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■ 21. 塗装 仕上げよりも換気に注意?
え〜〜〜と、ネックとボデイがひととおり形になったところで塗装前に重量を量ってみましょう。以下の写真のとおり565gです。軽けりゃいいってものでもないのでしょうけど私の感覚で作っていくと自然とこのような重量になるようです。
塗装はじつに様々な方法があってそれだけでも1冊の本が、いや10冊ぐらいの本が書けてしまいます。ここでは鶴田式塗装法ということでご理解頂きたいと思います。おおまかに塗装の手順を以下にまとめますと....。
【塗装の手順】
1. 塗装面のサンディング(下地処理)
2. 下地作り(目止め):Opサンディング
3. 下塗り
4. 本塗装
5. 研磨
(1)まずは全体を軽くサンディングして滑らかにならします。このとき小さな傷やパフリングの隙間などがあればしっかり補正しておかねばなりません。あとから塗料で埋めればいいやなんて思ったらオオマチガイです。私はサンディングは#320ぐらいのサンドペーパを使いますがちゃんと木製ブロックかウレタンブロックを使ってサンディングしないとデコボコになります。今回はメイプルのツキ板なのでどうしても塗装時には水分を吸って波打ってしまいますがこの段階で可能な限り平坦にしておきます。なだらかになったら#400とか#800で再度サンディングしますが使用する木材などによって使い分けています。ネックも同様にサンディングしておきます。
(2) そして必要に応じて「目止め」を行いますが、楽器のスタイルや木材によっては私は手法を変えます。ここで使用しているラワンなどは比較的目が大きく導管があるのでなんらかの目止めを行って小さな穴や溝を埋めておいたほうがいいわけです。製作家によっては逆にこの木の小さな溝をあえて残すという塗装法もあります。目止めにはシーリング剤(シーラー)あるいは「との粉」のようなものが市販されていますが私は今回は白セラックを使います。セラックとカシューなどは重ねて塗ると相性の悪いものもあるので塗装の解説書を参考にしたり、前もって他の木片で試験塗装したほうがいいでしょう。比較的大きな導管や傷を埋めるには「フィラー」を使います。
最初から最後までセラックだけで仕上げることもありますし、エッグテンペラを使うこともあります。
塗装前には数日乾燥させ、この下地塗装を行う日は湿度の低めの日を選ぶようにしています(け、決して忘れていたり休憩しているわけではありません、ぜ、ぜったい違うってば...)。
ではまず白セラックをハケ塗りします。これは早く乾くので数時間経過して乾いていたらもう一回塗ります、さらに乾かします。
下地の塗装が終わって乾燥させると水分を吸収した木材の表面は繊維が起きあがってザラザラしていますから#320か#400ぐらいのサンドペーパで滑らかにしてやります。それをタオルで拭きあげて表面の状態をチェックします。まだ導管が目立つようであれば再度白セラックを塗り、同様のサンディングを行います。下地ですから厚く塗る必要はありません。
(3) 次に下塗りを行います。さて、今回の塗装はどうしたものかと考えに考えたのですが、セラックにすることにしました。セラックは日本では東急ハンズなどで見かけたことはありますが楽器用であれば海外の楽器製作のお店でも扱っています。使い方は基本的には塗っては乾かしを繰り返すだけですからそう難しくないのですが製作家によってはあれこれ濃度を変えたり混ぜモノをしたりという独自の工夫があるのが普通です。まあ、そのへんはプロに聞いても教えてくれないのが一般的です。さて、話をもとに戻して下塗りの作業の手順ですがセラックはアルコールで溶かします。メタノールかエタノールを薬局で買ってきます。私はエタノールを使うことがほとんどです。
なお、セラックについては詳しい記事が当クレーンホームページのバックナンバーに掲載してありますので参考に御覧ください(岐阜セラツクさんの御協力による特集記事です)。
小瓶にセラックの破片を入れてアルコールを注ぎ1日放置すればいいでしょう。セラックフレークはまえもって粉砕してもかまいません。塗りにはハケとタンポで塗る方法がありますが、ここはひとつ木綿の布で作った自作のテルテル坊主をタンポ代わりに使います。別名擦り込み法とも呼びます。いずれにせよ塗ってしばらくたつとすぐに乾くのでこれを5〜7回繰り返します。そして1日乾かします。
参考:セラックの塗装方法のひとつに「フレンチポリッシュ」がありますが、オイルとパミス(軽石の粉、またはロッテンストーン:大理石粉)を使う方法で世界中の多くの弦楽器製作家が行っています。
塗装は試行錯誤するしかないなぁというのが私の実感です。あのスペインの名工アルカンヘルですら塗装は自らは行わず塗装職人にまかせているそうです。
はい、つづき〜〜〜〜〜〜っ!