さぁ〜〜〜、ここはヴァーチャル音楽教室シリーズのリュート編のコーナーです。
たぶん、リュート自体が何なのかをご存じない方も多くいらっしゃるのでは?と思いますので、はじめに、楽器のなりたちということで歴史についてご紹介しましょう。わたしはリュートの専門家というわけではないのですが、ざっと書いてみることにしましょう。
リュートは西南アジア(アラビア/ペルシャ)周辺のウード(ud)(木の意味)という楽器が起源といわれています。ウードの原型は紀元前19世紀ごろにはすでに存在したともいいます。そして紀元前8世紀ごろイランに伝わったらしいのですが、9世紀ごろムーア人(アラブ人やベルベル人)が侵攻してきたことによってイベリア半島に伝えられたといわれています。また、1096年から7回(200年間)にわたって中近東に攻めてきた十字軍がヨーロッパへウードを持ち帰り、普及させたともいわれています。一方、東方へは紀元前3世紀ごろ中国〜モンゴル(ピパ)〜日本(琵琶)へと伝わりました。ギターが単弦化されて現代まで広く普及したのに対して、リュートは15世紀中頃から約200年間(バッハの時代まで)栄えた後、世間ではまったく忘れられてしまいました.....。
15〜17世紀当時、リュートはイタリア、イギリス、フランス、ドイツといった国々を中心に宮廷音楽を中心とした当時の代表的楽器として大人気だったようです。絵画や版画にも頻出します。紳士の条件は作詞・作曲にリュートで歌えることだったともいいます(ほんとか?)。 当時、ギター(5コース)は存在していました、しかしリュートはその美しく繊細な音色に宮廷での人気が特に高く、貴族たちはこぞって楽器職人に上品で高価な楽器を作らせ、おかかえ奏者に弾かせて晩餐会や子守歌代わりに楽しんでいたそうです。その昔、音楽は天文学や数学と並ぶ重要な学問でもありました。かのガリレオ・ガリレイ(父は音楽の先生)もリュートでギャル(死語)を口説いていたことは有名ですね。
リュート音楽の世界では17世紀までに優れた作曲家や演奏家が数多く生まれます。やがて楽器も進化(変化というべきか)して弦数は増し、バロック調律が考案され、楽器も大型化(あるいは改造)されていきました。のちにリュートが衰退してからはヨーロッパではシターン(イギリスではイングリッシュギター、のちのポルトガルではポルトガルギター...など)という金属弦を張った小ぶりな弦楽器やチェンバロに人気が移行し、リュートは歴史から完全に忘れられてしまいます。
リュート族のなかではマンドーラ(マンドリーノ)という楽器(ソプラノリュートではない)がイタリア(あるいは一部のフランス)で栄え、18世紀まで演奏されていました。現在のマンドリン(金属弦と金属フレットを張った現代の4コース複弦でヴァイオリン調弦と同じ)はリュートに姿は似ていますがリュートとは全く異なる系列の新しい楽器として1800年代終わりに開発された楽器です。
..........ともあれ、リュートは20世紀になってから古楽器についての研究と演奏の再現が盛んになり、楽器製作家や楽譜出版社の努力もあって次第に復興してきました。日本でもクラシックギターブームとともに1970年代頃からリュートの演奏家や楽器製作がなされてきましたが長い間偏った情報や誤った構造、あるいは改造楽器そのままのコピー楽器などが大量に製作され、ヒストリカルな楽器が作られるようになってきたのはごく最近(20世紀末期以降)のことといえます。
(日本国内では資料の公開に消極的で、音楽大学や某図書館などは、なぜか楽譜や楽器の情報を容易に公開してくれません。海外の音大や図書館では誰でも閲覧でき図面も公開・配布しているのですが....。)
● リュートが衰退した理由......
・モダンなギターと比較して調弦が面倒....... 。
(今なら電子チューナがあれば楽ですね。ちゃんとペグを調整した楽器ならOK!)・弦の数が増えすぎてボディも大型化しすぎた。
(ま、デカすぎるのもたしかに困る... ディスキャント等の小さいリュートもあります)・記譜法(タブ譜)が多種にわたる
(ドイツ式、イタリア式、フランス式、スペイン式などありますが....五線譜でもいいじゃないですか)・フレット自体もガットで位置を決めにくい(あるいは交換が必要)。
(平均律以外でフレッチングできる利点でもあります)・金属弦と違ってガット弦は寿命が短い
(現在のナイロン弦なら長寿命です)・他の楽器が進歩したため優位性が薄れた。
(現代はピアノ&ヴァイオリン帝国ですね。リュートは独特の音色で勝負!)・演奏のためにツメを切らねばならない!?
(複弦はたしかに指頭のほうがつかみやすいですが当時はリュートもツメで弾かれることがありました)・ウルサイ専門家が初心者を遠ざけてしまった。
(歴史的な楽器構造や奏法を追求するあまりヲタク化した暴徒.... )
● リュートの魅力
・繊細にして華麗な音色。やはりリュートの魅力は音色なのです。
・6、7コースならネックが短めで、左手が動かしやすい。
・レパートリーが豊富(タブ譜が読めればさらに豊富)。
・16世紀初頭や中世の曲は技術的にあまり難しくなく、美しい曲が多い。
・ギターの1/3程度の重さなので軽い(約700g〜1kg.... 持ち運びが楽:例外アリ)
● リュートをオススメする理由
・何と言っても音色が美しい。(メロデイの単音による旋律だけでも楽しめる)
・ギターとほぼ同じ感覚(調弦)で弾ける(ルネサンスリュートの場合)。
・オタマジャクシの楽譜が読めなくてもタブ譜で楽しめる(とくにバロックリュート)。
・当時の音楽だけでなく現代の音楽に使っても面白い。
・周囲から上品な(変わった?)人だと思われ、女の子にモテモテ(かもしれない.....)。
● 参考までに ●
リュートなどの古楽器に関する月刊誌に「アントレ」というのがありまして、ギタルラ社(バックナンバーも有り)などで購入できますので、興味のある方はのぞいてみてください。みかけは地味で薄い本ですが内容はじつに専門的なものです。
それから、リュートの楽譜、教則本もギタルラ社で入手することができます。もちろん世界各地の楽譜出版社や楽器店のホームページから直接注文することも可能です。近年、わが国でも日本語の教則本(菊地雅樹さんや水戸茂雄さん)が出版され、竹内太郎さんによって古楽器(バロックギターやリュート)の教則本も書かれています。近年になってリュートを楽しむ環境が整いつつあるのは嬉しいことです。
【注記】
・このコーナーで使われているサウンドデータは AU形式または QuickTime形式 となっています。このホームページやこのコーナーを作った当時はまだMP3のようなものがまったく普及していなかった頃でしたので当時一般的なサウンド形式としてAU形式を中心になっています。御了承ください。2001年4月更新
・このコーナーは日本中を探してもリュートのホームページなどほとんど皆無であった時期に制作・編集して公開したものです。近年ではいくつかの優れたリュート関連のサイトも登場してきました。とくに名古屋や関西に優れたホームページがいくつか登場しているようです、あわせて御覧いただくとよいでしょう。
1999年4月更新、1999年9月更新、2000年5月更新、2000年8月更新、2000年11月更新、2001年2月更新、2002年9月更新、2003年6月更新 、2011年3月更新