● フラメンコ カンテCD:「El cante en movimiento」
品 名:フラメンコ カンテCD「El cante en movimiento」 2011年
歌:Rafael Jimenez Falo / ラファエル・ヒメネス・ファロ
取り扱い店:クレーンホームページ直販(日本ではCD媒体は当サイトCRANEのみで取り扱っています)
小売価格:3500円(消費税込み) 送料:無料 待望の再入荷!
新品/中古の区別:新品 数量限定品(在庫残り4枚)今後CDメディアでの再販予定はありません。在庫限りです。
説明:CRANEとは以前から交流のある、スペインのラファエル・ヒメネス・ファロ さん。2枚目のフラメンコのカンテ アルバム「エル・カンテ・エン・モビミエント 」の御紹介です。日本ではCRANEが初めて正式に紹介致します。曲の展開、表現手法、アレンジ、歌唱法、アルバム全体にわたって我々のかつて体験したことのないカンテの世界が展開します。古典でありながらも新しい解釈。ちょっと珍しい曲も。前回の1stアルバムも新鮮な驚きでしたが、今回はさらに洗練された印象です。国際的に活躍するアーティストとして高く評価され、近年はテレビやラジオなどのメディアへの登場や教育機関での教授活動も行うなど、その躍進ぶりが注目されています。伝統的なフラメンコを熟知してこそ成し得る、高い創造力と芸術性が9曲の大きな奔流となって、新境地ともいうべき感動を呼び起こします。パッケージに含まれる数ページわたるライナーノーツは美しく躍動感のあるジプシーのシルエットが描かれています(伝統的な杖を使った護身術)。解説はスペイン語ですが、以下に相澤女史の訳を掲載しておきます。存分に堪能されたし!
本国スペインのファロさん本人から取り寄せたCDです。送料はCRANEで負担します。
2012年に数量限定で販売したところ早々に売り切れとなり、今回待望の入荷となります(但し今回も数量限定)。
2024年4月 価格改定しました。
【収録曲】
1. La nieve y la rosa 3:21 (montanesa) 3:21
2. Tangos de la llave 4:28 (tango) 4:28
3. Pregon del mercado 3:32 (buleria) 3:32
4. Loco sin conocerte 3:50 (solea) 3:50
5. A tio Jose de los reyes el negro 4:55 (romance) 4:55
6. Terron de azucar 5:01 (guajira) 5:01
7. A Enrique Jimenez Fernandez 1848-1906 4:35 (malaguena) 4:35
8. El pensamiento 5:08 (tientos) 5:08
9. Cantes de autor 6:17 (solea) 6:17
収録時間: 41:07
以下、スペイン現地の私の友人である相澤女史が、FALOさんに関する紹介文と曲のすべてを解説してくださいました。これもまた素晴らしい!
2012.3.10
(日本語訳・編集:相澤千恵子)
■ RAFAEL JIMENEZ “FALO” ラファエル・ヒメネス“ファロ”
<略歴>
スペイン北部アストゥリアス出身、生粋のジプシーのカンタオール。多数のフラメンコアーチストのいる家族の影響を受け、幼少より歌い始める。
奨学金を受け、マドリードコンプルテンセ大学で“フラメンコ学”の講座を履修。
1995-2000年:ニューヨークに居住し公演活動を行う。
1996年:最初のCD “CANTE GINANO!“(カンテ・ヒターノ)を発表。
1998年:同CDにより、年間最優秀ディスク、最優秀若手アーチストとしてマドリード のCIRCULO DE BELLAS ARTES (美術サークル-ファイン・アート・センター)よりプレミオ・コパ・テアトロ・パボンを受賞。
マリオ・マジャ、ハビエル・バロン、ラファエル・アマルゴ、アントニオ・カナーレス、ベレン・マジャ、ロシオ・モリーナ等著名なフラメンコ舞踊団と、スペイン国内はもちろん日本を含む世界各地での公演に参加。エンリケ・モレンテの公演メンバーに加わり長年にわたり活動。
2011年10月:2枚目のCD “EL CANTE EN MOVIMIENTO”(エル・カンテ・エン・モビミエント)を発表。
2012年5月:フラメンコ批評家による、世界的名誉である賞「Premios 'Flamenco Hoy' de la Critica Nacional de Flamenco」の最優秀カンテCD部門(2011年度)でCARMEN LINARES, ARCANGELと並んで最終選考の3人に選ばれる。ちなみに、過去の受賞者はこちら。ジプシーとしても稀な快挙。
フラメンコ全般に関し幅広い知識があり、何よりもフラメンコに対する深い愛情を持っています。根底にある伝統的なものを守りながら新しい可能性を追求してオリジナルのスタイルを作るという姿勢を貫いています。たゆまぬ研究心の持ち主で、10数年にわたりクラシックの発声法を学ぶなど常に研鑽を積んでいます。
自らギターを弾き、弾き語りのコンサートも行いますが、ギターに関する薀蓄も深く、いつかギター製作や修復に携わりたいという夢(!)があります。日本製の手工ギターのファンで、これまでに日本から20本以上ギターを購入しています。
クレーン・ホームページと鶴田誠さんに対しては、最大級の賛辞を惜しまず、崇拝していると言っていいほどの惚れ込みようです。今回このCDをご紹介頂いたことに対し、大いなる感謝の意を表しています。
■ アルバム“EL CANTE EN MOVIMIENTO”について (動的なカンテ)
ひとところに留まることなく、伝統的・本質的なものを保ちながらさらに発展・進化していくカンテという意味を込めてこのアルバムタイトルをつけました。また、それぞれの曲が第一の動き、第二の動きと順を追って、最後の第九の動きまで続いていきます。
ジャケット、レーベル、ライナーノートの水彩画と手書き文字はすべてアストゥリアス在住のアーチスト、ホセ・クワドラ・サンチェスによるものです。彼はファロの少年時代からの恩師でもあります。各ページに現れている人物のシルエットがそれぞれ違ったポーズを取っていますが、これはジプシーの間に密かに伝わっていた杖を使った防衛術で、この“動き”もCDのタイトルの意味に関わっています。このシルエットは、じつはファロのお父さんのアキリノ・ヒメネスです。
1. la nieve y la rosa
雪と薔薇 <モンタニェサ>
モンタニェサとはアストゥリアス地方の伝承曲に由来するフラメンコの曲種でニーニョ・デ・ラ・イスラやアントニオ・ポソらによる録音が残っていますが、現在ではほとんどその存在を忘れられています。元の曲は2つの部分より成っていて、これまではその最初の部分のみが録音されていましたが、今回ファロがその後半の部分をブレリアの形式で再現させ、他の形式も加え曲を完成させています。
“降る雪で薔薇の花が覆われたら、この山で一番美しいものが見えなくなってしまう
降る雪で小道が覆われたら、この山で一番好きなものが見えなくなってしまう
愛する人よ 雪に足を取られたらどうしようか”
モンタニェサのメインの歌詞です。どこか俳句を思わせる情景的美しさがあります。
ファロは生まれ故郷アストゥリアスに思いを込め、この曲をアルバムの最初に持ってきました。スペイン民族音楽研究の第一人者でもあるエリセオ・パラによるパンデロ・デ・ペニャパルダ、パンデロ・デ・ペイト(四角い手太鼓)の音がアストゥリアスへと聞く人をいざないます。
ギターは最初のCDでも共演しているファン・アントニオ・スアレス・カノ。イントロ部分のみ、ブラジル人ギタリスト、フェルナンド・デ・ラ・ルアの演奏となっています。
2. tangos de la llave
タンゴ ‘鍵’ <タンゴ>
何度も現れるリフレインに“喜びの鍵をなくしてしまった”というフレーズがあるのでこのタイトルになっています。
ポルトガルとエストレマドゥーラ地方のタンゴでファドを彷彿とさせるメロディ・リズムが特長的です。デモ録音の段階では一部ポルトガル語でも歌っていたのですが、最終的にスペイン語の歌詞のみでの録音となりました。
ギターはフェルナンド・デ・ラ・ルア。
3. pregon del mercado
市場の物売りの歌 <ブレリア>
マヌエル・バジェッホに敬意を表して。
曲の特長を最大限に生かすために、一切和声楽器を使わず、踊り手ラファエル・エステベスのつむぎ出すリズムをパーカッションとして歌っています。
曲は、テノール歌手ミゲル・フレタの歌曲・アラゴン地方のホタ・果物売りの歌により構成されています。果物売りの歌の部分はマヌエル・バジェッホによって1935年に録音されていますが、バジェッホ自身踊りがうまく、録音の際には歌いながらプランタス(足のリズム)を入れていたと言われています。
4. loco sin conocerte
知り合う前からいかれてる <ソレア>
ティオ・ファニキ、ホセ・イジャンダ、ティオ・チョッサスのソレア。
これらは相対的に耳にする機会の少ないソレアです。パブロ・スアレスのコンテンポラリー・フラメンコのピアノと共に、それぞれの曲に内在する美しさが、新たな様相で見事に引き出されています。
5. a Tio Jose de los Reyes el Negro
ティオ・ホセ・デ・ロス・レイジェス・エル・ネグロへ <ロマンセ>
ロマンセとは物語歌のことですが、フラメンコの曲種の中で最も古く重要な位置にあり、ここから他の多くの曲種が派生していったと考えられています。
エル・ネグロが歌った“無理やり修道女にされた娘の話”をホセ・ルイス・ロペスのチェロにより歌っています。(過去のコンサートではコントラバスでも歌っています。)
1999年、ニューヨークのジプシーとユダヤ人のコミュニティによりアウシュビッツ犠牲者の追悼の曲としてこのロマンセが選ばれ、ファロ自身が五番街のシナゴーグで歌いました。
“家のために持参金目当てで修道院に入れられた娘
首飾りや装飾品を取り上げられ修道女の衣服を着せられる
声高く悲しみを叫ぶ無垢な仲間たち
でも私は髪の毛を切られた時ほど悲しかったことはない・・・・”
6. terron de azucar
角砂糖 <グァヒーラ>
キューバの民族音楽に由来するこの曲がスペインに渡り、フラメンコとして歌われ始めた初期の頃のリズム・メロディー・ハーモニーを再現しています。詩とハーモニーの美しい麦刈の歌が閉め歌として使われています。
ギター・ブスーキ・ベースのヘスス(クッチュ)・ピメンテルのアレンジもお楽しみください。
7. a Enrique Jimenez Fernandez 1848-1906
エンリケ・ヒメネス・フェルナンデスへ <マラゲーニャ>(ライブ)
マドリードのコンデ・ドゥケにて行われたコンサートのライブ録音です。
エンリケ・ヒメネス・フェルナンデス“エル・メジッソ”はカンテ・フラメンコの偉大な創作者の一人ですが、このマラゲーニャは数あるフラメンコのレパートリーの中でも特に詩とメロディーの美しさの際立つものです。最初にアウレリオ・セジェス、エル・フレッチャのグラナイーナ、その後にメジッソのマラゲーニャと続きます。
ギターはアルカディオ・マリン、ここではルイス・エスクリバーノによるコントラバスが使われています。
8. el pensamiento
思い <ティエントス>
エル・マルーロ、フリホネス、マヌエル・トーレ、エンリケ・エル・メジッソ、ニーニャ・デ・ロス・ペイネス、アントニオ・チャコンらのティエントス。
ティエントスはフラメンコの基本的なレパートリーですが、非常に美しくかつ難しい曲種で、最近ではややすたれた感があります。ファロは新しい音の響きとハーモニーを用いながら、曲の特徴をとらえた元来の形式で歌い、ティエントスの価値を示そうとしています。閉め歌として二拍子のサンブラが早いテンポで使われています。
ギターはアルカディオ・マリンとアミール・ハッダッド。アミールはブスーキ、ベースも担当しています。
9. cantes de autor
創作者達のカンテ <ソレア>
ホアキン・エル・デ・ラ・パウラ、アグスティン・タレガ、ファン・タレガ、マノ リート・デ・マリア、ラ・アンドンダのソレア。
彼ら偉大な先人アーチスト達のおかげで、フラメンコは現在ユネスコの世界無形文化遺産に認定され、スペインを代表する文化の一つとなり、さらには世界中の人々に喜びを与える職業として存在することになったわけです。
彼らの作品はあらゆるフラメンコアーチストの基本的なレパートリーになっています。だからこそその作品を彼らの生まれ故郷の名前“アルカラ”“トゥリアーナ”と、ひとくくりにしてしまうのではなく、敬意を表して創作者それぞれの名前をしっかりと確認するのはとても意義のあることです。
イントロ・歌詞に呼応するコンテスタシオンの部分を、最初のCDでもソレアで共演したベテランギタリスト、ダビッド・セルバが弾いています。彼の息遣いが臨場感を高めています。
ファロが歌う部分は無伴奏で、ヌディージョという指関節で板を叩いて出す音のみがコンスタントにコンパスを刻んでいます。
2012.3.10
(日本語訳・編集:相澤千恵子)
相澤氏に心から感謝申し上げます。