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 24. ペグの製作   木工旋盤を制覇せよ

 

さてペグを作ります。えっ?買うんじゃないのぉ〜〜?! と思ったら大笑い海水浴場ですぞ。今回は自作することにしました。ペグ製作には木工旋盤、ペグシェーパ、ペグリーマといった専用工具を必要としますので楽器をたくさん作らないのであれば投資が無駄になってしまいます。

さて、この時代の木ペグはだいたい黒檀でできています。なかにはペアなどを染めたペグもあります。今回はオリジナルラコートにならってそのまま黒檀で作るほど鶴田は素直じゃないのでありました(笑)....というのもこの楽器はいくつかの実験を兼ねているということはすでに書きましたが、ここでも一つの試みを施したくなったワケですよ、はい。歴史的な手法にこだわるみなさんスイマセン、ちょっと目をつぶっててください。

さて、では何を使うかということで考えたのですが、この記事を公開する目的も考慮して読者のみなさんがなるべく入手しやすい材料にしたほうがいいのではないかと思い、あれこれ探したあげく樫(カシ)にしてみました(笑)。ピノキオも作れます。樫はカンナ台やクワの取っ手などにも使われているポピュラーな木材です。堅くて反りにくく黒檀よりも軽いわりには削りやすく加工はさほど苦労しないので木工旋盤を今回はじめて使われる方にもよろしいかと思います。木工旋盤に慣れたら黒檀でも試してみればいいでしょう。今回は好都合なことに東急ハンズで樫の丸棒が販売されていました、直径30mmです。もしあなたがうまく見つけられない場合は角材を購入してカンナで角を落としてから使ってもいいでしょう。切削用のバイトは下の写真以外にも大きな丸刀を使っています。木工旋盤については当クレーンホームページの製作工具コーナーをご一読ください。

 

さて、図面を参考にしながらコケシ職人になります。なんだか車のシフトノブみたいですね。細かい手順については当クレーンホームページの製作工具コーナーの木工旋盤の項に紹介してあります。最初の1本を可能な限り正確に作っておいてあとはノギス等で計りながらそれに合わせて2本目を作るといいでしょう。

 

はい、6本できました。形を揃えるのはちょっと面倒で時間がかかりますが慣れてくればさほどでもありません(私は面倒だと思ったけど)。1日で6本ぐらいは充分作れます。私の使っている木工旋盤の材料保持の治具は片方が + になっていないのでこのように片方に皿を残さねばならず再切削が困難ですから1発できれいに仕上げます。

(備考:2001年に木工旋盤は他のモデルに買い換えました。)

 

ノミで両脇を落として平たくします。この作業をグラインダーで行う製作家もいます。私はいったん糸のこで切ってから1本づつ平ノミでならしていきます、ちょっと面倒な作業です。でもギターはたかだか6本ですからまだ楽です、リュートは何十本もあるわけですから...。糸のこは取り扱いに注意せねばなりません、ペグ自体が丸いことと保持しにくいので事故防止のために何らかの治具を使うほうがいいでしょう。くれぐれも気をつけてください。

 

ここの写真には写っていませんがペグシェーバで1本づつ削ってテーパをつけて、実際にヘッドに差しながら具合をみます。旋盤加工やカットの作業でついた小傷はサンドペーパでならしておきます。

 

はい、いちおう形はできました。ヘッドの形状は図面を見ながら、あるいは相互のペグを比較しながらサンドペーパなどでていねいに形状を揃えていきます。ペグのグリップ部分の形状はオリジナルラコートであっても様々なものがあるようです。大きすぎず小さすぎず....演奏者の指のサイズや握力の個人差もあるので難しいところです。私は若干大きめにしました。ここで糸巻きの穴を空ける位置を鉛筆などでマークしておきましょう。

 

ペグのストリングポストの部分に弦を結んで保持するための小さな穴を空けます。さきのマーク位置を参考にします。私はルータを使って直径1.4mmの穴を空けました。これぐらいの直径ならこの楽器にはどんな弦でも張れます。ビットの軸が傾かないように垂直にせん孔します。とにかく私はスローハンドでゆっくり作業することにしています。急ぐと私はあっけなく失敗します、ホントはけっこう不器用なのかもしれません。

 

あとは不要な突起となる長さを先端から切り詰めます。手持ちのノコでもかまいませんが、もし電動糸のこ盤を使うなら下の写真のようにペグ先端部に板をテープで固定して切断面を垂直にしたほうがいいでしょう。コント55号の昔のネタみたいに、机が傾いたからノコで切り詰めていくのを繰り返しているうちに極端に短くなっちゃったというのでは困りますからね(古いたとえだなぁ)。

 

さ、さて、黒く着色する作業です。ここでは草木染めの手法のひとつである「三度黒」で染めてみました。墨(墨汁)で染めたり、白髪染めを使ったり、シンナー系塗料を使う製作家もいます。木材を染める方法についてはクラシックギター製作家や国内外の古楽器製作家やリペアマンなどにもあれこれ尋ねたことがありますが、みんな異なる方法で試行錯誤しながらやっているようです。

三度黒は3液の化学反応を使った方法です。草木染めの染料は手芸品店(SEIWAとか)で入手できます。

【参考文献】

 ・基礎技法講座「染物の用具と使い方」 (株)美術出版社  1980年2月24日第1冊  980円

 

 

さて、染め(着色)が終わればヘッドに装着してみます。最終仕上げと調整のときにペグ用のワックス(コンポジット)で回転の摩擦を調整します。

よく「木ペグは使いづらい」という話を耳にしますが、ホントは使いづらいです(笑)。しかし、ちゃんと作られたペグと適切なテーパであればコンポジットをわずかに塗る程度で操作感はまったく改善されます。コンポジットはヴァイオリン専門店で売られています。ピラミッド社などでも扱っています。エンピツや石鹸で代用も可能コダマです。

 

 

なんというか、こうやっていくとオリジナルのラコートより手が込んでたいへんかもしれませんね...。

もし機械式のペグを装着するのであればヘッドの形状や厚さも変えねばなりません。ペグ自体はイギリスのロジャース社で当時のものに近い機械式ペグを入手可能です。機械式のペグを持つラコートの写真は当クレーンホームページの「19世紀ギターの世界」に掲載されていますので、それをもとに図面を描けばいいでしょう。

 

 

 


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