
● キットによるウクレレ製作コーナーです。製作過程の写真と説明を記載してあります。
弦楽器製作というと工作が難しくて材料や工具についても悩んでしまいがちです。しかしキットは半加工してあるものがほとんどですから、取り組みやすく非常に優れた教材であると確信しています。事実このウクレレキットは小学校の工作教材に使われることもありますね。但し、小学生にも作れるからといって材料や設計がいい加減ということではありません。ここでは全音社のキットを使っています、合板は一切使用せずマホガニーの単板をふんだんに使った本格モノなのです。楽器店で売られている高価なウクレレでも合板の楽器はあります。ひとつ、このコダワリのキットで弦楽器製作の世界の楽しさを味わっていただきたいと思います。
キットは特殊な工具を必要とせず、部品や木材もひととおり揃っているので一から手配する手間が省けます。寸法もおおむね加工済みですから失敗しにくいのです。もちろん好みで改造しても楽しい。塗装に凝ってみるのもまたウレシイ....このように柔軟なこともキットの魅力です。
備考:この記事は1997年に公開していたものです。その後、ウクレレキットは各社から販売されていますが材料や加工の程度はまちまちです。当時の記事は1995年に製作しながらアナログカメラ(銀塩フィルム)で撮影した写真をテレビ投影機に出力してパソコンに取り込んだ画像です。従って写真がキタナイです。解像度も当時はこれがせいいっぱいだったのです。
1997年当時の記録としてこのページを残してあります。参考程度にどうぞ。
全音社のこだわりを感じるでしょう。材料の名称がパッケージに貼ってあります。この写真では分かりづらいかもしれませんが、ボディの成形治具が入っていましてこれがすぐれものなのです。ネックもここまで加工してあるのは非常に良心的だと思います。接着剤が入っていますが、こだわりを追求される方はニカワでどうぞ....。もし、接着に失敗しても接着部にタオルを巻き、スチームアイロンでじわじわやるとはがすことができます。
あらかじめ全ての材料を付属の紙ヤスリで軽くこすっといたほうが良いでしょう。このくねったライニング材を4本(表面板側2本、裏板側2本)接着しますので、長さを合わせてカッターかノコギリでつめておきます。なおここから当分のあいだはボディの成形治具を付けたままにして作業を進めます。
接着剤を塗布し、洗濯バサミではさんで固定します(はみ出した接着剤は絞ったタオルなどでふき取っておいてください)。できれば多くの洗濯ばさみを使って固定します。写真のようにミニクランプを使ってもいいでしょう。今回はキットに忠実?に木工用ボンドを使っていますので乾燥まで5時間ぐらい置いておきます。(室内の温度や湿度にもよりますが...)乾くまでのあいだに別の部品の加工・接着にとりかかってください。
注釈:弦楽器の木材の接着には「タイトボンド」がオススメです。東急ハンズなどで販売されています。アメリカのフランクリン社の接着剤で世界中の弦楽器製作家も使っています。ニカワは画材店などで入手できますが棒状または玉ツブ状のものを多くみかけるでしょう。本格的な楽器製作ではウサギのニカワを使います。
拡大写真です。
力木(バー)の裏と板側にはそれぞれ番号をスタンプしてありますので間違えることは無いでしょう。:1996年現在。
注1:1998年現在のキットでは表面と裏の板、及び力木には線も数字も表記されていませんが、おおむね中央であれば問題ありません。このコーナーの以下の写真を参考にエンピツで線を書き込めばいいでしょう。
注2:1998年現在のキットでは力木の長さは全て同じになっています。適当にあてがってみて長いようであればカッターか彫刻刀で削って長さを調整しましょう。
裏板の場合と同様です。接着剤を塗って雑誌などで加重し、乾くのを待ちます。
ここではジャムのビンなどを載せて加重していますが、雑誌のほうがいいかもしれません。こうやって接着剤が乾くまでのあいだに表面板のほうを作業すればはかどりますね。
さあ、ある程度時間が経過して接着剤が乾くとこうなります。ライニング材が側面板からはみ出していれば、その部分を彫刻刀あるいはカッターで削ります。刃物の取り扱いが危ないと思われる方やお子さまは紙ヤスリでどうぞ(次の次の写真を参考に)。
エッジの面に平行にカッターか小刀をあてて削ります。(指を切るのは刃物の前方に支える手がある場合です。注意!)あらかじめ洗濯バサミではさむときにぎりぎりまで側面板のエッジに合わせれば小刀を使わなくてすみます。できれば替刃式のミニカンナがあれば安全で綺麗に正確に早く仕上がります。
こちらのほうが安全です。ただ、紙ヤスリだと時間がかかり丸く削りがちになるので水平に根気よく。
これらを互いに接着します。接着剤を塗る前に「仮組み」して具合をみてください。場合によっては力木がボディからはみ出すこともありますので、そのようなときはカッターでつめてやります。だいたいここまでできたら3つのパーツを仮に重ねてみてください。なんとなくゆがんでいるようなら(それも味です)力木の長さを切り詰めて調整すればいいでしょう。ボディの成形治具は、まだ付けたまま作業します。
では、接着剤を塗布します。こんなにいっぱい付けなくてもいいんですけど。
雑誌や重たいもので加重して放置します。ギ邪魔にならない場所に置いておかないとぶつけて思わぬトラブルを生じます。
乾かしているあいだに... そうです、ラベル製作です。
これが乾燥後の写真です。ちなみに力木はサイドの補強板にピッタリくっついていればベストですが、隙間があっても構いません。
わたしはMacintosh(MacDrawPro)で描き、カラーのコピー紙にDeskWriterで印刷しました。そしてカッターで切り抜いて糊で貼るだけです。ご覧の通りです。
今回は当ホームページタイトルのCRANE(クレーン)をデザインしてみました〜〜!
裏板の場合も表面板と同様、接着剤を塗る前に「仮組み」して具合の悪い箇所は修正します。このあと接着剤を塗り、雑誌で加重して乾かします。
裏板の場合も表面板と同様です。ボディ成形用の治具は付けたままです。
接着したらボディのカーブに沿ってはみ出した部分を彫刻刀で削っていきます。カッターだと危ないので気をつけて。木目の方向に気をつけて削りましょう。切クズがボディ内に入るのを防ぐため、表面板のサウンドホールはマスキングテープでふさいでおいたほうがいいでしょう。
ここまできて、ようやくボディ成形用の治具が外れます。
付属の紙ヤスリで充分ですが、何らかの木片に巻き付けて使うか、このような道具(サンディングブロック)を使ってもよいでしょう。ちなみにここの写真では新聞紙の上で作業していますが、これだと新聞紙のインクがウクレレのボディに付着することもありますので、広告紙を敷いたほうがよいでしょう。
これにヤスリをかけて丸みを付けます。そのまえに、仮に糸巻き(ペグ)を取り付けてみました。
150番の紙ヤスリでネックの角を削ってなめらかにしていきます。ネックのヒールの部分は彫刻刀かノミか小刀でもっときつく削って細くしておいたほうが、完成時によく鳴ります。
ネックとボディを接着したのち指板も貼ってから削る方法もあります。順番は作業のしやすさに関わるのでプロの製作家でも順序が異なることがあります。
ダボをネックに接着し、ボディとネックを接着します。接着剤は一面に隙間無く塗ってください、そうしないとネックがはがれる原因になります。
木工の接着剤は基本的に両面に塗ります。とくにここではネックの接着面の木材の目の方向が木口(こぐち)なので接着しづらいです。
乾いたらこうなります。楽器らしくなってきました。裏のヒールのはみ出た部分を削り取っておきます。
なお、最初に指板をネックに貼ってからボディと接着する方法もあります。
すでに指板/フィンガーボードにフレットを打ってあります。12フレット分の長さを計ってみました。
接着剤をやや少なめに塗ってください。そして12フレットをボディとネックの継ぎ目に並ぶように置きます。これを輪ゴムかクランパで張り合わせて固定し、圧力をかけると接着剤がはみ出してきますので絞ったタオルなどで拭き取りましょう。あとは乾くのを待ちます。
上駒(ナット)と下駒とブリッジの各パーツです。ここで木ネジをご覧になって違和感を持たれる方もいらっしゃるでしょう。じつはこれはPL法を意識してのことなのです。弦を張ると、ある程度の張力が作用しますので下駒が外れてケガでもしたら製造者の責任を問われる場合があるからです。(ちなみに右側のダボはすでにネックとボディの接着で使用しました。)
接着剤を塗ってテープで固定して乾かします。その後、このように木ネジを埋め込みます。この部分は後から木片でふさいでやればよいでしょう。下駒の位置は下式を参考にしてください。実際には押さえたときの弦の張りの強さが微少に増加することによって弾いた音が高めになります。そのため、まえもってブリッジ位置は若干下げて接着(ウクレレだと2mm程度)したほうがいいのですが....。
・理論値 ナットから12フレットまでの長さ = ブリッジから12フレットまでの長さ
・現 実 ナットから12フレットまでの長さ =< ブリッジから12フレットまでの長さ
弦楽器の正確なフレット位置を簡単にチェックするには次のような方法があります。ひとつの弦の開放ハーモニクス音と12フレット(1オクターブ上)音を比較すれば良いわけで、これをオクターブピッチといいます。オクターブピッチが正確に合っていれば次のような音になります。
12フレット位置のハーモニックス音 = 12フレットを押さえて弾いた音
参考:もし、楽器が完成し、弾いてみて調律がうまくいかないとか、ちゃんと調律したハズなのにコードを押さえると音程がおかしい.....などといく場合はたいていこの下駒の位置が適切でないことが原因です。下駒は絞ったタオルをかぶせておいて、スチームアイロンでジューッとやればはがすことができます。
基本的にはこれでほぼ完成です。糸巻き(ペグ)を取り付けて付属の弦を張ります。オリジナルの4弦目にはナイロン弦を張るのが普通です。私はギターの4弦を使ってLowG にして弾きます。
調弦は高い音から低い音まで順に A(1弦) E(2弦) C(3弦) G(4弦) です。4弦目にはギターのD(つまり巻弦の細いやつ)を使えば音域が広がります。
全音の方と話した時の余談ではありますが、このキットには塗料も付属する予定だったそうです。しかし、PL法の問題から同梱しなかったとのこと。そういうことなら...と思って今回私は害の少ない水性塗料でチャレンジしてみました。学校とかで教材に使う場合などは安全のためこの「ワシン水溶性ニス」がよいでしょう。うすめ液は必ずしも必要ではありませんがあれば綺麗に塗れます。ハケは乾かないうちに水で洗えばよいのです。
側面が若干ケバだっていてもとりあえず塗装します。この1回目の塗装が乾いた後に、ブロックに巻いたヤスリをかけてやるとなめらかになります。この水溶性塗料のよいところは15分ぐらいで乾くことでしょう。せっかちな方にはうってつけ?
手早くささーっと塗るのが基本です。塗りにくいときはうすめ液を少し加えればよいでしょう。1回塗ったら充分に乾かすことです!そしてヤスリをかけます。そしてまた塗っては乾かしヤスリかけ....これを繰り返せばよいのですが、あまり塗装が厚くなると楽器としての鳴りが悪くなることがありますからほどほどに。一般的に弦楽器にはウレタン塗料よりもラッカー塗料やセラックニスの方が硬い塗膜で好まれます。
付属の紙ヤスリは150番と240番です。あとは400番などを必要に応じてかけます。光沢仕上げを好まれる場合は800番以上の耐水ペーパで水研ぎしてコンパウンドで仕上げればよいでしょう。
こんなもんですか? 他にも手をいれるならサウンドホールのまわりに口輪(ロゼッタ)の飾りがほしいところですね。
注釈:ヌネスやカマカのウクレレは多くの場合、口輪(ロゼッタ)がありませんので、このままでもモチロンOKです。
● ここの記事は指板を調整して音程を正確に...という記事ですが、1999年以降の全音社のキットは補正がなされているそうです。他のメーカーのウクレレキットでも全体の弦長の真ん中に12フレットがあるとして、ブリッジ(サドルの位置)はわずかに2mmほど長い位置に接着すると覚えておけば良いでしょう。
フレットを押さえて弾いた場合にかなり音程がおかしいと思ったら修正するのもひとつです。
ブリッジに家庭のアイロンで濡れタオルを巻くかじっくりスチームをかけながら温めれば、はがすことが可能です(少し根気が必要)。
指板の補正
どうしてもブリッジが剥がれない場合は裏技。指板の0フレット位置を切り詰めるという方法も紹介しておきます。あくまで参考に。
● ウクレレを弾こう!
タブ譜による曲集でスバラシイ曲集をご紹介しましょう。1995年秋に出版されたものです。
(注記:1998年以降は様々なウクレレ独奏譜が出版されるようになりました)
・「ウクレレ・ソロの世界 Vol.1」(クラシックコレクション)津田昭治 2575円
・「ウクレレ・ソロの世界 Vol.2」(ポップスコレクション)津田昭治 2575円
この2冊はそれぞれCD準拠となっております。CDではステレオ録音で、左右にメロディと伴奏がなんとなく分かれて録音されていますので、練習にも好都合。おすすめはVol.2に収録されている「サマータイム」など、ジャズのスタンダードナンバー。
あと、ソロの曲集としては豊富な楽譜(タブ譜つき)がうれしいこの一冊を挙げておきましょう。
「ウクレレ・ソロ
永遠のベストメロディー」1〜4巻 五十嵐有爾 1545円 東京音楽書院
そして、ウクレレ・ソロの草分け的な存在としてはハーブ・オオタ氏(なんとアルバム50枚以上をリリース)を忘れてはいけません。こちらのCDも聴いてみてください。ウクレレ入門書やビデオなども豊富です。おそらく、これらのCDを始めて耳にされる方々はウクレレに対する見方が一転すると思います。
いかがだったでしょうか? 弦楽器製作の楽しみをちょっとだけでも感じていただけたでしょうか? キットは改造の楽しみ(可能性)もふんだんにあります。弦の数を5弦にするとか、表面板をカエデにしてみるとか、装飾を凝ってみるとか、カッタウエイをつけるとか....... あなたなりのウクレレライフを楽しんでくださいね♪
◆ 製作期間: 95年12月31日〜96年1月2日 (3日間)
◆ 費 用 : 全音楽譜出版社 ウクレレキット
◆ 記事の公開と更新: 1997年7月、10月と1998年8月に説明文を更新。2000年3月、2002年7月 修正
◆ キットの入手法:全国の大きな楽器店で入手可能。私はお茶の水の下倉楽器さんで購入しました(1998年8月の時点で4800円でした)。2002年7月に同「下倉楽器」にて5500円でした。