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 12. ヒゲ飾り

 

19世紀ギターなどのブリッジ装飾で、両脇ににょっきりヒゲのごとく生えたものを文字通りmustache(ひげ)と呼びますが、文献によるとバロックギターの唐草模様も同様にmustacheと表記してあります。まあ、たしかにヒゲに似ていないこともないのですが.......バロックギターでは他に呼び方があるのかもしれませんが、ご存じないですかみなさん?

さて、ここではそのブリッジ装飾パーツを製作します。オリジナルの図面のそれは交換されている可能性も否定できないのですが、ひとまず現存するオリジナルの飾りを採用することにしました。写真をもとにスケールと縦横を調整のうえパソコンのプリンタで印刷したものをそのままテンプレートに使います。皆さんが製作される場合はG.A.Lの図面をテンプレートにしてもかまいません。いくつかの楽器の写真を比較したところ、このヒゲ飾りは必ずしも左右対象ではなく、どちらかがわずかに小さかったりゆがんでいることも多いようです。私は今回2枚の1mm厚の黒檀板を張り合わせて糸鋸で切り出し、あとから2枚を元通り剥離して製作することにしましたが、そうすれば「ほぼ」左右対象です。糸鋸は電動でなくジュエリーソウ(手ノコ)を使いますが、刃をやや傾斜させてカットするならば、結果として左右の輪郭はピッタリ同じにはならないのです(おひおひ)。

まず、ニカワで2枚の黒檀板を張り合わせて乾かします。木目の方向に注意します、表面板の木目方向と同じにとるのがバロックギターでは一般的です。

 

 

テンプレートをジュエリーソウ(手ノコ)で切り出します。このとき模様の内側から外側にかけて挽いていかないと簡単にポキポキ割れます。いったんノコを入れる順番を間違えると、それ以降のカットが非常に難しくなるのです。今回使用している黒檀の板は柾目なのでよけいに割れやすいです。まあ、割れてもギターの音には影響しませんがひとまず慎重に作業するべし.......としか言いようがないですなぁ.......。

 

 

カットが終わったら鍋に水を入れてロゼッタを小さなケースに納めて煮沸します。私はジャムやチーズのアルミケースを使います。時間をかけてゆっくりニカワを溶かします。すると自然に黒檀のヒゲ飾りは2枚に剥離しますが、無理に剥がそうとすると、これまたポキポキいきますのであせらずのんびり栗アイスでも食べながら待ちましょう............Zzzzzzzzz.........。

 

 

はい、ご覧のとおり! このままではエッジが鋭い(直角)なので、表面板と接着する面の反対側のエッジをサンドペーパで三度三度ならします。おお! 久しぶりのオヤジギャグ! みなさま御起立のうえ拍手を! ひさしさん、これでいいですか(笑)。

 

 

こういった作業はとても時間のかかる作業ですが、なんだかんだいいながらようやく完成しました。このホームページをご覧の皆さんにはひととおりの作業を読むのに3分程度と感じたかもしれませんが、私はこの作業を丸3日間かけてこなしたのであります(あいかわらずのろい)。あとはブリッジパーツと合わせながら細部を調整します。この時点では黒檀の表面はやや茶色に見えますが塗装すると深い黒になります。今回1mm厚の黒檀板を使いましたが、オリジナル(つまり17〜18世紀当時)の飾りは0.6mm程度の薄いものが多いようです。昔の製作家は薄くて柾目の割れやすい黒檀をどうやってカットしていたのでしょうか?不思議です。昔の製作家はエライと思います。

 

 

 

さて、このあとは表面板の加工作業です。

 


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