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工程説明ページ


 17. ヘッドの仕上げと各部調整

 

 

さあ、最後の追い込みです。でもあせらず慎重に、平静に作業します.....ハァハァ、ゼィゼイィ、ぐぉ〜〜〜〜っ...........ナットは今回は骨でいったん製作したのですが、どうも全体的に浮いた印象なので黒檀で作り直しました。ナットフィルで弦を1本づつ張りながら溝を彫っていきます、私の場合はナットの溝は深めに彫ります。このへんの作業工程は長くなりますし、他のコーナーで再三紹介していますので今回は詳細説明は省略します。

 

 

ペグを装着しますが、その前に弦を巻き留めておくための溝もしくは穴を開けねばなりません。文献によるとその時代には穴の方式と溝の方式の両方が存在したことがわかっています。今回は溝を切ります、ガットを張るのであれば溝方式が、ナイロン弦を張るのであれば穴方式がいいでしょう。

 

 

ヘッドからペグの頭が余計に飛び出るとカッコワルイので必要最小限の深さの溝を切ります。そして濃い鉛筆もしくはコンポジット(ペグワックスのこと。ヴァイオリンのお店によく売られており1000円〜1500円程度)を軽く塗ります。コンポジットはほんのわずか塗布するだけで良いのです。実際に回してみてちょっときついかなぐらいで良いでしょう。コンポジットはなかなか減りませんから1本で一生使えると思います。

 

 

ペグの先端は丸く仕上げます。ベッコウとメイプル+黒檀の装飾がキッチリ収まっているかな?

 

 

 

はい、ペグの溝切りと装着・調整を終えました。

 

 

次にフレットです。バロックギターは原則としてガットフレットです(末期の例外的に象牙のバーもあったようですが)。フレットガットはピラミッド社などの古楽器関連の弦メーカーで購入できます。今回はピラミッド社のものとキルシュナー社のものをそれぞれ8種類ほど揃えてあれこれ試してみました。ガットフレットは製作する楽器の種類やサイズにもよりますが 0.5mm 〜 1.2 mm 程度の範囲内で揃えれば良いでしょう。ちなみにキルシュナー社のカタログでは BD と書かれているのがフレットガットで、長さは 4 しかありません(たしか2.5mぐらい)、従って0.65mmとか1.2mmをオーダーするならBD4065とかBD4120 といったぐあいです、注文の参考にどうぞ。

 

 

リュート製作のコーナーでも説明していますが、ネックのヘッド寄りに巻いておいてライターで留め、そのあとズリズリと所定の位置までずらして配置し、フレットとして機能します。

 

 

高音域(フラッシュ)のエクステンションのフレット加工です。ここも黒檀を使って作りますが、手元の材料の本黒檀よりも縞黒檀のほうが粘りがあるようなので今回は縞黒檀を細く削って使いました。ここでもフレット両端の切断箇所が汚くならないようにジュエリーソウで切ります。

 

 

というわけで高音域のフレットはこんなぐあいに接着できました。なお、弦長とそのフレット間隔は当サイトのフレット計算コーナーで算出できます。

 

 

 

あとは塗装作業ですが、下地にテンペラを使い、Tru-Oilで拭きあげて乾かすという過程を経て(これも過去の記事で詳しく紹介していますので今回は詳細な説明は省略)全体としてはオイル仕上げとなります。数回の作業を行い、塗装を終えます。ブリッジのヒゲ装飾や細部の塗装、及び修正を行って全作業の完了となります。塗装に関してはいずれコーナーとして設置することを目標としていますが、なかなか思うようにいかないことも多くて遠い将来になりそうです。

 

 

そう! 完成です。夜中の3時に完成を祝してベルギービールで一息つくのでありました.............!! こういうときはヒューガルデンのホワイトなのです、香りと酵母が独特.....鶴田にとってこのビールは年に数えるほどしか味わう機会がありません、この銘柄は私にとって特別な意味があるのです。ごく、ごく、ゴクゴクゴクゴク......プハァ〜〜〜ッ! ビールはベルギーに限るわい!(あ、今回もやってもうた)、私は酒は毎日飲むわけではなく希にですが楽器の修理や製作で大きな山場を越えて落ち着いたときのビールはじつに味わい深いものがあります.........(ありゃ? なんの話だっけ?)

。ここまでバロックギター製作講座などと銘打って高座であれこれ説明といいますか、あ〜だこ〜ざ言いながら案内してきましたが、じつは鶴田もまだよくわかっていないのですよ。作ってる最中に「こんな構造でええんかいな?」とか、「ここはこういう材料でええんかいな?」などと不安になることもしばしば........もっといろんな楽器や文献の調査・検討を重ねる必要があるのです(マチガイがあったらゴメンネ〜〜〜)..........ひしひし実感............。

あ〜〜〜、しかしひとまず うみゃい、うみゃい、ゴク、ゴク、ゴク............。

 

 

完成写真1  ● 完成写真2  ● 完成写真3  

 

 


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