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 2. 資料収集・調査  写真や挿し絵を参考に

 

さて、製作する楽器のタイプが決まったら次はこまかい部分の構造や素材などの検討を行います。現在でも歴史的な楽器の図面はいくつか入手可能ですが、それらの図面の多くはことこまかく素材や構造の細部まで描かれていません。また楽器の年代やタイプによって異なることもあります。もしみなさんのお手元にオリジナルの楽器を所有している人がいたらそれを見せてもらうのもいい方法です。そうでなければ図鑑や博物館や楽器店(私は基本的に許可を得たものを使います)などの写真を参考にするのも一案です。このとき気をつけるべきは博物館の楽器や古い楽器ほど修復や改造が施されていることが多いという点です。リュートやクラシックギターに限らずマーチンやギブソンのギターやマンドリン、バンジョーなどもそうですが名作と呼ばれるものに限って欠品や修復はよく見られます。可能な限り多くの楽器に触れることでオリジナルのイメージをつかむようにしましょう。

現在は世界中のホームページ上でいくつかの楽器の写真が掲載されていたりしますが、楽器博物館によっては写真目録を発行しているところもありますし、知り合いで海外出張の際に「買ってきてちょ!」とお願いするのもいいアイディア!?(誰か鶴田に買ってきて...)。あと、クリスティーズやサザビーズといったオークションのカタログを購読するか古本屋で入手するというような手段もあります。それから、音楽雑誌のバックナンバーなどに楽器の広告があったり、市販されているCDのジャケットに珍しい楽器の写真があったり....まあ、可能な範囲内でテッテーテキに調べましょう。私のホームページでは著作権の関係から全ての資料を紹介できませんが可能な範囲内で関連写真を以下に掲載しておきます。

例えばヘッドについてもラコートには少なくとも十数種類は存在するようです。以下の左右の楽器は同じラコートでもエッジがほぼ90度のものと丸く面取りしてあるものです。このほか厚さやネック仕込み角度や方式、素材やカーブの微妙な違いなどが多くのラコートで見られます。ネックにも注目するとその断面の形状や塗装(染め)の有無などがあります。なお、今回製作するペグは以下の写真の形状をイラストレータでトレースして図面を起こしたものです。

 

それから指板(フィンガーボード)ですが、ラコートは大別してリュートのように表面板が10フレットあたりまで伸びていて指板と同一面にあるもの(フラッシュボード・タイプ)と現代のギターのように指板がサウンドホール付近にまで伸びているものとがあります。以下の2つのでっかい写真を御覧あれ!

ちなみにラベルはどちらもオーバルタイプですね。私は今回は現代の指板のタイプを採用することにし、以下の写真のようにオリジナルの多くは17フレットですが欲張って19フレットまで付けようと思います、ホンネをいうと丸いロゼッタが難しそうだから(おひおひ).....。

あと、以下の2つの写真のボディ内部に注目してください。ラベルの周囲からわかるようにスプルースであることに気付くはずです、外観はマホガニーのツキ板がどちらの楽器も貼ってあります。ようするにこれが2層構造なわけです。今回はマホガニーの広い板が入手できませんでしたので別の材料(メイプル)にします。なお19世紀当時はカリンとスプルース、メイプルとメイプルなんていう二層構造も存在しました。フレットは下の写真にならって象牙...は難しいので獣骨にします。

 

 

あとはブリッジの素材と形状などについて考えてみましょう。おおむね黒檀が広く使われているようですがたいていはモダンなクラシックギターと比較してコンパクトというか小ぶりです。サドルも下左の写真を見る限りでは高めの設定カモ。エンドピンはもちろん装脱着可能に。貝の装飾(ブリッジのボタン)については白蝶貝かマザーオブパールでいいでしょう。

 

楽器の種類によっては写真が大きなヒントになるわけですが、それだけに頼りっきりにならずあれこれ調べることをオススメします。そして調べた資料の中から情報を取捨選択吟味して1つのカタチとそれを構成する素材を決めていくわけです。

 

 


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