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■ ガット弦をつくろう:補足と資料
今後、ガット弦づくりのあらたな技法やアイディアを考案したり、耳寄り情報など皆さんからお寄せいただきましたら、このページに掲載してまいります。何はともあれ創意工夫と実行の人、LEEさんにこの場を借りて深く感謝致します。お互いにアイディアを出し合ってガット弦を作りましょう!
補足1:細くて丈夫なガット弦をつくるには
弦を縒るときにかなり強めの張力をかけると結果が良いようです。張力を変えることで最終的な弦の太さもコントロールすることができます。
補足2:リバーシブル製法
LEEさんの実験によりますと羊腸はホース状になっていますが、これを裏返して腸の内壁を表に出し、不純物を除去することでかなり良好な弦が得られるとのことです。なお、羊腸の断面は十字に裂くのではなく×に裂いたほうが強度が高いのだそうです。
補足3:耐磨耗性対策の例-1
ストランドを縒るときに反時計方向に回転させて縒ります。そうすると爪との角度がガットの縒りと交互するため耐久性が改善されます。
補足4:耐磨耗性対策の例-2
弦表面の処理を施すことで耐久性を高める方法があります。ニスやオイルを塗布して乾かします。皮膜のためのオイルは試行錯誤で自分なりのレシピを作りましょう。
補足5:ローデッド・ガット
弦の比重を高める方法の一つとして弦に重い溶剤をまぜて練り混む、という手法があります。ロードしてあるからローデッド・ガット弦ですな。この場合、金属の溶液にひたして縒ればいいのですが、たいていの顔料(絵の具)は金属や鉱石からの粉砕原料からできているので画材屋さんで入手可能です。
資料:様々なガット弦のなかま
● Florentiner Darm :キルシュナー社のFDです。ハイツイストでゲージは5220、そう! 私がよく使う19世紀ギターの6弦(巻弦VN5220)に相当します。このようにテンションの計算さえすれば太いガット弦も実現します。ギターの1弦から6弦すべてをガットにすることも可能なのです。縒りの角度に注目。恐ろしく渋い音です。個人的にすごく好きな弦です。
● Catline :キルシュナー社のCDです。つまりキャットラインと呼ばれる綱のような構造の縒り弦です。船を波止場に留めておくロープのごとくたくましく男らしいガット弦!? 昔は猫の腸を使ったという節もありますが....。この写真のゲージはCD5270といってこのメーカーの製造している最大直径。ちなみに最も細いCDはCD5070。高価なのよ、この弦は.....。
● VD(Darm/Kupfer-varsilbert) :キルシュナー社のVDです。写真でおわかりいただけるように芯材がガットでそれに金属を巻いてあります。構造上ループエンドとなります。これもけっこう高価.......自分で作ったほうが.....??
● KDL :コートしてあるガットの芯にシルクを巻き、その上に細い銅巻弦(約0.1mm)を巻いてあります。これも構造上ループエンドとなります。VDよりもやや明るい音がします。
● VN(Nylon/Kupfer-varsilbert) :キルシュナー社のVNです。もうCRANEを御覧の皆さんにはおなじみですね。但しVN5380といって異常に太いゲージです(笑)。私としてもガット弦を自作するからにはあれこれ資料として取り寄せてみたのですよ。芯材がナイロンで周囲に金属を巻いてあります。こんな太いゲージも製造できちゃうんですねぇ...... 。VNは表面の研磨指定もできます。
● KN(Nylon/Kupfer) :なぜかキルシュナー社のカタログには出ていないKNです。ぜんぜん鳴りません(笑)。でも低音弦に使うと程良くサスティーンが抑制されて消音せずにすみます。VDもそうですが古典期の曲では重宝することが多いです。KNは表面の研磨指定もできます。
● Nylgut :キルシュナー社のPEです。ガットと比重が同じで素材がナイロン。そのため天然羊腸から製造したガットに音色は近くなりますが耐久性に優れます。まあ、純粋なガット弦とは音色や感触は同じではありませんけどね。ナイルガットは各社が製造していますが音色や耐久性にはかなり差があるようです。ちなみにキルシュナー社のナイロンNRは音が良い!
● LK :キルシュナー社のLK(Luxline:ルクスライン)です。ガットに銅線を縒ってあります。以前、私が製造した極細 Luxlineのように金属とガットを同時によりあわせた構造です。写真のように製品だとこんなに綺麗(笑)。但し、死ぬほど高価でしかも受注生産のため納期に4週間程度の日数がかかります。私は大事な楽器の3弦や4弦に使うことがあります。世界に誇るプレミア弦、キルシュナー社のフラッグシップ?ともいえる堂々のマニア弦!! 鶴田にとっては別名「勝負弦」。
● LS :キルシュナー社のLS(Luxline:ルクスライン)のシルバー版です。ガットに銀線を縒ってあります。これも高価で受注生産のため納期に日数がかかります。
● D :キルシュナー社のD(プレーンガット弦)です。写真はD2250で太い!(ハープ用弦でもある)。縒りの角度に注目。ちなみにキルシュナー社の最も太いガット弦と最も細いガット弦(D1036)はこんなに違います、さすがに幅広いゲージのラインナップですなぁ。しかも透明に近い色合いです、高品質の証拠。ガット弦はパッケージに痕跡があるとおりオイルびきしてあります。それにしても鬼のように太いガット弦を買ってしまったものです...... 。
● DL :キルシュナー社のDLです。Dのプレーンガット(羊腸)弦をニス塗りして耐久性を高めたものです。「ダウンロード」の略ではありません。
とにかく他のメーカーと違ってキルシュナー社のガットは素晴らしいです。ゲージの精度といい引っ張り強さといい、めったに切れることがありません、特筆に値します。フレットガットですら柔軟で切れにくく精度も高く、他社の追随を許しません。
他メーカーの様々な弦もいずれ機会をみながら、ぼちぼち紹介していこうかと思っています。
記事:2003年 2004年更新
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