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CRANE 社会奉仕活動 |
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● 東日本大震災支援チャリティ企画:工房クレーン・オリジナル弦楽器製作家銅版画
★ 以下に掲載されている版画のほとんどは販売しています。在庫や額の有無も御相談ください。詳しくはメール(mmm★st.rim.or.jp)かフォームでお気軽にドゾ。CRANEの売りたしコーナーも御覧ください。
さて、当アトリエでオリジナル商品を企画して販売し、東日本大震災の被災地へ義援金を送ろうというものです。以前やったTシャツと同じようなアイディアですな。上の作品は銅版画で、絵柄の大きさが縦20cm、横10cmです。額縁はA4向けのサイズです。
なんで版画なのよ? というようなこまかいツッコミは置いといて、今回の版画について説明しましょう。
今まで木版画をやることは多かったのですが、今回は銅版画。世間では「エッチング」とひとくくりで呼んでいますが、実際には技法が多岐にわたり、私がやっているのは写真を元にした銅版画(フォトグラビア/フォトグラビュール/フォトエッチング)の技法を基本とします。その昔、19世紀初頭にフランス人発明家ジョゼフ・ニセフォール・ニエプス (Joseph Nicephore Niepce) が世界で初めて撮影した「写真」、じつはそれって版画だったんですね。で、それを再現したくて追実験のつもりで、独自の技法でもって銅版画で完成させたのが、次のCRANE版画作品「自画像1号」です。自宅の弦楽器工房が版画アトリエとしてもしっかり稼働しているのであります。
● フォトグラビア版画作品(自画像1号) :版サイズ73mm x 50mm 真鍮板 Ed.8部
蔵書票スタイルで作ったので、ラテン語でEXLIBRISと表記し、周囲に立ち読みする3人のシルエットを入れてみました。自分の写真を撮ってフィルムから金属の板に転写し・現像・製版するのですが、これが異常に難しく、刷るのはもっと難しい。なんたって版画というのは本来、黒か白の2色しかないので、その中間の明るさは再現しにくいわけです。何十回も失敗しては試行錯誤を繰り返し、やっとマトモそうなものを8枚刷り終えてヘトヘト。しかし、達成感は想像を超え、完成した喜びは何というべきか....
♪美しい人生よ〜♪限りない喜びよ〜♪この胸のときめきをあなたにぃい〜〜♪(松崎しげる風)
それで、あまりに嬉しくて、これを応用して文字やイラストも自在にレイアウトした独自の銅版画を作ろうと決心したのです。手描きの絵柄でも銅版画作品をいくつか作りましたが、やはり鶴田というヤツはみんなと違った独自のものをやりたいのです。ですから、個人的に昔からなじみ深い写真と文字組み(タイポグラフィ)を活かした作品作りを考えたのでした。
まずは身近にすぐに写真が撮れるということで、自画像シリーズを作ってみました。技法は純粋な写真再現の場合よりも簡略化してあります。版は銅板のほか、真鍮板を使うこともあります。必要に応じてニードルで直接版に彫り込むこと(ドライポイント)もあります。
● 自画像2号(浮世絵風) :版サイズ66mm x 50mm Ed.7部
● 自画像3号(K型 / プレートマーク) :版サイズ66mm x 41mm Ed.6部
● 自画像4号(ガルルルル... ) :版サイズ53mm x 36mm Ed.5部
● 自画像5号(ガルルルル... II):版サイズ50mm x 36mm Ed.9部
ちなみに、さきの自画像1号から5号まですべて私です。え?顔がどれも全然違うって? 私は写真写りがいつも違う顔に見えるとよく周囲に言われますが、間違いなくどれも本人です。年齢も写真だけなら実際よりは20歳ぐらい?若く見れらることがあります(本当)。ゴボウ茶のDr.ナグモ氏にも負けません。
他にも音楽仲間の竹内太郎さんとか田代耕一郎さんも作りました。当然ながら楽器の細部まで(弦の数やフレットの配置など)忠実に再現できています。
● 竹内太郎氏:版サイズ61mm x 50mm
● 田代耕一郎氏:版サイズ48mm x 97mm
というわけで、前置きが長くなりましたが(笑)、写真から版画が作れるということは、当然の流れとして私の作った楽器も登場します。なにしろ楽器の写真は今まで製作や修理で莫大な枚数を撮っていますから。
例えば、最近ではコンセプトシリーズでおなじみの Concept-7 ですね。これと、クレーン車や鳥や太陽や文字を組み合わせ、詩を書いて完成したのが次の作品「Luthier カナ版」です。
[あらゆる苦難や迷いにめげず、自然への畏敬の念をもって、我が道をゆく(ギターを作る)のだ。 そうすればきっと報われる日もくるだろう。] という意味です。世界中の弦楽器製作家の皆さん、がんばれ!という願いも込めて.... 。これ以外にも試作をいくつも作りましたが、小さい版サイズに加えて老眼も進んでいるせいか、なかなか難しいです。
ちなみに版のサイズは高さ10cmで幅5cmです。
※ 弦楽器製作家:Luthier/Liutaio 英語ではルシアーですが、イタリア語ではリュータイオ:語源はフランス語のlutherie(リューテイエ)リュート製作家から由来。
● Luthier(弦楽器製作家)カナ版 詩:鶴田 誠 版サイズ100mm x 50mm Ed.7部
オヒサマハコノミチヲテラス
オヒサマハココチヨキメグミヲモタラス
ギターノネイロ ギターノメロディー ギターノハーモニー
ギターヲツマビク ギターヲツクル ギターヲシル
オヒサマヲメザシテアルイテユク
オヒサマハコノミチヲテラス
おひさまの顔はじつは製作家自身の顔になっているのです。我が道を行くにも 運まかせ、天まかせではなく、現実には自分で努力・工夫が必要なのだ。と、相反する暗示も含まれています。さすがワシ!やはり天才は違います。奥が深い!(笑)
♪泣くのがイヤならぁ〜 ♪さぁ、あ〜〜る〜〜け〜〜〜♪(水戸黄門)みたいな...
詩には中楷書体を用いていますが、さすがに版サイズが小さいので判読も難しいです。文字ならなんでもいいというわけではなく、書体そのもののプロポーションが大事なのです。手描きでは難しい銅版画での書体の表現。写真を使う方法ならではの利点でもあります。まぁ、私にはニードル(鉄筆/針)だけで書体を描き分けるほどの超人的な彫りはできませんしね。
でも、詩を抜いてみたらどうなるだろう? かえってスッキリして素朴な味が出るかな? そう思って詩を抜いた版も作ってみました。どうでしょう?
● Luthier(弦楽器製作家)詩無し版 :版サイズ100mm x 50mm Ed.10部
カナ版を音楽仲間の友人に見せたところ、スケール感のあるテーマだから版も大きくしては?ということになり、それなら版のサイズを縦横2倍、面積で4倍にすることにしました。よし!どうせなら詩もスペイン語で描いてみたい。それが次の作品です。鳥の数も7羽から9羽になっていることにお気付きでしょうか? このほかにも線の太さや、太陽の表情、クレーン車のディテール、その他細かい部分がかなり変更されているのです。とくにギターの描写に掛けては世界中の版画家の誰にも負けませんぞ。ただ大きくなっただけではないのだ。
● Luthier(弦楽器製作家)スペイン語版 詩:鶴田 誠 訳:相澤千恵子さん 版サイズ200mm x 100mm Ed.16部
版が大きいのでフィルム転写も現像もムラになりがちで難航しました。ニードルも全体に入ってます。拡大してお見せしたいコダワリも随所にあるのですが、やっとこさ完成に辿り着いた感じ。身近な人達に完成品を見てもらったところ、すでに数部は譲渡し、好評をいただいています。スペイン語の素晴らしい訳はマドリッド在住の相澤千恵子さん、深い訳にひたすら感謝。これがないと完成しなかった。
しかし、ワタクシ、今は気力も体力も本調子ではなく、セラピーでやってるような銅版画ですので、16部仕上げるのがやっと。世間の版画家のように100部とか200部も摺れません。
ま、絵なんてのは好みが分かれるのが当然なので、一部のワカル人に喜んでもらえればいいんですよ。
※ 蔵書票/楽譜票/音楽票について:EXLIBRIS/EXMUSICIS
日本では蔵書印といって、所有する本に「私の本です」という意味で氏名の印を捺印する習慣がありました。図書館の本にも「大田区立図書館蔵」みたいにスタンプがありますね。ヨーロッパでも14世紀頃から書物は大事にされ、人に貸して戻ってこないとたいへん困ったわけです。そこで小さな紙に自分の名前や絵柄をあしらった切手のようなものが作られ、本の内側にペタンと貼られて所有者を明確にしていたわけですな。20世紀中頃まで世界中で盛んに蔵書票が作られ、日本でも普及しましたが、大量消費社会を迎え、なおかつ電子ブックが普及しつつある現代では、もはや蔵書票は本来の目的ではなく、純粋な「版画作品」として制作されることが一般的になってきています。従ってサイズも巨大化傾向にあります。楽譜票(音楽票)も同じく... 。
つまり、私の場合も蔵書票を作っているというよりは「蔵書票スタイルの版画作品」を作っているということなんです。それが私の好みの手法である写真、文字、イラストの混成というスタイルにたまたま合致しているからです。
【作家のオリジナル作品とは】
絵や版画を買って部屋に飾りたい....でも、どこで買えばいいの? 今や画廊や通販やオークションなども含めて、版画と呼べるものがどこでも手に入る世の中。しかし困ったことに、実際には贋作(ニセ物)や量産工業印刷による複製品があふれています。たとえばロートレックなどで知られる版画技法のひとつ「リトグラフ」ですが、世間では当時の作品をスキャンしてオフセット印刷(スーパーのチラシ等の量産工業印刷)で複製し、堂々と「オリジナル版画」などと偽って販売していることがほとんどなのです(美術作品的価値はゼロ)。ジクレー印刷もダイヤモンドスクリーニング/ダイヤモンドスクリーンもコロタイプもレフグラフも基本的に量産工業印刷の複製品です。
悪質なものは作者サインや限定部数(Ed.エディション)も勝手にお店が書いたりしてます。また、100年前に印刷された雑誌や作品カタログから切り抜いて「オリジナル」と謳っている例も数え切れないほど市場にあふれかえっています(ラインブロック印刷やリトグラフの一部は当時から複製だけど)。他のコーナーでも紹介しているように、私自身も古い版画を国内外で買いますが、届いてみてガッカリということもたまにあります(ハズレですな)。いまや「オリジナル」という言葉が、絵の世界ほど信用できないものはないでしょう。
では、価値ある本来の意味の「オリジナルの作品」を手に入れるには何に気をつければいいのか? 作家の作ったオリジナルの作品とは何か? 版画家の織田繁さんは以下のように指摘していらっしゃいます。
(1)その版画(絵)のデッサンや構図を画家が自分で制作。
(2)そのデッサンを基に画家が自分で原版を制作している。
(3)試し摺りを画家自身でやっている。
(4)版画の摺りを画家が自分自身で行っている。
(5)画家が自分自身で作品にサインを入れている。
OK!OK! 私の版画作品は全て条件を満たしています。当然ですな(笑)。
自分で描いて、自分で彫って、自分で刷って、自分でサインして、つまり全部一人でやって自分で満足してますからね。究極の自己満足ですなぁ、わはははは.....
というわけで、いやはや、.... カポタストもそうだけど、狭くて深い話ばっかしね、ワシ..... 。
今後、当クレーンホームページのショーケースやオークションなど、機会をみて販売しようと思います。今後、新たな作品で、面白そうなものができたら追加していけるといいなぁ、とも考えています。
まぁ、版画を作って売上げを被災地へ寄付してもわずかな金額にしかなりませんが、自分にできることで、何かお役にたちたい。没頭できることでそうできるならなおさら、本望です。
そんなわけで、ささやかですが、地道に気長に被災地への皆さんへのプチ支援みたいなことを続けたいと思っています.....
★ 上記に掲載されている版画のほとんどは販売しています。在庫や額の有無も御相談ください。詳しくはメール(mmm★st.rim.or.jp)かフォームでお気軽にドゾ。CRANEの売りたしコーナーも御覧ください。
★ 2012年上半期寄付:版画の売上げにTシャツの収益も加えて、日本赤十字社を通じて23800円を東日本大震災義援金として寄付致しました。2012年6月16日。
弦楽器工房CRANE/アトリエ・クレーン:Luthier 鶴田 誠
記事:2012.4.1、 4/22更新、6/16更新