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 8. ネック:芯材と帯黒檀巻き

 

ネックは本来メイプルの角材から作ります。............が、じつは今回はバスウッドを使って黒檀の薄板を巻くことにしました。リンデンやボックスウッドのように軽くて加工のしやすい木材を芯材にしてネックとヘッドの軽量化をはかるというわけです(必ずしも軽くすればいいというものではありませんが)。メイプル材もストックしてありますが手元のものはやたら重いのですよ。
バロックギターのネックは5コースなのでやや細い印象ですが複弦のため極端に指板を狭くすると弾きづらくなります。今回は図面のネックよりもわずかに指板を広めにとってあります。

 

 

マイターノコが壊れて捨てたので(やはり安物はよろしくない)、クランパを使って直角を出します。手ノコだけでも慣れてくれば以外と上手くいくものです。

 

 

ヘッドの継ぎの角度を決めて糸鋸盤でカットしているところです。この端材も捨てず、いすれの出番を待つのです......。

 

 

ついでにヒールも同じ材からとっておきます。

 

 

夜中に作業するときは電動糸鋸盤を使わず、静かな手ノコで作業します。田舎の山中の工房ではないので近隣の住民に迷惑がかからないように配慮しますです。これだと時間と労力が余計に必要ですが、次の日曜まで待てないのでこうやって平日はシゴトから帰って夜中の製作というのも珍しくないのであります。だいたい最近は休日出勤が多すぎるんだ........(と、グチってみたりする.....笑)。

 

 

はいはい、小言をいうヒマがあったら手を動かすのです。ひたすら夜中に手ノコで静かに挽いてヒールを成形していきます.....。

 

 

一方ではネックを削っていきます。軽くやわらかい木材なのであっというまに半円状になります。指板と黒檀の巻板の厚さを考慮しつつ...。

 

 

ある程度加工が終わると60番〜80番程度のサンドペーパーで三度ぐらいサンディングします。

 

 

はい、ご覧のとおり。ノギスで幅をチェックしながらサンディングして慎重にテーパをつけます。今回はやや太めのネックにしています。このあと黒檀の帯板とメイプルのスペーサを巻いていくわけです。

 

 

最初に必要なリブの本数を切り出しておきましたが、もしネックに巻く黒檀板が足りない場合は追加でコツコツ切り出しましょう。ガイドを付けて作業すれば正確にカットできます。

 

 

黒檀の帯板はベンディングアイロンでネックの軸方向に曲げることは困難です。しかし、昔の楽器にはヒールの周りやネックのほぞの覆い部分に黒檀を巻いてあり、驚くほどRの小さい黒檀の曲げをどうやって実現していたのか理解を超えた技を見ることがあります。鶴田はそんな匠の足下にも及ばないのでアイディアでなんとか対処します。面倒ですが1本づつ黒檀の帯板の接着面にくぼみの溝をノミとスクレーパで付けていくという手法を思いついたのでコレでいきます。Rが揃っていないとあとで仕上げの段階で隙間を生じてミットモナイことになるので丁寧に作業します。これまた時間のかかる作業なのです。

 

 

ボディの裏板を形成していく作業において、センターにリブを接着しておいてその両脇にリブを並べていく配置でしたから、ここでもまずネックのセンターにリブを接着します。こうやって接着して乾くのを待つあいだにリブの窪みをつける作業を行うと合理的?です。

 

 

ネックのセンターにリブが接着できたら、ほかの材を仮組みしてみます。ネックのテーパに合わせてリブの幅も徐々にヘッドに向かって狭くなるタイプと、平行なリブを並べるタイプとがあります。

 

 

スペーサを挟みながら5枚の帯板を接着したところです。我ながら上出来! フハハハハ.....。スペーサやネックの芯材とのあいだに隙間ができないようにピッタンコに加工するのであります。なお、このままでは黒檀の帯板が厚いので六角大王?状態ですから、あとで薄くなるまで削ります、そうすることでネックにピッタリ巻いたように仕上がるという鶴田方式?です。黒檀の帯板はその両端に角度をつけてカンナで削っておかないとスペーサと密着できないので適切な角度まで削っておきます。

 

 

はい、そういうわけでここにも200星のミニカンナ(当サイトの工具コーナー参照)が活躍します。カンナ自体の重量が軽いことと刃幅が狭いので摩擦が少なく、軽快に作業できます、サクサクサク.......っとね。写真の奥に加工中のヘッドが見えますが、このあとに説明するので見なかったことにしてね〜〜〜〜ん。

 

 

 

いまのうちにヒールとの接着面をカットしておきます。

 

 

さらにネックの黒檀板をカンナで削って、そのあとスクレーパで表面を整えていき、最後に軽くサンディングします。

 

 

 

メイプル材をそのまま(黒檀を巻かず)ネックに使う場合はこれよりも作業は簡略化されますが木目のとりかたに注意せねばなりません。フラットソウンの場合とクオーターソウンの場合とがあります。

 

 


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