■ 製作過程の解説-4
さて、塗装です。楽器ケースは一般にはクロス張りや樹脂張りのことが多いわけですがこの時代のものは一般に黒や濃茶あるいは濃緑などに塗られています。まぁ、たいていは黒です。ほかに木地をいかしてセラック塗りで家具調に仕上げたものも見られます。200年も経過すればケースだって傷みます。現存するものはたいてい傷だらけで塗装も剥げているのが普通で、何度も塗り直したり補修されています。
楽器本体と違って耐久性を優先して塗料を選びましょうか? ヒストリカルにいくならセラックとアルコール顔料でもいいですが、このサイズだとかなり塗料代にお金がかかってしまいます。あと、私のバヤイは、
ギターを持ち運ぶ → 仲間と会う → 帰りは赤札屋へ直行 → ホッピー!
となるのでアルコールには充分注意しなければなりません。
というわけでビールでもホッピーでもダイジョウブな塗料、すなわちウレタン樹脂塗料。コンクリート壁も塗れます。しかも安価で耐久性抜群! .......... 低価格なのは助かります、正直なところ。
黒色といってもテカテカのツヤはいかにも安っぽいので「ツヤ消し」の黒にしました。以外と製品は少ないんですね。スプレーはすぐに見つかりましたがハケ塗り用の缶はなかなか見つからず、あちこち探してようやく入手しました。
上の写真はまず開閉で摩耗しそうなところから塗っています。マスキングして本体側とフタ側をはじめに塗ります。
次に目止めを兼ねて下地塗料を塗りますが、あとから塗装面の凹凸をチェックしやすいようにあえて黄色の下地塗料を塗ります。この上にさきのツヤ消しウレタン塗料をまずは1回塗ります。
はい、そして黒の塗料が完全に乾いたらサンディングして塗装面をならしていきます。こういった手順は面倒に見えますが単純に重ね塗りを続けるよりも表面調整が確実・手軽にすむのでかえって効率が良いのです。黒塗料は丁寧に処理しないと仕上がったときに恐ろしく安っぽく見えるので注意が必要です。
さあ、あとは本塗装で2〜3回塗ればおしまい。牛乳パックを縦に半分割して塗料皿のかわりに使い、ローラー刷毛でコロコロと塗っていきます。ローラー刷毛は力の加えかたと塗料の含ませ程度でかなり仕上がりが変わってしまうのでケースに塗るまえに別の板で練習したほうがいいでしょう。しっかし、でっかくて邪魔だなぁ.......。ウチの工房は狭いのでこんなもの作ったら楽器に手が付けられません...... さっさと仕上げねば。
今回ローラー刷毛を使ったのは塗装表面にシボを付けるためです。艶消し塗料もあいまってなかなか渋い仕上がりです。のちほど完成したらクローズアップした写真も掲載します。
塗料が乾いたら金具を付けます。完成まじかです。
つづく
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