● リペアでおじゃる ●
(C) 2020 Makoto Tsuruda / CRANE
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■ カポタストの修理(掲載3件目)
カポタストのリペア、いくつもやったのですが過去に2件をこのリペアのコーナーで紹介しています。今回は掲載例としては3件目。
工房CRANEが2010年に弦楽器の展示会(錦糸町でしたか、懐かしい)にブースを出品していたときにお買い上げの新品のカポ。
アンボイナと厚い象牙のモデルです。しかもエンジ色のエイ(スティングレー)革ベルトの特別仕様。
さらに、これは R モデル。つまり指板が平たくない丸くふくらんだラウンドフィンガーボード用です。
現在ではこのタイプのカポタストは作っていません。
※ 以下、画像クリックで拡大表示
そう。フレンチの19世紀ギターや18世紀バロックギターの一部にもラウンド指板はありますが、
アコースティックギターでは弦の張力が強いので装着も少し力が要りますし、痛みやすいのです。 そのため作るのをやめているのです。
メンテナンスの問い合わせがあって写真を見せてもらったところ、丁寧にお使いのようで状態は良いです。
ソールの摩耗とガット(羊腸)のほつれが出てきたので交換となりました。
● 作業内容
さすがに10年経過しているので、天然の生ゴムソールは剥がすときに割れてしまいました。
あと、ここには到着時の写真がありませんが、象牙の変色や黄ばみがあり多少の汚れもあったのでクリーニングも行います。
このモデルはヒモにロープガット(羊腸)を使った特別仕様。編んだガットなので値段もお高いのですよ。
ドイツのキルシュナー社ではモデル名CD(キャットライン)と呼んで羊腸の透明度が高いつくりに対して、
アメリカのガムート社では Pistoy の一種として牛の腸で乳白色に出来ています。
まぁ、ウチの工房には両方のストックがあるのですが、今回はオリジナルに忠実に作業することにしたのでGamut社のガットを使います。
特に希望がない限り、長さも今までと同じ。
交換作業の写真のとおり、10年の経過でお疲れさん状態と新品とが比較できますな。
例によって、ガット先端を焼いて丸めるためだけのため にある我が家のZippoライターです。タバコは吸いませんがツールとしてお気に入りです。
ソールは黒の天然ゴム。厚さを同じにしないと R が変わってしまいます。
ラウンド指板のギター(ウクレレやシターンにも見られますが)は 楽器ごとにふくらみの度合いが同じではないので、
手元にR指板の楽器がいくつかあっても、このカポが全てに使えるわけではありません。
逆に、ソールの厚みを薄いものにしたりで若干のR調整をすることは可能です。
お気に入りのギターに使いたいけどカポのRが合わない、というような場合はR調整もやります(カポ底部を削るので何度も変更はできません)。
工房クレーンのカポタストは基本、フラットフィンガーボード用です。
カポ本体の厚みに余裕があれば底部を削ってラウンドフィンガーボード用に改造できないこともないです(お薦めはしませんが)。
はい。そんなわけで全体のクリーニングを行い作業完了です。当分はまた気持ちよく使っていただけるでしょう。
今回はペグの作り直し作業が発生しないのでわりと軽い作業ですみました。コロナ様のおかげで作業もはかどります(笑)。
CRANEのカポが摩耗したり折れたり切れたりしたら遠慮なく御連絡ください。ちゃちゃっとなおしますので。
返送料と材料代程度は頂きますが修理代や作業料はかかりません。クレーンのカポタスト(セヒージャ)は永久保証付きですからな。
素材やサイズや形状にもよりますが、おおむねメンテナンスは10日間ぐらいです。
元気があるときは一週間ぐらい、元気がないときは5年ぐらいかかります(ウソ)。
記事:2020年8月23日 コロナはつづくよどこまでも