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● みなさん自分で楽器を弾いて録音したことがありますか?.....私はあります、イヤというほど何十曲も録りました。スタジオを借りたり高価なDTMソフトを駆使したり、しまいには自分でパソコン用のマルチトラックレコーダーのソフトウエアを開発したことすらあります。
私はMIDI(つまり打ち込み)はまったくやりません。もっぱら生録、そう、自分で間違えながらノイズを含みつつ録音する......ヘタクソですが打ち込みと違って緊張感があるし、いかにも人間が弾いてるという生々しさがイイのであって、それが楽しいのです。で、鶴田は昔はカセットテープの8チャンネルMTR(もち、マルチトラックレコーダーのことね)を使って一人三役とかの重ね録りなんぞをやってました。BBEやdbxのようなノイズリダクションシステム等の機能が進化してはいても機材は邪魔で、しまいには置場所がなくてMTRは友達にあげちゃいました。その後、録音といえばカラオケマイクとMDというじつにシンプルなシステム構成だったのです........。
そして最近、どうしても録音せねばならないことになって久しぶりに楽器店なんぞを見てまわったのですよ...そしたら! あるじゃないですか! コレ!!
も〜〜〜〜〜、私は感激しましたよ。つまり、コレは何かといいますと.......
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・マルチトラック録音:デジタル録音で基本的には一人3役(3トラック個別録音)が可能。ピンポン録音でまとめていけば何人分でも重ね取り可能。ちなみにあと2トラック(ドラムとベース)付いているので5トラックと考えてもいいでしょう。デジタル録音だから編集しても音の劣化が無いに等しい。長いソロの曲を分割録音するという使い方もOK!
・エフェクタ:エレキギターやキーボード用にディストーションなどの効果も付いていますが私はアコースティックギターの録音が主体なのでリバーブやコーラスやディレイといった空間系のエフェクトのみを使います。
・リズムマシーン:私はまったく使いませんがメトロノーム代わりにはなります。鶴田は気が短いのでとにかく打ち込み系の作業は面倒でダイッキライなのです、それやるぐらいならメトロノームを鳴らして録音してから使います。しかしまあ、ドラマー募集中のギター少年やフラメンコみたいな12拍とか変拍子を楽しむという使い方もあります、はい。
・アンプシミュレータ:エレキ少年とってはビンテージマーシャルのような名器やオートワウ、あるいはファズの効いたアンプシュミレータが楽しいでしょう。ヴァンヘイレンのリードを夜中に大音響でコピーに努める若者(まあ、若くなくてもいけど)にとっては利用価値は木村大!
・入出力:エレキギターもマイクロホンも様々な電子楽器もたいてい入力できて、オマケに本体にマイクを内蔵しているので買ってなぁ〜〜〜〜んにも無くても録音可能。
・その他:じつはクロマチックチューナーを内蔵していて、イザというときにこいつで調弦できたりするのです。
● さっそく録音してみました
バッハとソルの曲を19世紀ギターによる演奏です。ソルのエチュードはソロの一発録り、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」は一人二役の2重奏です。当クレーンホームページの「コンサートホール」のコーナーにて鑑賞していただけます。いっときますが演奏は上手くないです、参考程度に...。
● 使ってみて......
曲の記録(録音)データはスマートメディアというカードメモリに蓄えられます。同時に各種のエフェクタ類の設定なども記録されます。購入時には8MBのカードメモリが付属していますが、これに録音しようなんて考えず、別途32MBとか64MBを買うべきです。付属メモリは別途購入したカードメモリをフォーマットするのに必要です、無くしちゃダメ。
買ってマイクつないで生ギターの音を録音しようとしたらデフォルトのイコライザ特性とスレショールド値が悪いせいかこのままではとても使えません、私はマニュアルでパラメータをいじって使っています。それでもけっこうなノイズ.....どうして? ZNRという独自のノイズリダクションを採用していますが、コレがいまひとつ。
おせじにも操作がわかりやすいとはいえませんがあまりにも多機能をこのサイズに凝縮したので仕方がありませんね。むしろ、これも例にもれず取扱説明書が最悪の表記・表現であることはこの世界のジョ〜シキ.....なんとかしてほしい。
今までのカセットMTRに比べればはるかに操作(頭出しとか)が素早く行え、パンチイン/アウトもズレない(アタリマエ)。何回録りなおしても音は劣化しないし駆動機械(モーター類のアクチュエータ)が無いので安心操作。
ときどきユーザ用のソング51番の音が出なくなりフェーダをいじりなおすと復活することがあります、どうやらファームウエアのバグです。録音を開始するときにカウントタップが4発鳴るはずなのに鳴らずに録音が開始されるというバグもあります。これらの問題点はいったん電源をOFFにして再度起動すればなおります、パソコンと同じです....早期改善を求む。誤って消してしまったかと思ってびっくりしたぞ〜〜! フェーダ自体はスゴク便利。
いちばん心配していたのが空間系のエフェクタの効果ですが、BOSSのリバーブのようにいかにも「リバーブかかってるぜぃ!」というようなロコツなリバーブではありません。但し、録音時にいちいちエフェクトDRIVEを選ばねばならないのはおかしいと思います。演出系イコライザやエフェクタ類をまったく介さない「素」の録音はできないのか?? 仕方なく自分でパラメータいじって「鶴田風素エフェクト」を登録して使わざる得ないのです...。
入力には標準ジャックとミニステレオジャックの2つが付いているのは便利。出力もそうですが2つのサイズのジャックは変換アダプタが不要です。ただ、MDから録音するのはよしとして、パソコンからこのPS-02へ録音するにはインピーダンスがミスマッチのせいかゲインが確保できず使えませんでした。
● 結論
なんだかんだ書きましたが、気に入ってます。この値段でこの機能は賞賛!拍手!
しかも乾電池で動くのだ! さらにACアダプターまで付属しているという心憎い配慮。お店で買おうとしたら在庫切れという大人気。しかたなく展示品を購入(定価は35000円のところを28000円だった)。正直いって宅録はもうやんないと思っていたし、ノーテーションソフト(楽譜浄書)とかシーケンサソフトはお蔵入りしていたのですが、コイツは手軽で便利なので再び録音に燃えそうです!?
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● アコースティックギター用の設定を作る!
さて、生ギター(つまりナイロン弦やスチール弦で電気を使わない)の録音では前記のとおり買ってきてすぐに録音してもノイズがすごくて使い物になりません。ウソだと思ったらまずは録音して聴いてみてください(たんに録音する手順は付属の取扱説明書の27ページ〜29ページを御覧あれ)。ノイズも目立つことながら低音がダブついてミットモナイ....。これはプリセットされているもののなかでは比較的ノイズの目立たないと思われる27番で録音しています。
・プリセット27番のまま録音
・マイクロホン:PS-02内蔵マイク
・使用ギター:19世紀グリーンハーフラベル
ドゥーブル(Double)より:J.S.バッハ作曲 鶴田編曲 MP3形式 [450KB]
次に鶴田なりのパラメータ設定をここに紹介しておきます。使用するマイクロホンの特性や使用する楽器によって各パラメータの値は変えたほうが良いでしょう。パソコンの種類や再生ソフトによって音はけっこう違うようですが前者とのノイズ等の比較の参考にはなるでしょう。みなさんもお試しあれ。
・クレーンエフェクトで録音
・マイクロホン:PS-02内蔵マイク
・使用ギター:19世紀グリーンハーフラベル
ドゥーブル(Double)より:J.S.バッハ作曲 鶴田編曲 MP3形式 [480KB]
さて、まいりましょう。PS-02での録音は最初にエフェクトタイプ(開発元のZOOM社ではパッチと呼んでいる)を選ばねばならないのですが、USERの好みでリバーブのかかりぐあいや音質調整してその設定を新たなパッチとして登録することが(例えば「USER1番」とか)できます。ここではPS-02の出荷時に設定してある21番という設定をいじってやって自分の好みに合わせる方法を説明します。教科書(付属の取扱説明書)では61ページ〜64ページ及び66ページの上半分に説明してはありますが......わかりにくいのよ......ホント....。
【準備】まずPS-02購入時に付属のメモリーカードでPS-02を起動し、買ってきたメモリーカードをフォーマットします(教科書75ページ参照)。このとき新たなメモリーカードには各種設定が書き込まれ(設定が引き継がれる)、同時に起動ディスクとなります。次にフォーマットの終わったメモリーカードで起動します。さあ、録音に使うマイクロホンをつないでください(PS-02の内蔵コンデンサマイクでもよいです)。
(1)まずセレクタの
または
で
のEFFECTを選びます。そして本体下部にあるEFFECT
PATCH選択ボタンの
または
で21番を選択します。このとき液晶表示
の右上に 数字番号 と USER という小さな文字が表示されます。
(2)EDITボタンを押します。そしてセレクタ
の
または
で液晶表示
の下部にあるZNRの●が点滅するようにします。このZNRとは録音時に雑音を自動的に聴こえにくく抑圧するしくみのことですので、これを左フェーダ
でゼロに下げます。はい、これでまずは諸悪の根元?であるZNRを殺したことになります。
(3)次にセレクタの
または
で液晶表示
の下部にあるEQの●が点滅するようにします。これは音質の調整を行うしくみですので、左フェーダ
で高音域HIGHを -6 ぐらいにします。同様に中央フェーダ
で中音域MIDを 1 ぐらいに、右フェーダ
で低音域LOWを -1 ぐらいにします。この設定を行っているあいだじゅうマイクに向かってギターを弾いて音色の変化を聴きながら行うとよいでしょう。各音域のレベル値は液晶の右上に数字として小さく表示されます。コツはというと、やや高音にノイズが残るぐらいにして全体的に聴きとりやすいバランスにすることです。PS-02内蔵のマイクを使う場合は本体右下の白いMICボタンを赤く点灯させておきます。使用するマイクでの音量が小さいようであれば
HIGH と MID と LOW
を全体的に大きめの値に設定するか、もしくは教科書34〜35ページを参考にしてマイクゲインを上げるといいでしょう。
(4)音質の設定がだいたい納得できたらSTOREボタンを押します。すると液晶表示
の文字が点滅するので、この状態で本体下部にあるEFFECT
PATCH選択ボタンの
または
で USER 1番 を選択します。つまり自分の好みの設定に番号をつけてPS-02に覚えさせるわけですね。液晶表示の右上に必ず USER 1 となっていることを確認してSTOREボタン
を押します。しばらく待つとあなたの設定が記録されます。
さあ、これでクレーン風アコギパラメータ設定の完了です。あとはこの「USER1番」のエフェクトで録音して効果を確認してみましょう。おそらくサ〜〜ツというノイズが小さく聴こえると思いますがマイクロホン自体や部屋の照明器具、あるいは家電製品がけっこうノイズを発生しているので限界があることを覚えておきましょう(スタジオにPS-02を持ち込むめばまた違うかもしれません)。このノイズは気になりますが、ミックスダウン(つまり曲を完成品としてMDとかDATとかパソコンに取り込む)のときに32番のエフェクトをかけておいて再生させればかなりノイズは目立たなくなります。曲を録音し終えた時点ではやや硬い音質ですが、こうやってミックスダウンエフェクト(教科書38ページ参照)をかけることで音はなめらかになり、聴きやすくなるのです。
もし、あなたの作成した「USER1番」が好みのイメージと違うと思うなら(1)から(3)をやりなおして、(4)の作業時に設定の保存先を「USER2番」に指定するといいでしょう。こうやって弾きながら、録音しながら、「USER3番」、「USER4番」.....というようにいくつかのエフェクト設定を保存しておき、楽器を変えたり部屋が変わったり、マイクロホンが変わったりという状況に応じて「USER * 番」を使い分けて録音すればよいのです。
ちなみにメモリーカード(スマートメディア)に設定したあなたのエフェクト設定「USER * 番」はメモリーカード自体に記録されているので新たに購入してきたメモリーカードをPS-02に差し替えると最初にこの作業を行って設定しなければなりません.........が、それでは面倒ですね。そこで、どうするかというと「USER * 番」の設定作業を終えた時点でこのメモリーカードを使ってPS-02を起動し、未フォーマットのメモリーカードをすべてフォーマットしちゃうのです(私は32MBのメモリーカードを数枚買って使っています)。そうすれば「USER1番」の設定はそのまま引き継がれます。
PS-02内蔵のマイクロホンはコンデンサ型ですので高音域の特性は優れていますがサ〜〜ッというノイズがやや目立つかもしれません。私は市販のダイナミック型マイクロホンをつないで録音しています5000円ぐらいの安いマイクでありながらもまずまずの性能.....。ホームページ上に掲載している私の演奏データはすべて自宅のフツ〜〜の部屋で録音しています、道路が近いので通りの往来や自動車の音が常にあるにもかかわらず鑑賞にあたっては目立たないはずです。使用するマイクや楽器のタイプによってもパラメータの設定値はかなり異なりますし、好みもありますのでトライあるのみです。高音域HIGHをあまり下げすぎるとツヤの無い音になるので難しいところです....。PS-02をプロの演奏家がCDのマスタリングに使うことはないでしょうけれど、手軽に持ち運べて録音したものを私のようにホームページに手早く掲載するような使い方としては非常に便利なツールでしょう........。
ふぅ.......。
記事:2000年11月