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Style-S

 


鶴田の製作するギターの概要です。写真がほとんどですがいずれ本編にてこまかいことは書き連ねるつもりです。ここではStyle-S(仮称)の製作工程を紹介します。S とはつまりシュタウファーをモチーフとした19世紀ギターを意味します(ウイーンスタイルと呼んでもよいのですが)。今回製作するStauffer はオーストリア(ウイーンのちにプラハ)の弦楽器製作家として知ら息子のントン・シュタウファーがよく知られていますが、とりわけヨハン・ゲオルク・シュタウファーにおいてはあの初代マーチンのおじさんも弟子入りしてお世話になったということでアコースティックギターファンの皆さんにもおなじみです。そう、マーチンの師匠でございます。これまたギターの歴史を語るうえでは欠かせない重要な製作家であります。ウイーンスタイルのギターはさきのファブリカトーレとの関連も深く、さらにのちのロシアンギターや後期ドイツ形式のギターにも深く影響を及ぼすことになり、多弦化と音域拡大の............お〜〜〜、いかん、いかん、もはや本編並に解説がはじまってしまう......。

さ、さて気をとりなおして........まずは木型の製作風景です。 え? 前回の Style-F のときの写真と同じだって? そうなんです、今回は3本の異なるスタイルのギターを平行して製作していますからなにかと写真を共にしていることも多いのです。

 

 

 

ウイーンスタイルの代表的なシュタウファーのボディはやや横方向に太ったようなフォルムを持ち、指板やブリッジにも特徴が見られます。じつは今回の裏板はまたしてもアーチバックで私は作るんですね、これが。

 

 

 

 

 

 

前にも書きましたがアーチバックのギターは19世紀において決して珍しいものではなかったものの、かといって誰もが採用していたわけではありません。だって彫るのが面倒なんだもん........。
今回はバーズアイメイプルの1枚板(厚さ約9mm)からノミを使って堀ちえみ....じゃなくて彫り続けるわけですが、グズでのろまな亀の鶴田はひたすら1ヶ月もかかってこの裏板につきっきりになりました。なにしろ厚さがよくわからないことと、堅い木材をイメージどおりに成形していくという作業は非常に難しいことだと感じました。

 

 

このスタイルのギターの裏板はまず原則として「1枚板」が一般的なのです。ブックマッチで逃げるというテもOKですが今回はなんとか1枚板を調達しました。当時はバーズアイよりもフレイムのきついいわゆるトラ杢の鮮やかなメイプルが使われることが多かったのですが市販されている木材はとてつもなく(恐ろしく)高価なのです。高価といえばコレ! イギリスのロジャースに特別注文した糸巻きです。当時の糸巻きでは真鍮の板状のツマミ(ノブ)が広く採用されていましたがなかには象牙や骨や貝を用いたものもありました。今回はノブを貝(M.O.P)にしてあります。

 

 

今回の私の課題のひとつは楽器の重量バランスです。19世紀ギターにおける裏板のアーチはごく浅いものですが彫り出す板の厚さを調整することで、重い糸巻きやメイプルネック(メイプル以外にもあり得ますけど)との重量バランスをとろうと考えたのです。ですから裏板の最も厚い部分は4.5mm程度の厚さにしてあり、19世紀ギターとしては全体的にも比較的重い楽器となります(注:これは鶴田の独断的セオリーであって伝統的な手法とは限りません)。

 

 

バーは接着しません.........(ア然)。 御覧のとおりサラダボウルのような裏板であります。上下ブロックを曲面に沿わせるのはたいへんでした。Gibson(オービル氏)は初期のマンドリンやギターにおいてこういったバーの無い楽器をいちはやく製作していたわけですが、アーチバックのトーンは独特の魅力があり現在でも不動の人気を誇ります。果たして鶴田の作るアーチバックシュタウファーはどんな音になるのでしょうか?

 

 

ネックとヘッド、そしてヒール部分です。ヒールは削り出しか2層にしようと思っていたのですがファブリカトーレのネック材と同様に木材を調達したこともあって今回は4層とします。ウイーンスタイルのギターのネックとヘッドのジョイントはデルタ(いわゆるラコートなどに見られるほぞ切り)スタイルや1本の削り出しなどいくつかの傾向がありますが当時凸凹スタイルのジョイント方式もまたポピュラーなスタイルでした。さきの Style-F では斜めにカットしていましたがここでは90度で木口を合わせます。タップリ膠を使います。

 

 

 

ちょうどよい写真が見つかりました。今回同時に製作をすすめていた3本のそれぞれ異なるスタイルのネックです。こういった部分へのこだわりは時として作業の進行を阻みますが、鶴田にとってはこういった調査が「楽しくてたまらん」わけです(笑)。あぁ〜〜〜〜〜楽しいぃぃぃぃぃ........じっくり迷いながらのんびり作ります。

 

 

この Style-S の場合は指板やフレットにも時代や地域によっていくつかのスタイルがあるわけですが、フレットは象牙や金属のバー、あるいは金属のT型などが考えられます。今回は象牙も検討しましたが同時に製作している他の2本が象牙であることと、兵庫のクロダさんがやはり象牙フレットでシュタウファーギターを製作されていますので対抗するわけではありませんが(笑)、なんとなく同じモノが並んでいるのもどうかと思いまして....。今回は金属のT型でまります。応答の速い細いマンドリンフレットが鶴田のお気に入りです。

 

 

ネックにも問題となる箇所が山ほどあります。材料は何にするか、ヘッドの形状や厚さはどれくらいか、ヘッドとネックのジョイント方式はどうか、ヒールの木材はどうか、ヒールの形状やボディとのジョイント方式はどうか、ツキ板を採用するかどうか、ヒール側とヘッド側のネックの断面形状はどうか.....などなど....こういったところで私はひたすら悩んだりなんかして....それでスローハンドというか製作の進行が遅くなるわけであります.....。しかしまあ幸いなことに今まで修理した楽器や調査した資料がけっこう蓄積されてきましたし、お手本となるギターも今回は手元にありましたので比較的スムーズに作業が進みます.......。

(前回の Style-F の解説文をそのまんま......)

 

 

サウンドホールとロゼッタの溝はルータと治具であっというまに仕上げてしまいました。速い、速い....さすが文明の利器。

 

 

ヒール部分の加工です。ノミとサンドペーパーで仕上げます。 Style-F よりやや鈍いピークを持つ形状です。ウイーンやドイツのギターではその多くがずんぐりとしたヒールを持つというのがひとつの特徴的傾向なのです。

 

 

はいはい、へりくつはほどほどにさっさとヘッドを接着しましょう。ニカワで3本まとめての作業です.....。

 

 

ネックとヘッドを仮に塗装しておきます。ボディの溝とネックのほぞのかみ合わせをチェックしながらネックの角度を決定します。この楽器の場合はごくわずかに逆反りにしてジョイントします(理由は本編にて....鶴田の作戦なのだ)。

 

 

毎回撮影せずにはいられないロゼッタの写真です.....。こういった作業はひたすらもくもくと作業します。まるで修行僧のごとく煩悩を払って.....ああ、ハラ減ったぁ....はやく寝たいぃ.....Zzzzzzzzzz............。

 

 

 

今回は過去に修理を行ったギターを参考にして製作しているのですが、表面板のバーもまたしかり(コラァ〜〜〜ッ! と叱りつけるわけではない)。御覧のとおりじつにシンプルです。但し、これを想定して表面板はほかのギターとは別の性格の材料を選びました。タッピングするとそのトーンの違いがすぐにわかるのであります。じつはこの前に1枚の表面板を作ってロゼッタまで付けたのですが、途中でやめて最初から表面板を作り直したのがコレです。表面板にはスタンプとサインが入ります。謎の刻印?がボディ左下部にも.......これは実物を見た人だけが知り得るのです...フフフフ....。

 

 

 

 

そうです、これまた鶴田の大好きな工程の写真です。この時点で裏板にはラベルを貼ってサインしています。なにげなく作業台の周辺に目をやるといろんなものが写っていたりします......。

 

はい、ボディを閉じ終わったところです。ハコです。まだボディの縁のビンディングとパーフリングは付いていません。

 

 

そしてその作業......ルータとノミを併用して作業しますが微妙なくびれの箇所はデザインナイフか手術用のメスを使って切っていきます。

 

ビンディングの接着を終えてパーフリングの溝を切ろうとしているところです。ビンディングは本黒檀を使っており、楽器をテーブルなどにブチあてたときなどに楽器を保護する役目を果たします。ただ、ドイツの19世紀ギターのなかにはビンディングを持たずパーフリングのみの装飾というものもありました。

 

 

なんだか本編は必要無いような気もしてきました......。これはビンディングとパーフリングの作業を終えたところです。

 

ようやくネックとボディを合体します。ものさしでネックの仕込み角度をチェックしながらニカワで接着します。この部分だけは鶴田は絶対ニカワを使います。ボルトジョイントでネックの角度を調整したりネック自体を交換できるような構造もあるのですがそういったギターを弾いてみてもなんとなく優位性を感じないのでひとまず今回はじかづけします(簡単だしぃ.....)。いずれはボルトジョイントもやってみようかとは思います......。

 

これが裏面です。裏板のアーチがなんとなくわかりますかな?ちょっとふっくらしてるでしょ? え? 気のせいだろって? Gibson のL-1 みたいかな?

指板はあとから接着します。我が工房にはさほど多くのクランプが無いので総動員してこんなかんじになってしまいます。ごちゃごちゃしてます....。

フレットは前もって高音域だけを打っておき、ネックと接着後に1〜11フレットを打ちます。この楽器の場合は12フレットはボデイ内側にあります(弦長もかなり短いのだ)。よく見ると21フレット仕様であることがわかるでしょう。以前、GGの編集長と飲んだときに彼いわく「コストとか弾くんなら17フレット以上なきゃ〜〜〜〜」という御意見?を今回は参考にしました。いわば「酔った勢いギター」とでもいうべきでしょうか? しかしまぁ、19世紀初頭から中期にかけては広域的にはギターといえば17フレットが標準的だったのですが.....まぁいいけど。そういえばウイーンのギターで19フレット以上を備えたモデルはレニャーニモデルと名付けられるようなので、このギターの場合はちょっと「レニャっている」といえるのでしょうか(謎)? さぁ、このギターでナポレオン・コストを弾きまくるのじゃぁ〜〜〜!

 

 

そして残るはブリッジです。写真のようなほおひげの広がったブリッジはウイーンスタイルのひとつの特徴ともいえますが、イタリアにおいてもガダニーニやのちのカラーチェのギターのようにこういったブリッジをウイーン以外でも見ることができます。もちろんファブリカトーレも2世はこういった幅広ヒゲブリッジを使ったギターを多く製作していたようですが。鶴田が思いまするにこういった形状のブリッジは「バー(力木)の役目を果たし得るのではないか?」というわけですが、そういえば2000年のフェアで水原さんとそんな話をしたような記憶が.........(謎を残して製作は続く).....。

先が見えたとはいえまだまだ作業は残っています.......ホームページ作ってる場合じゃないですなぁ、わははははは.......。

 

 

急いで編集しているので日本語が変な箇所もあるカモしれません...ひとまず御了承あれ...。

 


 

【続き:追加分】

 

追加写真1

 

追加写真2

 

追加写真3

 

 

追加写真4

 

追加写真5

 

 

 

というわけでこまかいことはいずれ本編にて......。

 


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