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■ このキットの組立説明書について
● 組立説明書の日本語訳(補足付き)クレーンホームページ 鶴田 20171209版
さて、従来の楽器のキットといえば工場生産ラインから抜き取った部品を箱詰めして、図面とテキトーな説明書を付けてハイおしまい。接着剤や塗料は自分で調達してね。というのが常でありました。ギターもヴァイオリンもリュートもウクレレも似たようなものでした。私も楽器のキットは結構作りましたので、こういった昭和方式のキットには慣れていたつもりでした。
だが、しかし、But!
この歴史的ともいえるハーディガーディ ( Hurdy-Gurdy ) のキット。いかにも21世紀です。まず図面がありません。接着剤が要りません。
構成としてはこうなってます。
シナベニヤの合板をレーザーカットした部品が8枚です(各部品はハンガーボードと呼ばれる部品板にしがみついている状態)。付属品と組立説明書の冊子。じつにコンパクトです。
【 2ページ 】
横に長〜〜〜〜い組立説明書の表紙が1ページめであり、それをめくった2ページ目がコレ。
11カ国語で書かれていますが日本語は無し。ダイジョウブ、日本にはCRANEがあるさ。
サクサクテキトーに訳しますた。
Manual:
Remove model parts from the hanger board as illustrated below.
Careful not to break parts.
If a part does notremove easily, carefully cut it out with a knife.
This model is intended for self-assembly without glue.
If you have difficulty installing the axles, try waxing them with a regular candle.
All moving parts can also be waxed during assembly to reduce friction when operating the model.
図で示されているように、ハンガーボードからモデルパーツを取り外します。
部品を壊さないように注意してください。
部品が簡単に取り外せない場合は、ナイフ/カッターで注意深く切り取ってください。
このモデルは、接着剤を使用せずに完成するようにできています。
車軸の取り付けが困難な場合は、付属のロウ(ワックス)を塗ってみるといいカモ。
ハーディガーディを演奏するときの摩擦を減らすため、すべての可動部品には組立中にワックスを塗っといたほうがいいよ。
また、右下にはロウソクに火を付けて使うな!とか、とんがった部品でケガしないようにね!と書いてあります。
ちなみに付属のロウソクのほかにもっと細いロウソクがあれば作業がはかどります。ウチの工房では非常災害用のちっちゃいロウソク(直径7mm)を常備しています。
【 3ページ 】
いくつかのアイコンとその意味があれこれと書かれています。あたりまえのコトが書いてはあるのですが、いちおうテキトーに(#またテキトーかい?)訳してみました。以下ドウゾ。
ひととおり書きましたが、忘れていただいてもかまいません。製作の過程のつど私が説明しますので(#をひをひ!)。
【つまようじ歯車アイコン】
Wax the part with a regular candle(rub with a candle).
ろうそく(付属している)をこすり付けてちょ。
アイコンには爪楊枝を使ってありますが実際にはロウが崩れてポロポロこぼれるのでこうはいきません。あくまでロウソクをグリグリ押しつけてこすりつけるのです。部位によっては細いロウソクがあったほうが作業は楽で確実に塗れます。
【紙やすりアイコン】
Sand to remove burrs.
紙やすりでバリを除去しときなさいよ。
と書いてあります。アイコンは150番の紙やすりですが、付属してくるのは 240番。
【松ヤニアイコン】
Rosin. Brush over with rosin.
松ヤニ(付属している)をむらなくこすりつけるよ〜に。
サイコロサイズの松脂が付属しますが、こすりつけるときにポロポロ崩れやすいので、何か敷物があったほうがいいです。
【板挟み禁止アイコン】
Do not fully press the outer parts(structural frame) together until checking for fit and alignment of internal parts.
内部パーツのはまり具合や位置合わせを確認するまで、外側のパーツを完全に押しちゃダメよ!
つまり、複数箇所の爪を一度に挿す場合などは慎重に!ということです。
【板挟みアイコン】
Press the parts as far as they will go.
キッチリ収まるまでグイッと部品を押すのだぞ。
ときに思い切り強めに押すべき作業(箇所)もあります。
【びっくりアイコン】
Pay attention. Check for correct orientation or positioning.
注意すべし。正しい方向または位置を確認してください。まぁ、このアイコンを見た途端に気がゆるむ人はいませんわな。
【カッターアイコン】
Cut crosspieces before removing the part from the board.
ボードから部品を取り外す前に部品が板にしがみついた部分をカットしてください。
そう書いてありますが、鶴田はこのキットで一度もカッターのような刃物は使いませんでした。
【風車アイコン】
The part should be easily rotated(moved).
この部品はスムーズに回転しなければならぬのじゃ。確認してね。
つまり、わかりやすく言うならば、接着しちゃったらこの部分は動かなくなるよということでもあります。
【小槌アイコン】
Auxiliary model "hammer". Use for rigid connections.
ビシッ!と確実に組み立てるためにこの部分はハンマーでブッ叩くように!
部位によってはハンマーの広い側と尖った側を使い分けたほうがうまくいきます。ハンマーというと日本人は広い側を使うと思っている人が多いかもしれませんが、細く尖った側のほうが効果的な場合もあります。
【鶴のクチバシ部品】
This is not a structural component; it is a tool for measurement and assembly.
これはハーディガーディの部品ではありません。 測定と組立のためのツール(治具)です。
7番の部品板に含まれています。部品をハンガーボードから切り離す時に使用すると便利です。
● じつはこの楽器のキットの組立説明書では文字による説明はほとんどありません。ほぼすべて 図と記号のみ なのです。
言語に依存しない説明書、ヨロシイと思います。
それでも、終盤の一部の38ページに説明の文章が少し出てきますので、以下に挙げておきます。
【P-38】
Use the fishing line supplied.
・付属の釣糸を使用してください。(フロロカーボンの弦が付属しているので半分に切って使う)
まぁ、図を見てのとおりではありますな。
Attention! Do not confuse. Attention! The set includes rosin - it is used to increase
・注意! 混同しないでください。 注意! セットにはロジン(松ヤニ)が含まれています。
....と書いてありますが、「ロウと松ヤニを間違えるな」と言いたいのでしょう。
■ 先にやるべきコト
まずは7番の板にある「部品抜きツール」を板から取り出してください。
これがあればカッターは不要です(たぶん)。個体差によって部品の取り出しに手こずるようであればカッターを使うとよいでしょう。
シナの合板とはいえ天然の木材を重ねた板なので繊維の状態は均一とは限りません。レーザーでカットしてあるとはいえ多少の差違はあるでしょう。
このキットには組立式のスタンド部品板の7番に「部品抜きツール」が組み込まれています。組立説明書の手順とは異なりますが、まずはそのスタンドを作ってください。
なお、このキットでは行程ごとに使う部品が何枚目(何番目)の板にあるかを表示してあります。
● スタンドの組み立て方
このキットのクセを知るには単純な例から始めるのがいいのです。クセというより、組み立ての「言語」というべきでしょうか。どのキットのメーカーにもそれぞれの法則があるのです。
このキットには組立式のスタンドが組み込まれています。さきの部品抜きツールと同じ部品板の7番にスタンドの部品もあります。
組立説明書の手順とは異なりますが、まずはこのスタンドを作ってください。
このスタンドは楽器が完成したのちハーディガーディのディスプレイや撮影に重宝します。
(1)組立説明書の37ページを開きます。
(2)部品板の7番から部品抜きツールを使って 107番、108番、109番 の3つの部品を取り出します。
(3)組立説明書の図に示されたとおりに組み立ててください。底面は二重の溝があります。
(4)オシマイ。完成ですな。
如何でしょう? 問題無くスタンドが完成したでしょうか? あとで本体が完成するとこんな感じに使えます。
さて、いったん楽器の組立説明書を離れて「ハンマー」の組み立てを行います。
● ハンマーの組み立て方
ハンマーなんか家にあるよ、それを使えばいいじゃないか。そう思う方もいるでしょう。しかし、これもキットの「言語」を知るにはとても良い例なのです。
ハンマーについては楽器とはまったく別の独立した部品板が用意されていいます。組立説明書もハンマー専用です。このメーカー UGEARS で販売している他のキットにも付属して使えるように開発されたものでしょう。
(1)ハンマー専用の組立説明書を開きます。
(2)ハンマー専用の部品板から部品抜きツールを使って 1番と2番、そして3番と4番 の2組の部品を取り出します。
(3) 5番と7番 の部品を取り出して柄に組み込みます。このときドットのある面に注意してください。
(4)同様に 8番と6番 の部品を取り出して柄に組み込みます。これもドットのある面に注意してください。
(5)いったんここまでの作業を確認します。
少し浮いて隙間があるようなら力を入れてグイッ!!!と押し込んでください。ときに力技も必要なのです。
割れそうでコワイ!という御意見も頂きましたが、このキットは良くできていて、めったなことでは割れません。
(6) 9番 の部品を1枚取り出して11番の部品3本を挿します。
9番は5枚ありますがどれも同じです。10番も9番と形状は同じですがロゴが書かれています。
棒状の11番は切れ目の方向に注意してください(3本とも切れ目はタテ方向)。
(7) 9番を重ねた上に10番(ロゴ入り)を重ねます。
(8)いったんここまでの作業を確認します。
(9)向きに注意して柄と頭を合体させ、12番のクサビを2本打ちます。
柄と頭の向きを逆に合体しても問題なさそうですが 向きの確認作業を「習慣」づけるべきなのです。
組立説明書はじつによくできていて、とにかく図をよく見て「方向」を確認する習慣をつければミスは起こりにくいです。
(10)オシマイ。ハンマーの完成です。
さぁ、予行練習も終えたところで、いよいよ本体を組み立てましょう。
■ 失敗しそうなトコロ
・ハンマーでも説明しましたが、楽器で同様、とくにクサビ部品です。似で異なる部品がいくつもの板にあります。確実に番号を確認したほうがいいです。
・8枚をずらりと並べて置いたほうがわかりやすい:8枚の部品板から部品を取っていくうちに隣の部品がポロリと落ちて「これは何番の板にあったの?」ということになると面倒ですぞ。
・向きに注意:ドットや矢印や番号やロゴの向き、形状の向き、などで部品の向きを指定してあります。それに気付かないとミスになり得ます。
・ホイールの摩擦面は非常に重要:ヴァイオリンの弓のように弦をこする役目を果たすので、なめらかに仕上げたほうがいいです。そのためには組立説明書の手順どおり最後に摩擦面に紙やすりをかけるのではなく、なるべく早い時期(2枚の部品を併せたとき)に摩擦面に紙やすりをかけてなめらかにしておいたほうがいいです。最後にやると作業しづらいです。
・糸巻き部分:ギアを使った特殊な構造ですが、平行であるべき部分が多いので傾かないように注意してください。
・力を必要とする部分もあります:合板なので比較的丈夫です。とくに糸巻きあたりの平行板を貫く部品を挿す作業やネックとボディの合体では慎重な思い切りがあればうまくいきます。
丸い軸受部品に + の穴が開いた部品がよく登場します(薩摩藩パーツですな)。これらはレーザーで正確にカットされているのですが、木材の収縮とレーザー熱等でわずかな変形があります。そのため、いったん十字の軸に入れようとしてキツイ場合は無理に入れると割れます(ロウを塗っても割れることがある)。そんなときはいったん抜いて90度または180度向きを変えて挿してみましょう。
■ 接着部分について(自己責任部分)
このキットでは接着剤を使わないのがウリでもあります。PL法のような安全上の問題もあるのでしょう。しかし、弦楽器製作家の視点からみると強度を確保しておきたい部分も見られます。あとで修理することも想定しつつ、私は部分的に接着剤も使いました。分解する予定のない箇所は接着剤を使う、というふうに考えると良いと思います。逆にいえばあとで修理や調整で分解する可能性のある箇所は接着しないということです。また、回転部分を接着してはいけませんので、慎重に。
いずれにせよ本来のコンセプトと異なるので、接着剤を使う場合は自己責任にてお願いします。
くれぐれも「はがし液」を必ず傍らに置いておきましょう。
※ 工作の初心者の皆さんは接着剤は使わないほうが失敗無く組立がスムーズにいきます。とくに回転部分の軸は接着してしまうと相手の軸穴に入りづらくなります。そうなると精密ヤスリ等での修正が必要になる場合があります。
※ 完成して弾いてみて、それから接着剤を注すというテもあります。
・ハンマーのクサビ周辺
・ホイールの軸
・ホイールの2枚の貼り合わせ
・6本のキー(それぞれ2枚を貼り合わせて1本のキーになっている)
・ハンドルの軸
・ハンドルのノブ
・糸巻き2本(先端のクサビを除く)
・その他必要に応じて
■ その他
※ 組立説明書ではこまかく書いてありませんが、全ての歯車の歯には充分にロウを塗りつけたほうがいいです。なめらかに動かすには重要です。
※ 部品板に印字されている部品番号の + は予備パーツ です。スペアともいいますな。例えば 15+ は15番部品の予備という意味です。
組み付け中に割れたり紛失した場合には予備パーツを使ってください。比較的小さな部品に予備が用意されています。
※ ピンセットや竹串あるいはつまようじもあれば重宝します。
※ 紙やすりは付属しますが、別途 #120番か#150番ぐらいのものが1枚あれば作業がはかどり、らくに進みます。
う〜〜〜ん、いまのところこれぐらいで充分。あとは本体を作りながら補足していきまするるるるるるるる。
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