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 3. モールドを作る

さて、前記のとおり、今回は型(モールド)を樹脂材料である発砲ウレタン(レジン)で作ってみようと思います。量産するわけではなく、せいぜい数本の楽器を作るのであればこの方法は安価で手軽であることを実感しました。皆さんもぜひお試しあれ。

樹脂材料は2液タイプで混合時に熱を発生し、体積が20倍にも膨張します。そのため側壁をあるていど丈夫に作っておかねばなりません。できればアルミ板などを使いたいところですが、それではせっかく「手軽な」方法が遠ざかってしまいますので思い切ってボール紙を使うことにしました(コレがじつはあとで面倒なことになるのだ....)。

 

 

図面の側面板の輪郭をボール紙に写し、ハサミで切り抜いてさきのフレームにセットします。この時点では鶴田は発砲ウレタンの恐ろしさをまだ知りませんでした、鼻歌まじりで楽しげに作業を続ける私...........。

 

 

鉛筆で描いたボディの輪郭線がおわかりいただけますか? このようにやや外壁を高めにしておかないと型を成形する過程でボウル状に削っていく際にピークが低くなってしまいますので注意が必要です。つまりボディ中央部の盛り上がった部分よりも外壁は高くなければなりません。ボール紙の外壁は合板フレームに紙テープで固定します。このとき上下のブロックの位置も決めて紙テープで固定しておきましょう。

 

 

さあ、いよいよ発砲樹脂剤を混合します。投球、おっと東急ハンズで購入したKCKのクラフトレジンです。KCKとは「国際ケミカル株式会社」のことで、膨張率や硬度の異なるいくつかのレジンを販売しています。楽器のサイズや切削作業の容易さ、そしてあなたの財布と相談して他のレジンを選択しても良いでしょう。

・KCK クラフトレジン 「発砲ウレタン ハード20倍型 N(1kg )」:3900円(2000年現在)

この製品は主剤と硬化剤の2液を付属のカップで同量を混合し、素早くかき回して型に流し込むと約3分で硬化します。恐ろしく短時間で固まるのです。その間膨張と発熱(約摂氏100度とあるが実際には50度前後)を伴うため外壁がヤワだとゆがみを生じるのであります...。

 

じつはこのレジンは2液の合計が約1kgの重量ですが1セットでは足りず、泣きながら翌日もう1セット買いに出かけました。従って2セットで7800円ナリ。厳密にいえば1.5セットに相当するレジンを使っています。

 

 

キャハハハハハ〜〜〜! 私の当初の推測が甘く、思ったよりウレタンの膨張力は強大で、ご覧のとおり気が付けばカップケーキ作りに失敗した女子中学生状態になります.......。我ながらアイディアは良かったと思ったのですが、思うと実行するとでは大違いなのです。こういった失敗が後にまた新たな失敗を....おっと革新的なアイディアを生むのです、失敗は成功の母....ウムウム......(納得している場合ではない)。

 

 

しかしまあ、あわてることもありません。モールドの底部は最初に準備したフレームに沿ってピッタリの形状を保っていますから、これをもとにふくらみを補正していくことにします。

 

 

サンディング・クロウでバリバリと削ってボウルバックを成形していきます。このときボール紙のけがき線を目安に(ほんとに目安程度なんですよ)丁寧に削っていきます。削りすぎてもまたレジンを盛ることはできますが私は1回で仕上げました。かなりの量の削りカスが発生します。これは不燃物ゴミですね。

 

 

はい、ゆがんだ側面も徐々に補正して次第にボウルバックのバロックギターらしくなってきました。ウレタンの濃度が部位によって差ができますがあまり気にすることはありません。

 

 

フレームから取り出してブロックごとボウルのアーチを削り出します。強力なヤスリでゴシゴシと削ります。この工具はネックの成形などにも使えて重宝します。ラウンドさせた立体曲面の造形はなかなか神経を使いますが楽しい作業です。図面より5mmほどふくらみを増してみました。

 

 

硬化したウレタンモールドからブロックをはがしたところです。カッターを差し込んで、接着されているブロックとウレタンの面を丁寧に切り離します。

 

 

はい、約3時間もあればモールドが完成します。木材の型作りと比較すると発砲ウレタンは柔らかくてもろいので短時間で削りだして成形することが可能であることを確認できました。ああ、やっぱり鶴田は間違っていなかった......コレはすごくらくです。欲をいえばもう少しキメのこまかいレジンにしたいところです。私はこの表面に樹脂塗料を塗って表面を硬化させて使うことにしました。

 

 

さて、次はこのウレタンモールドにリブを組んでいく作業です。

 


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