Terz Guitar (French : BirdseyeMaple)
LastUpdateMonday, 29-Dec-2014 04:21:01 JST 
(C) 2006 Makoto Tsuruta /
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- Copy of French Terz guitar (made in C.1830) -


 

【写真】

PIC 001 : ヘッドにはガレット(蝶ネジの弦留具:Johannes Tappert氏製作)を付けてみました。
PIC 002 : 裏板は逆アーチの構造です(当時のオリジナル楽器もこうなってます)。
PIC 003 : ロゼッタにはM.O.P(真珠母貝)の板材。
PIC 004 : 全体像を黒背景で撮影。
PIC 005 :ブリッジやロゼッタ周辺のディテール
PIC 006 : ガレットを外して木ペグにも容易に交換。





 

CRANE テルツギター バーズアイメイプルモデル 2006年10月完成

弦長533mm A=440Hz 総テンション約31.6kg  平均テンション約5.2kg

1弦(g1):ガット(羊腸)弦 DL2056 0.56mm 5.5kg
2弦(d1):フロロカーボン(シーガーエース 14号) 0.62mm 5.3kg
3弦(a#):フロロカーボン(シーガーエース 20号) 0.74mm 4.8kg
4弦(f):キルシュナー社 VN5116 4.8 kg
5弦(C):キルシュナー社 VN5170 5.8 kg
6弦(G):キルシュナー社 VN5220 5.4 kg

※ 同じ弦長の楽器でも構造等により適切なテンションは大きくことなることがあります。この楽器は強めの張力です。



【仕様】

弦長:532mm
表面板:スプルース
ブレイシング:表面板平行3本、裏板垂直1本
裏板:ワンピースのメイプル+ブラック・ウォールナットのツキ板横目
側面板:メイプル単板
塗装:ボディ〜ネックはオイル、表面板のみセラック
ヘッド:表は黒檀ツキ板(裏は染め)
ネックジョイント:V型
ネック・ヒール:ヒール材接着ののち削り出し:黒染め
指板:黒檀
フレット:T型フレット( 全17フレット)
ロゼッタ:M.O.P(真珠母貝)の扇形8ピース
ブリッジ:黒檀 ストリングピンは黒檀+M.O.P星付き
エンドピン:黒檀
糸巻き:黒檀フリクションペグ/ガレット装着も可能
ナット:黒檀 約43mm 1〜6弦幅:37mm
サドル:獣骨 1〜6弦幅:53.5mm
全長:約805 mm+エンドピン
弦高(12フレット位置):1弦2.8mm 6弦2.9mm 



1830〜40年頃のテルツギターを修復した機会に採寸しながら同時に製作したコピーモデルがこの楽器。裏板が特徴的で若干の逆ドームになっています。これは裏板の構造が極めて特殊で、ワンピースのバーズアイメイプル+ブラック・ウォールナット横目ツキ板の二層構造及びボディ縦方向に1本のバーのみという構造によるものです。当時の楽器には銘がありませんがツキ板では極端に反ることがわかっているので意図的に水平バーを避けて垂直バー1本で逆のドーミング(へこみ)を狙ったものと思われます。サイドは単板のバーズアイメイプルです。指板やピン類、ナット、ヘッドプレートなどは本黒檀を用い、サドルには象牙、ペグも本黒檀、黒染めネックと、全体的に凝った作りになっています。ボディがテルツの専用設計のシェイプであり一般サイズの縮小楽器ではありません。ボディラインの美しさのワカル方には納得の真のテルツなのです。近代〜現代の小型ギターとシェイプを比較されたし。

2006年名古屋セントレアの展示会及び2007年5月の東京・王子(THGF)の展示会ではガレット(蝶ネジの弦留具)を装着していましたが、ヘッド重量がかさんで倍音が抑制されるので最終的には一般的な木ペグに戻しました。ガレットは木ペグと完全に互換があっていつでも交換できるようになっています。なお、全体の塗装も展示会のあとに少しやりなおしました。

一般的な現代のギターより3度高いテルツ調弦(ようするに3カポに相当)です。いわばG調弦ですので、19世紀当時のテルツギター用の曲はもちろんですが、ルネサンスリュート曲などを弾くにも面白い楽器です。弦を少しゆるめて張力を下げて一般的なプライムギターの調弦でも楽しめます。弦長が短いのでポジションのキツイ曲でもゆとりをもって指が届くため、クラシカルレパートリーの難曲をらくにこなすことも可能です(^_^)。ただ、ネックの幅がFenderストラトキャスター並に狭いことと、弦長も短いので婦女子の皆さんや手の小さい方には歓迎されます。逆に手の大きな大人には弾きづらいかと思います。

 

私のテルツギターコレクションは各国、各地域、各時代を目指していますが、構造も材料も鳴り方もじつに多彩で面白いものがあります。ついでにコンディションもまちまち。たんに一般的なサイズのギターより小さめというだけではなく、指板幅や弦長だけ見ても全くというほど同じものがありません。(下の写真の右端は一般サイズのフレンチ、右から2番目は一般サイズのウインナー、左の4本がテルツ)
ファブリカトーレのテルツギターはすでに図面も公開・配布していますが、ブーランジェのテルツギターと比べても楽器作りの方向がまるで異なることがおわかりいただけるでしょう。

 

 

サイズ比較用の写真
左端2本は大西達朗さん製作のガダニーニのコピー、そしてラコートモデルです。中央が今回私の製作したフレンチ・テルツギター。

 

 

2005年〜2006年は工房の移転で忙しかったために、新作はこのテルツギターとブラギーニャしか完成させることができませんでした。ただ、修復した楽器のほうが多く、ホームページでは掲載しきれないことを考えれば、修復に関しては充実した1年でありました。 

新作で2006年に製作した楽器のうち、完成が2007年になったものもありました。ウォールナットボディで7弦のテルツギター、そしてラファエロ・ファブリカトーレ・コピーです。これらに関しては2007年のページに掲載することにします。

 





by Makoto Tsuruta, TOKYO JAPAN.

 

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