|
■ 指板と表面板との隙間についての質問
● はい、そろそろ製作も終盤にさしかかってきました。ここで皆さんからネックとボディのジョイントに関して素晴らしい質問をお寄せ頂きましたのでここに御紹介しましょう。この写真の指板と表面板とのあいだに生じた隙間を御覧になりながら読んでいただけるとわかりやすいかと思います。
【Mさんからの質問メール】
>ウクレレ、ネックまでついて次に指版をつけようと思うんですけど・・・。
>ネックが表面版より少し高いんですけど、これってネックが面一になるまで削るんで
>すよね。そして、フィンガーボードも表面版にくっつくんですよね。
>で、もしネック削るとしたら表面版と真っ直ぐになるように削った方がいいんです
>か。それとも、どちらかに角度がつくんでしょうか。
>ウクレレって実物ほとんど見たことないんで良くわからないんです。
そうです、表面板は当初の製作の準備段階においてサンディングして薄くしてあるのです。ですからここにきてネックとボディのジョイントをホゾで合体させると指板と表面板とのあいだに写真のような隙間が生じるのは当然の結果なのです。さて、この問題にはどう対処したら良いのでしょうか。
【答え】
さあ、先を急ぎましょう..........え? 結局どうするのって? いやぁ〜〜〜、じつは方法はたくさんありまして製作のはじめに対処しておく方法やあとから修正する方法など様々ですが、例をあげますと........
1. 表面板をサンディングして薄く削る時点で表面板の上部(指板側)に向かって厚さの傾斜を付けておく。
2. ネックを削る(わずかに傾斜を付ける/平行に削る)
3. 指板の裏側を削る。
4. 表面板と指板との隙間に薄板を挟む(のみのみMLではこれをエレベーテッドフィンガーボードと呼ぶ)。
5. ほぞ穴を加工してピッタリに合わせる。
私の場合は面倒ですがいちばん確実な「まわり道」として 5. の方法をとる予定でした。しかし急遽方針を変更、
6. そのままにする(隙間をあけたまま)
を採用することにしました〜〜〜! これは綿密に計算されつくされた鶴田製作理論によるものであることは言うまでもありません(ウソ)。じつはこの作業を私がやっている時点で、すでに楽器を持ち寄る集い(のみのみMLのオフラインミーティング:飲み会だ)の日が目前に迫っていましてぇ〜〜〜、え〜〜〜〜〜、あのぉ〜〜〜〜〜、つまり、まわり道ばっかりだと集いに間に合わない可能性が500%ぐらいでしたのでぇ〜〜〜〜〜〜〜、この手抜きで、おっと、新方式で大きく時間を短縮できたのでありました〜〜〜! わっはっはっはっ........ めでたし、めでたし。
備考:用語として「ライズドフィンガーボード」とはネックごと表面板から指板高さを上げてある構造を指しますが、このように指板のみが隙間をあけた構造を19世紀ギターの世界では「フライングフィンガーボード」と呼ぶようです、かのシュタウファーのレニャーニモデルなどがそうですね。参考までに(何の参考なのよ?)。
■ ネック接着面の処理
● キットのボディとネックの接続部はそのままですと御覧のとおり両脇に隙間が生じてしまいます。これをスクレーパとサンドペーパーで削ってピッタンコに合わせてやります。ごくわずかにくぼむように削るのがコツです。
ヒールの長さもボディの厚さに対して少し長めにカットしておきます。私は先にこの作業をやっていたのですが、塗装を済ませたあとでもかまいません。
あとはボディ側の接着部位の塗装を剥離します。塗装の上から接着してもあとからカンタンにネックがもげてしまうので塗装膜を剥がしておく必要があるのです。ヒールの接着面はなだらかなカーブを持ちますがここではそれよりやや狭い領域にマスキングテープを写真のようにV型に貼って削ることにします。スクレーパを私は使いましたが、お持ちでなければサンドペーパーの80番〜180番を使って塗装を削り落とします。薬剤(剥離剤)を使ってもかまわないでしょう。いずれにせよ接着部位以外の塗装を汚したり削ったりしないように最新の注意を払いましょう。
■ ヒールキャップを作る
● 接着前にヒールキャップを作っておきます(あ、また余計なコトを...)。ここまでの状態では多少ヒールが飛び出ているはずですからさらにヒールを削って小さな板で覆うわけです。
薄い本黒檀の板を用意してキャップに使うことにしましょう。ノミ、ジュエリーソウ、篆刻用印材ホルダー、サンドペーパ、マイクロメッシュを使いました。こういった作業では篆刻用印材ホルダーはクレーンホームページで何回も紹介していますが、しっかり固定してケガやトラブルを招かないためにもオススメです。そしてまたジュエリーソウも何度も登場していますが精密なパーツの加工においてきれいに仕上げるためにはゼヒともオススメします、バリが出にくいので重宝しますよ。
実際にあてがってみて指で触ってその感触で段差がないように削っていきます。根気のいる作業ですが......。このあとヒールキャップのカドをサンディングしてなめらかにします。
はい、あとはニカワを使ってネックとボディを接着します。私の場合は両面にニカワを塗ってグリグリと押しあててはみ出したニカワをぬぐい取るようにしています。きちんと接着面の処理がなされていればピッタリ接着できるはずです。
ヒールキャップの接着はネックとボディの接着作業のあとから行います。私の場合は接着してから削ることもあります(修理なども含めて)。こんなカンジでいかがですか?
さて、ここまできたらほとんど完成といってもいいでしょう。でも最後に糸巻きやナット、サドル、全体の調整といった重要な仕事が待っています。
■ 目次に戻る