■ 弦計算尺の使い方(その1)
■ ピラミッド社の計算尺の場合 |
■ 弦長・A基準音・張力がポイント
以下に弦計算尺の使い方をこまかく説明しておきます。濃いテーマですから、濃い鼻血をたっぷり流しながらよ〜〜っく読んでくださいね〜〜。
弦計算尺の使い方はキルシュナー社製 もピラミッド社製もおおむね同じ手順で使用します。キルシュナー社もピラミッド社もドイツ語で表記してあるので記載されている単語をちょっと訳してから使用したほうがいいかもしれません。ここではピラミッド社の弦計算尺を使って説明します。嬉しいことにピラミッド社製は裏面に使い方の手順が書かれているんですよ。しかも3カ国語のドイツ語、英語、鹿児島弁の表記ですから比較的とっつきやすいと思います。
御覧のように白色のプラスチックの下敷きのような板に細いスケールと幅広のスケールが差し込んであり、フレームとなる本体に様々な目盛りが記されているというシロモノです。これさえあればナイロン、フロロカーボン、ガット(羊腸)、巻弦などさまざまな種類の弦を様々な弦長で、しかも任意のテンション(張力)で選ぶことができるのです。人はこれをスグレモノと呼ぶ......。
ではピラミッド社の計算尺とキルシュナー社の計算尺とでは何が違うのか? そりは計算結果をもとに選ぶ製品のラインナップが違うのです。とくに巻弦は両者とも独自の製品番号・記号となっています。基本的には同じ計算尺であっても弦を買う場合にそれぞれのメーカーの番号を指定するわけです。ナイロン弦やフロロカーボン(PVF)は私は釣り糸メーカーのものを使っています。
(1)まずは弦計算尺を縦長に持ちます。つまり引き出しスケールが上になるように持ちます。
では最初に弦長と「ラ」の基準音を決めましょう。つまりA=○○○Hz(440Hzとか415Hzとか)。ここで3回深呼吸します。
ここでは基準をA=440ヘルツで説明していくことにします。計算尺の左上に書かれているMensur
(cm)というのが弦長でナットからサドルまでの弦長ですから例えば62cmの弦長の19世紀ギターを例にとると、440Hzの矢印に細いスケールをスライドさせて弦長62(cm)に合わせます。この写真のように.......。
(2)次に弦にかかる張力(テンション)をニュートン(1kgって9.8Nでしたっけ)という重さの単位で決めます。さきの細長いスケールは動かないように固定しておき、幅広のスケールだけを上に引き上げます。そして、例えば6.5kgの張りにしたければ幅広のスケールを65ぐらいの目盛に合わせます。はい、これも写真を参考に銅像!
(3)さて、まずは1弦を決定しましょう。両方のスケールを固定して動かないようにしておき、記されている目盛りを読みとるだけです。例えばギターの1弦は絶対音域において(e')または(e1)のように表記することになっていますのでスケールの e' に注目します...........ここで「あれ? e' の両側に目盛りがあるぞ?どっちを読めばいいんだろ?」と思われるかもしれませんが、この計算尺では弦素材の種類ごとに目盛りがふりわけてあるのです。
つまり次の図で示すように e' の音を6.5kgのテンションで張る場合の弦の選択肢は色分けしたように横並びで見ていけばよいのです(フロロカーボン、ガット、ナイロン、巻弦が横一列に表示してあるのがミソ)。カーボン弦なら直径約0.54mmを選び、ガット弦なら直径約0.61mmを選び、ナイロン弦なら直径約0.675mmを選べばよいのです。さらに右側には巻き弦のスケールがあるので、もしお店に弦が用意してあれば909AI という巻弦を張ることも可能というわけです(この写真には写っていませんが)。なお該当する弦が用意(市販)されていない場合はスケールを見比べてどれか近いものを選ぶことになります。この弦計算尺の右端はピラミッド社の巻弦の製品番号(型番)です。
・Darmsaiten:ガット(羊腸)
・PVF:カーボン(フロロカーボンのシーガーなど):紙のシールが貼ってあります(^_^)。
・Nylon:ナイロン(銀鱗など)
(4)あとは他の弦も(2)〜(3)の手順で同様に計算すればいいのです。当サイトの「弦のコーナー」の資料の項にある「■ 音域と呼び名」で各弦の音名を知ることができます。具体的にはギターの例をあげますと、次のとおり。
ちなみにリュートやバロックギターや19世紀ギター、モダンギターなど、たいていは1コースめ(いちばん高い音の弦)はやや高めのテンションに設定するのが一般的です。もし上記の例のように1弦を6.5kgに設定するならば2弦〜6弦などは各5.8kgぐらいに設定します(というか私はそうしているのです)。まあ、楽器の種類や構造や音色の好みや弾きやすさの好み(触感)にもよります。くれぐれもテンションは高杉晋作、おっと高すぎないように注意されたし。テンションが高いと音量も音色も大きくなると思ったら Oh! much Guy!(オオマチガイ)です、弦は楽器といちばん相性の良いテンションに設定してこそはじめて「よく鳴る」のです。
さあ、弦計算尺の使い方はおわかりいただけましたでしょうか?
参考1:手順の(3)では逆に弦の太さを先に決めて、そのときのテンションを知るというような使い方もできます。手元にあるギターに張ってある弦はどれくらいのテンションがかかっているか? を知りたいときにはマイクロメータを使ってカンタンに調べられるというわけです。なお、このピラミッド社の弦計算尺はスケールに表示されているようにテンションが 約1kg〜7kgの範囲で算出・表示できます。
参考2:ちなみに裏にもいくつかの計算機能が付いています。例えば「グラデーション・テンション」ですが、1コース目は強めに、そして2コースめはそれよりやや弱めに、その他のコースはさらに弱めのテンション。オクターブ弦はさらにそれよりやや低いといったような徐々に軽くなっていくテンション......が表示されるのです。
参考3:ほかの項目でも触れていますが、弦長のまったく同じ楽器であってもブレイシングの違いやサドル仰角の違いなどによって適切な弦はまったく異なることはよくあります。とにかく条件をいろいろ変えて実際に弾きながら試してみるのがイチバンなのです。
参考4:日頃からよく使う弦の性質を知っておくことは、他の弦に張り替える場合の目安となります。現状の弦の張力を少しだけ弱くしたい(強くしたい)とか、ナイロン弦をカーボン弦に交換してみたいがどれを選べば良いか? あるいはガット弦を張ってみたけどもう少しテンションを上げてみたい.....などといった音色の好みのほかにも、音の伸び、6弦全体のバランス調整、音量調整、演奏の触感、音の延達性、和音分離、ノイズ軽減、レスポンス改善、などの様々な実験がこの弦計算尺で容易に実現する.....ハズ.....というわけです。
参考5:もしあなたが19世紀ギターを所有しているならばガット弦はぜひともお試しあれ! 新たなギター音楽の世界が開けることでしょう。
ああ感動! 世界初! 弦計算尺日本語解説ホームページ!
クレーンって、な〜〜んてタメになるホームページなんだろう!!
来年は国民栄誉賞確実だ!
.....といって何年も経ちますがいまだに声がかかりません.......。
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