■ 参考:金属弦と巻弦について
金属弦と巻弦について、様々な文献や世界中の弦メーカーのサイトやカタログなどから収集した資料を私なりに解釈したものをここに掲載しておきます。 随時、新情報が得られれば更新していきたいと思っています。
■ 金属弦について
楽器に用いられた初期の金属弦は南ドイツにおいて14世紀以降であるといわれており鉄、銅、または銀製の弦が使われたようです。鉄製の弦について最初に言及があったのは1511年とされ、人の手によって引っ張って製造されていました。強度的にみると初期の金属弦は切れやすかったとされますが楽器のテンション自体が比較的低く、優しい音色を奏でるには充分な強度であったようです。
ガット(羊腸)弦は最初、地中海地域の人々がヨーロッパで使用し、均一な太さで切れにくい弦を作るのは困難で特殊なノウハウ(秘伝)があったといいます。のちに18世紀〜20世紀初頭にかけて金属弦が大流行した時期がありますが、その原因は煌びやかな音色とサスティーンもさることながら、耐摩耗性が低く切れやすいガット弦に対して品質の向上した金属弦が切れにくかった(弦交換の手間が省けた)ことも大きな要因でしょう。丈夫で長持ちする細いガット弦製造技術は極秘とされ、当時は高品質の弦を安定供給した弦メーカーもあったかと思いますが、その技術の継承がままならなくなった時代において、おそらくガット弦は一般的には品質が低下したであろうと推測できます。
バロック期以前から18世紀までに知られていた弦楽器用の金属ワイヤーは5種類で、金、銀、銅、鉄、真鍮とされています。青銅(ブロンズ)も17世紀には存在し、1834年以降、鋼鉄(スチールワイヤー)が加わり、やがてメッキやコーティングされた金属弦が現代にわたって製造されるようになっていきました。スチール弦は力強くやや荒々しい音色、青銅や真鍮製の弦はやわらかい音色になりますが、メッキやコーティングすることによって素材の同居により耐久性や音色の性質が変わるというわけです(真鍮などはたとえ未使用でも放置すると自然に表面の腐食が進みます)。
■ 巻弦について
1758年にフランスで発行されたL'Encyclopedie Diderot & D'Alembertには巻弦を作る版画が刷られていることからもそれ以前に「巻弦」は存在していたことは確かです(素材ははっきりしませんが)。初期の巻弦はガットの芯材もしくはシルクの芯材に金属を巻いたものであったようです。一説によると(アクイラ社のサイトにもありますが)1600年代中期にはすでに「巻き弦」は存在したといわれています。巻弦の音色について重要なのが芯材のしなやかさであり、低音弦として製造する場合、芯のガットで太くして金属細線を巻けば容易に比重の高い弦を製造できるわけですが、硬直でしなやかさに欠け、そういった弦の音色はかならずしも魅力的なものではなかったようです。そしてそれは芯材が金属から他のしなやかな芯材に変わる17世紀末頃まで待たねばなりませんでした。
少なくとも17世紀末には中世ヨーロッパにおいて天然シルクが芯材に用いられていたとあります。つまり太いガットの芯材よりも細い繊維をたくさん束ねたヒモ芯材に金属線を巻くことで優れた柔軟性を得たのです(キャットラインのようなロープ弦もしなやかさを求めて生まれたもの)。当時はガットの弦づくりと同様に張力をかけながらシルク繊維の細い束に細い金属線を手で巻いて製造していたようです。細い金属線の加工が定着し、量産できるようになったのも17世紀末とされています(以外と早い時期ですね)。
シルク(絹)に金属を巻いた弦は当時の奏者たちに歓迎されましたが、吸湿しやすく伸びやすい性質のため極端に細い巻弦の製造は困難でした。やがてそれは1946年以降、次第にナイロンや他の合成繊維が芯材に用いられるようになり気温や湿度の影響、あるいは手の油脂や引っ張り強度といった点で耐久性が大きく改善されました。
・おっと、ここまで書いたところで新情報が入ってきました。 いずれ追記・改訂したいと思います。今回はひとまずここまで.........。
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