識させられる作品ですな。
記事:2014.12.15