● 世界でも珍しいブラギーニャ(マシェット)のヒストリカル・コピーモデル
19世紀当時に製作されたと思われるブラギーニャ(マシェット)を入手。それを修復しながら採寸して複製楽器を作りました。上の写真の左側が当時の楽器で、右側が私の製作したヒストリカル・コピー楽器です。以下に製作の写真を抜粋して掲載します。御覧のように、作るのが非常に厄介な楽器です。フルサイズのギターを作る手間とまったく同じです。
PIC 001 :
ちっちゃい木型(上が一般サイズのイタリアン、二段めがフレンチテルツ、3段めがブラギーニャの木型)
PIC 002 :
ロゼッタのドットは御覧のように細い黒檀丸棒を作って刺し、カットしたものです。マーカーの塗布ではありません。
PIC 003 :
こうやって常に当時の楽器を隣に置いて作るのがCRANEでいうところの「真のコピー楽器」
PIC 004 :
市販のT型フレットは使えません。金属板からバーフレットを手作業で1本づつ切り出し、整形して装着します。
PIC 005 :
ビンディングも特殊なので板材から1本づつ切り出します。厚みを正しく作るのは結構たいへん。
PIC 006 :
部品点数も作業工程も一般のギターと同じです。つまり一般のギターを作る手間と同じなのです
PIC 007 :
細部は繊細な装飾が施されているので忠実に再現しなければなりません
PIC 008 :
サイズは小さいですが、ピリリと辛い。ワカル人には激しく興味をそそります.....
● 名古屋と東京の展示会に出展
製作したブラギーニャは展示会に出展しました。2006年秋の愛知県(セントレア空港)、そして2007年5月の東京(王子THGF)です。反響はどうかな? なんて思いつつ.....。たまに濃いお客さんが展示ブースにやってくると、一人でコ〜フンする私。「ブラギーニャのコピーって珍しいですね」なんていうお客さんが現れると、無性に嬉しくなって話が盛り上がったりして....
(捕まえて離さない)。他の製作家が取り上げていない楽器を先駆けて製作する。これは意義のあることです。人まねはカンタンだけど最初にやるのは困難の連続。調査もたいへんでした。でもそれを理解してくれる人が現れると苦労が報われる気がします。こういうシゴトは一般にはなかなか理解されないものだと思っていますので、かまわず独走します。
表面板はスプルース、横と裏はウォールナット、ブリッジや装飾はハカランダと黒檀、サドルは象牙、フレットは手作りのバータイプ、弦もすべてガット(羊腸)弦を張ってあります、ナイロン弦ではありません。とりわけルクスライン(1本5000円ぐらいするのだ:以下写真)の音色はクロウト衆を釘付けにしていました。
たしかにこの楽器、見ればみるほどウクレレっぽくないですねぇ。
今回のブラギーニャのヒストリカルコピーは多くの訪問者に関心を寄せていただきました。出展している会場の製作家の皆さんもウチのブースにやってきたりなんかして、結局のところ、広く好評でした。たしかにウクレレとは雰囲気がゼンゼン違う楽器ですもんね。理屈は置いといて、この楽器のシェイプや装飾や音色には説得力があります。民族楽器の奥深さでしょうか。私が当初考えていたより、興味を持っていただいたお客さんがかなり多かったことには驚きました。なんだぁ.... ワカル人にはワカルってコトかぁ.... みんなマニアじゃん(笑)。
この楽器、今回は2本製作しました。使用する木材の種類やネックの仕込み角度、ヘッドの角度、サドル設定、フォルムの可能性、塗装など、まだまだ追求すべき箇所はたくさんあります。小さい楽器ですが細部は非常に凝った構造でもあり、やり甲斐のある楽器です。珍しくまた作ってみようと思わせる魅力豊かな楽器です。
● 弦について
弦長約332mm A=440Hz ウクレレLow-G調弦の場合
1弦(a1) ガット(羊腸) 0.64mm D1064 3.5kg
2弦(e1) ガット(羊腸) 0.88mm D2088 3.7kg
3弦(c1) ガット(羊腸)ルクスライン 1.24mm LK1124 4.7kg
4弦(g) ガット(羊腸)ルクスライン 1.60mm LK1160 4.3kg
★ 当時の歴史的な調弦は 4弦、3弦、2弦、1弦の順に DGBD です。
Refer to ;
I Love Classical Ukulele : Samantha Muir
New Works for Classical Ukulele : Samantha Helene Muir, Doctor of Philosophy (PhD), University of Surrey
by Makoto Tsuruta, TOKYO JAPAN.