■ 装飾部品・インレイ等のリペア
● ひとことで装飾部品といってもいろいろあるわけで、ヘッドストックのロゴやトーチインレイのほかにブリッジ両脇の飾り駒などが損傷いている例がありますね。ここでは記録写真の整理の都合もあって、まずは19世紀ギターのブリッジの装飾部品についての例をご紹介します。
この写真のように向かって右側の装飾が欠損していますので左側のオリジナルパーツを参考に部品を修復することにします。
ブリッジのピン部分からニョキッと両脇に張り出したチューリップ?ですが、まずはその茎の部分にとりかかります。はじめに残っていたわずかな木片(測れる範囲内で寸法は記録しておく)を除去し、茎にあたる黒檀の細棒を準備します。ベンディングアイロンで曲げたのち接着部分の角度にきをつけて糸のこでカットします。
そして茎はやや長めに先端を切り詰め、おおむねの断面(おおよそトンネル形状の断面)にノミと彫刻刀で削ります。接着面の角度を調整したのちタイトボンドで接着します。
で、鶴田の場合ははじめから茎部分をなめらかに仕上げずに先に接着し、完全に乾いてから削り作業を行って茎表面をなめらかに仕上げることにしています。
さあ、次は問題のお花です。材料は白色のマザー・オブ・パール(M.O.P)とそれを埋め込む基板となる木材です。その基板には高い加工精度に耐えられる(というよりディテールを正確に再現するため)ような木材を選びます。オリジナルパーツはリンゴ(果樹)を加工して黒く染めたものようにも思えますが今回はツゲを使い染めて仕上げることにしました。
はじめにこのような写真を撮影(マクロモード推奨)しておき、トレースして輪郭を得ることにします。
もっとも手書きのスケッチでもかまいませんし、おそらくプロの忙しい方はトレース作業は省略してすぐに削り作業にはいる方がほとんどだとは思いますが......でも鶴田は図面を起こすという事情もあって、可能な限りパソコン上でイタストレータのデータとしてトレースデータをとることにしています(恐ろしく面倒です、思い出すだけでもゾッとする)。わが 爺さん愛Mac 6100改 にデジタルカメラ画像を取り込みイラストレータに配置し、それをペンツールでトレースします。そろそろ高解像度のデジカメが欲しいです......マクロに強いのがいいなぁ......。
ノギス等で計っておいた寸法をもとになるべく正確に描くことにします。おおきく描いて最終的に原寸にリサイズします。
約2mm厚のMOPにプリントアウトしたトレースデータを糊付けします。これをバイスで固定して宝飾用糸ノコでおおきめにカットし、棒ヤスリなどを使って丹念に成形します。オリジナルを参照しながらのんびり.......なんてこと気長にやってるから鶴田はリペアもスローハンド.....。
どんどん先に話をすすめましょう。こちらは基板加工です。文字どおり丸太から切り出してノミやナイフでおおむねの厚さとサイズに加工します。
基板にトレースデータのプリントアウトしたものを糊付けします。クラフトノミやカッター、ラインヤスリ等でMOPと基板の型がピッタリ納まるように調整しながら成形していきます。両者の接着面でMOPに若干のテーパを付けるのがコツです。
写真は前後しますが、現物をよく見て雰囲気を出せるようにガンバルのであります。
インレイ用の接着剤かもしくは黒檀をニカワ(又はタイトボンド)で混ぜたものを使って合体!! パイルダー、オ〜〜ン! わずかな隙間の充填の役目も果たすのであふれんばかりに盛ってやります。完全に乾かないと切削時点で汚くなるので要注意、あせるべからず.....。
細い糸ノコで周辺に厚みをもたせて切り出していきます。ここで焦ると面倒なことになります。その後カッターとサンドペーパー400番程度でなだらかに成形....。
成形を終えたらツゲの部分を染めてパーツの完成。光の加減で写真写りは色がちょっと濃く見えますが比較してみましょう。この時点ではまだ若干の修正は可能です。
そしていよいよ茎に合わせて表面板へ接着され、修復作業完了です!
向かって左がオリジナル、右がリペアによる修復パーツ。ここで使っているディジタルカメラはいわばレンジファインダー式ですから正面から撮影しているつもりでも実際にはこのように斜めからのショットになって枝振りがやや非対称に見えてしまいます.....。一眼レフタイプのデジタルカメラも欲しいのですが.......ゼ〜〜タクいっちゃイケマセン?!
ヘッドストックやフィンガーボードのインレイもいずれは紹介するつもりです。おおむね作業の段取りはこれに準ずると考えればいいでしょう........ふぅ........。