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■ はじめに
ヴァイオリンとかピアノが弾けたらいいなぁ、なんて思ったことありません? あ、いや、たぶんクレーンホームページを御覧の方々はなんでも弾けちゃったりするでしょうから、自分で弾けない楽器にアコガレルことは有りませんか? という意味なのですが。
私はヴァイオリンの習得を断念してから十余年 .... オルガンが弾きたいと思い続けて30年 ... いまだ叶わず ...
で、ハーディガーディも弾いてみたい楽器でした。でも高額なんですよ。作りもいい加減なものばかりで ... 。国内外にわずかに製作家もいますがヒストリカルなハーディガーディ( Hurdy-Gurdy )を作っている人は皆無に近く ....
海外のお店等で見つけても象牙パーツが使われていて購入できなかったりとか。もうこれは ... 自分で作るのも選択肢のひとつと考えていました。
当初からクレーンホームページでは繰り返し書いているように、キットは初心者だけでなく、本格的な製作を目指す人にとっても材料費や工作機械の手配といった敷居が低いばかりでなく、木工の要素と楽器作りのエッセンスがすべて含まれています(一部の粗悪なキットを除く)。モノ作りの玄関がキットであるなら幸運です。楽器の種類によってはなかなか望みのキットが市販されているとは限りませんが、よくできたキットはお薦めします。
● 今年の夏(2017年7月)、クラウドファンディングでハーディガーディのキットの出資者を募っていることを知りました。もう、ビックリ仰天!
だってハーディガーディですよ!? ギターとかウクレレとかヴァイオリンぢゃなくて! もう、脊髄反射でポチッ! かくして鶴田もあっというまにクラウドファンディングの投資者となったのでありました。
クロウドファンディングはお店ではありません。何か事業を興したいとか、何か作って売りたいとか、新たなビジネスを始めたいという人がネット上で投資してくれる人を募り、不特定多数の人が少額づつお金を出し合うというものですね。さすが21世紀ですな。見返りを求めない寄付型もあれば、ちゃんと倍にして返してね、というものもありますし、今回のような物品購入型もあります。いずれもクロウドファンディングの会社が間に入っています。このハーディガーディのキットは元々は米国のオモチャのキットメーカーUGEARS社が米国のキックスターター(Kickstarter)というクロウドファンディング企業を介して提示された案件でした。そういえばアンドリュー・ヨーク氏もHOMEのLP制作をキックスターターで提示してましたね。
・これです【 Kickstarter : Hurdy-Gurdy 】・・・・(ページ内の動画に演奏例も有ります)
UGEARS社は2014年創業。UGEARS って日本語では何と発音するのでしょう? ウギャ〜〜〜ス!でしょうか。
いや、たぶん ユーギアーズでしょう。日本の公式サイトにも現時点では読み方は書かれていません。
この米国のウギャ〜〜〜ス!社は現時点で汽車やブルトーザーなど約25モデルを開発し、今後も200以上の開発予定があるとのこと。5大陸80ヶ国以上で親しまれています。
補足:2024年2月現在 アマゾンや楽天などで販売されています。
■ ハーディガーディのキットを入手しょう
その後、出資者に対してアメリカでは10月から日本では11月からハーディガーディキットの配送が開始されました。鶴田の元へキットが届いたのは2017年11月4日。そう、カポタスト製作で激戦苦闘中 ... 。11月末にカポ製作を終えてようやく組み立てることができました。ちなみに写真を撮ったり記録を付けたりしてゆっくり作って3日間で完成しました。
ちなみに現時点(2017年12月4日現在)ではクラウドファンディングに投資しなくとも、UGEARS社から直接「購入」することが可能です。海外では米国Amazonや国際的なオークションサイトeBAYで出品されています(売主や送料・関税に注意してください)。
いずれ日本でもアマゾンやウギャ〜〜〜スの日本公式サイト(機械翻訳でかなり怪しい日本語ですが)で販売されるかと思います。みなさん、為替レート変動もありますので送料や関税等比較して安いところから入手してくだされ。
いちおう数セットは工房クレーンでストックしてあるので、必要な方には工房クレーンからもお譲りできます。(在庫のあるうちは即納できます)
ちなみに UGEARS Japan では近日入荷予定で現時点では 12800円+消費税+送料 となっていますが、くれぐれも送料等を確認されたし。
2021年12月12日:日本公式サイトは閉鎖したようです。
補足:2024年2月現在 アマゾンや楽天などで販売されています。
■ ハーディガーディのキットの仕様と特徴
シナベニヤ合板を使った楽器のキット。本来、機関車やトラックのような組み立てキットのおもちゃメーカーが作っているので、過剰な期待をしてはいけません。作りもそれなりです。決してメイン楽器にして東京文化会館大ホールで弾こうなどと考えてはいけません(面白そうだけど ... だれかやって欲しいけど)。ずっと使い続けるには部品摩耗や保護塗装等の問題もありますしね。
では、たんなる玩具で「使えない」インテリアかと言われれば、それは No!です。
(ちなみにサイトによっては「立体パズル」と称して売っている)
● 要は楽器としてキッチリ使えてしっかり音を出し、快適に演奏できるようにするためには、それなりの「工夫」と「調整」が必要ということなのです。これは他の楽器のキットにも共通したヒントです。見方を変えれば、工場や製作家が作った楽器であっても、その工夫と調整の程度によって「良い楽器」になったり「ヒドイ楽器」になったりすると。良い楽器はやはりよく考えてありますし、材料も良いし、手もかかっていますよね。
さて、話をこのキットの特徴と仕様に戻して ......
・レーザーで正確にカット:さすが21世紀。しかも接着剤不要です。うわ〜〜〜!
・必要以上に凝ったギミックを採用:キットとしては「深い」です。
・糸巻は木ペグ(フリクションペグ)に見えますが、内部はギアドライブ! ひゃ〜〜〜〜〜!!
・弦を摩擦して音を出すホイール(摩擦円盤)も変速ギア駆動:ハンドルクランクが1回転するとホイールは2回転します!
・ロゼッタ内部に4個のギアが回転する演出機構まで備えています。ウギャ〜〜〜ス!
・優れたデザイン:巷の中途半端なモダン楽器とは世界が違う。スパッ!と割り切った新しい創作ハーディガーディ。21世紀ですな。
【仕様】
・部品点数:292ピース(製造はウクライナ 販売はアメリカUGEARS社)
・完成品全長:約44cm (現物は30cmぐらいに見えます)
・完成品重量:548g
・鍵盤数:6キー(G調弦するなら開放Gと A B C D E F )
・音域:メロディ弦は1オクターブ(7音)、ドローン弦は設定に依存
・弦数:2本 (メロディー1本、ドローン1本)
・調弦:A = 440Hz 開放g1調弦や開放a2調弦、d2調弦など可能。基本はユニゾン。
・弦長:254mm(鶴田の実測値)
・付属品:組立式ハンマー、弦(PVF)、輪ゴム、紙やすり、ロウ(ろうそく)、松ヤニ
鶴田が11月下旬から組立を始めて、写真撮ったりしていたので完成まで3日間。しかし、キットなのでさすがに部品の加工の手間も無く、塗料はおろか接着剤すら使わないので乾かす時間も不要とあって、「たったの3日間」。実際には弦楽器製作家の視点から強度確保とゆがみ防止のために部分的に接着剤を使ってみました(今後の組立過程で説明します)。
鶴田の場合は休日をまる一日と平日の夜間2日間を使っての合計3日間でした。時間数にして30時間ぐらいでしょうか。写真も撮らず寝ないで作れば20時間で作れそうです。ただ、模型作り等の工作に不慣れな方だと、寝ないで1週間以上かかると思います。けっこう部品点数が多い(約300点)です。
■ そもそもハーディガーディって何?
まずはハーディ・ガーディの全体像について、非常に良くまとめられた日本語のWikipediaがありますので一読すべし!これを書いた人はエライ。
・Wikipedia ハーディガーディ
ハーディガーディは楽器が高額なんですよ。弾いている人が少ない(リュート人口よりはるかに少ないかも)こともあって、作ってる人もほとんどいません。国内では過去に数艇の製作例を存じておりますが、現在では海外にいくつか工房があります。それも納期が1年以上とか。注文しても返事がなかなか来ないとか。作りが雑だとか。やたらモダンだとか。難しいカテゴリーなのです。でも、興味のある人はけっこういらっしゃる。
私も過去に入手すべく探したことがありましたが、ヒストリカルな19世紀以前の楽器は高額で手が出ず、かといって近代・現代モノはデザインが悪い。しかもいい加減な作りが多くて。以前、自分で作ろうかとも思ったのですが、ギターやリュートやヴァイオリン系と比べると難しい部分が多いんです。仕様が様々で入手できる図面も限られています。うなり駒のようなハーディガーディならではの特殊な機構もあります。
そして、なんといってもキッチリ作られた楽器ですら「調整」が難しいです(調整のコツをつかめばさほどでもない)。鶴田に言わせるとハーディガーディは「調整」で8割の音が出ている感じです。
■ たんにキットを組み立てるのはつまんない?
そういうアナタ! ドローン弦を追加したり、うなり駒を付けてみるのも面白いでしょう。
ガット(羊腸)弦に変更したり、調弦キーを変えてみたり、ユニゾンの調弦をオクターブや5度下で張ってみたり、それだけでも1ヶ月は選択の無限地獄を苦しみ ....あ、いや、楽しめます。
専用ケースを作るというのも一案です。あと、塗装されていないので独自のカラーリングも楽しいかもしれません。頻繁に使っていると黒ずんできますからクリアの塗装もいいでしょう。
■ ケガにだけは御注意ください
この UGEARS / ウギャース社のキットは組立説明書にカッターで部品を切り出すという説明があるのですが、私が実際に作ってみたところカッターは一度も使いませんでした。レーザー技術の恩恵なのでしょう。しかし、なかには外しにくい部品もあるかもしれません。また、私の独自の改造で音程修正を行っていますが、そこでは刃物を使います。カッターといえども立派な刃物であります。使い方を誤れば惨事を招きます、皆様くれぐれもケガには御注意ください。もしお子さまが製作される場合は大人がしっかりアドバイスしてあげましょう。
・この記事を御覧になって製作中に事故や怪我に至っても当方は一切責任を負いません。
・この記事に基づいて製作しても、必ずしも良い音の楽器が出来上がる保証はありません。
... ま、いちおう自己責任の表記ということで念のため .....。
■ このキットの組立て動画
2021年12月12日追記
YouTubeを検索するといくつかヒットしますが、高速再生や長時間再生など様々あります。
動画1:12分30秒 説明なしでBGMのみ. これで充分カモ UGears Hurdy-Gurdy - Assembly and Demonstration by Jeff Williams
動画2:2時間46分 英語解説付きオフィシャル動画 Ugears Hurdy Gurdy Model Kit Assembly Video || English Voiceover by Ugears Models
動画3:5分21秒 説明なしでBGMのみ. UGears Hurdy-Gurdy lasercut kit timelapse by Michel Stuyts
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