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■ メロディ弦にミュートを追加する
このページでは補足の3として、改造例を挙げておきます。
補足というぐらいなので、あってもなくても大きな問題ではなさそうですが。まずは比較的作業の容易なメロディー弦を消音する機構です。
どういうことなのか? 説明のための動画を撮ってみましたので、まずは御覧ください。
【作業手順】
動画を見て「なんだぁ、これだけかぁ」と思われたかもしれませんが、これがあると調弦のときに激しく便利です。
但し、リフトアップした状態で無理にフタを開けないように ... 。ちなみに標準ドローン側はリフトアップした状態で無理にフタを閉じてはいけない造りになってますな。
(1)なるべく本来のキットの材料を使うことにします。部品板5番を用意してください。
え?とっくに捨てた? 無ければ割り箸でも結構! 似たような形状のものが作れればよいのですから。
(2)部品の73番の周囲を使うことにしました(#同じ部品がとれるので3回まで失敗できるしね)。
およそ12mmの長さで切り取ります。カッターだとたいへんなのでノコがあると早いです。
そしてキーボックスのフタの内側にしっかり接着します。
合板は接着剤を吸い込んでしまうので多めに接着剤を使うか、仮接着+補強の2回に分けて接着するとよいでしょう。
作業中は紙などでサウンドホールを塞いでおくこと(部品を落としたら面倒)。
弦を引っかける位置がフタの中央より少し右側(キー側)にくるように。
(3)そして忘れてはいけないのがココ。メロディー弦が引っ掛からないように修正タンジェントの頭を丸く削っておきます。
修正タンジェントを付けていない人は削る必要はありませんな。
(4)というわけで、接着剤が乾いたらフタを戻して操作してみましょう。
弦高調整(サドルの高さ)やコットニングによって弦の高さが変わるので、私の動画のようにスムーズにいかない場合もあります。
これも調整次第です。調整って大事なんです。
この小さな部品の切り欠き部分(弦が挟まる部分)は、あともう少し隙間が開くように紙やすり等で広げても良いでしょう。
広げすぎると弦が下に下がりホイールに触れてしまいます。これもまた調整ナリ。
■ ドローン弦を追加する(番外編の板外弦)
以下は特殊な工具を必要とし、なおかつ難しい作業ですので上級編です。修理や製作の経験者向けです。
そもそもこの楽器の場合はメロディー弦とドローン弦が1つづつあれば充分なのですから。
作業中に板が割れて剥がれる部分もあるので補修の技術も必要です。
上記のメロディ弦のミュート設置に手間取った方はこちらの作業はやるべきではありません。
くれぐれも自己責任にて。
● 最初に完成イメージの動画を御覧ください。弦長は 293mm になります。
● 準備するもの:ハンドドリル、4mmまたは4.5mmビット、ペグ、ペグシェーパ、ペグリーマ(この写真には写っていません)、15mm厚の板材、糸ノコなど。
なお、ペグ穴を開けるヘッドの位置はこの写真の位置を参考に(ちょっとでもズレると既設の糸巻き歯車に干渉します)。
【作業手順】
(1)まずペグを用意します(無ければ作ります)。やや長めに軸を作り、卓上ボール盤かハンドバイスで弦穴を上下二カ所に開けます(#ここがノウハウなのだ)。弦高の調整は弦の巻き取り量によって微調整できるようにしておきます。ウチの工房クレーンで過去にドローン弦を備えた5弦ウクレレを作ったことがありましたが、それと同じ原理です。
ちなみに、部品板には予備部品としてペグも残っていますが、軸の経が大きいので利用を断念しました。工夫すれば使えないこともないのですが。
(2)ペグの軸受けとなるブロック(今回は15mm厚の洋梨材)を挟み込むようにタイトボンドで接着します。
ハンドドリルで穴を開けます(このとき貫通した板の面が割れて剥がれますので補修します:前もってカッターで平行切り込みすれば多少防げます)。
そしてリーマでペグと同じテーパをつけます。但し、リーマは長さがあるのでペグ側も調整しながら合わせます。
(3)今度はエンドピン(テールピース)側です。どこに弦を留めるか? 当初は写真のように既存のテールピースに結わえようとしたのですが、やはり弦高が低すぎることになりホイール摩擦面まで角度が高すぎてノコギリ音しか出ません。
それで、別途テールピースを増設することにしました。仮の弦を張って音を出しながらエンドピン(テールピース)の位置を探ります。
(4)エンドピン(テールピース)の位置が決まったらテールピースを付けますが、ここで四角い板とかテキトーに作るとデザインの統一感が無くなります。かといって強度は確保せねばなりません。それで、ひとまず部品板の端材を使ってみることにしました。スペアパーツの候補を調べると、使えそうなものが唯一ありました。そう、ハンドルのノブのパーツ 104番 + です。しっかり接着 ... しましたが ... 御覧のとおり。
(5)張力 3kg ぐらいまでなら使えていましたが、さらに巻き上げると割れました。というわけで端材を使って強度のあるテールピースを作りまおします。ただ、これもやはり短絡的に四角とか丸とかの形状は避けて、このキットのデザインの言語にならうほうが良いと判断。それで、さきほど壊れたパーツを元に形状修正して作ることにしました。型を写し取って糸ノコで切り出して1.8mmの穴を開けます。そしてさきほどと同じ位置に接着します。
(6)どうせなら、ということでミュート(消音)機構も作ります。これもなるべく本来のデザインを損ねないように部品板からとることにしました。弦をひっかけておくだけの単純な構造ですが、むしろこれは候補の箇所が多すぎて迷います。切り出して表面板に接着します。
(7)よし! 調整して完成です! 弦高はペグに巻き上げる弦の位置でいくらでも変えることができるスグレモノです。ホイール側にサドルがないのですが、予想以上にしっかり調整できます。弦を張って一発で良く鳴るもんだから自分でもビックリしたりなんかして。
(8)1号機改造完了。2号機にも同様にドローンを増設しますた。2号機はペグ形状を変更してロープガット(キャットラインCD5136)を張ってみました。
こうすれば出来るハズ、とわかっていても実際に完成して音が出ると感激します。長年製作や修理をやっていてもやはり嬉しい瞬間です。
● 試運転
この改造したドローン弦は弦長が 293mm です。本来の弦長は 256mm ですから約4cmほど長いです。え?たった4cm? いえ、このサイズの 4cm は大きいのです。太い弦も張ることが可能ですしね。
実際に3オクターブの3つの弦を張り、この楽器の動画を撮ってみました(#また動画だ!)。
・メロディ弦:G4 で調弦 羊腸0.66mm (張力1.9kg)
・標準ドローン弦:G3 で調弦 羊腸0.88mm (張力0.8kg)
・増設ロングドローン弦:G2 で調弦 VNG5132 (張力0.5kg)
試しに増設ドローンは限界まで張力を下げたので音量ひかえめです。すべて ソ(G)で調弦していますが、増設したドローンは非常に低い音なのでパソコンやスマホのスピーカーでは聞こえないかもしれません。現物はとても良く鳴っていますのでヘッドホンかイヤホンで聴くほうがよいでしょう。床下からドロ〜〜ンと響く貞子のうなり声をお楽しみください。
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