工程説明ページ


 27. フレット    高さ調整は慎重に

 

フレット位置をさきの計算で求めてマークを付けたらいよいよ溝切りです。当クレーンホームページでは製作工具コーナーに専用のフレットソーを紹介していますが、入手困難であるなら市販のノコでも代用することは可能です。今回の楽器では板フレットを使うこともあって幅が広いので楽器用のフレットソーはどっちみち使えませんから市販のノコで溝切りすることにします。

まず準備するものはフレットの埋め込み部分厚さとおおむね同じ幅のノコ、そして真っ直ぐな木片(ここでは黒檀板)、大きなクランプ、あとは両面テープ。しくみはカンタン、両面テープで木片をノコに貼り、クランプをガイドにしてギコギコやるだけです。但し、木片はノコの刃の切り幅が一定になるように貼っておか「ねば」なりません。つまりノコの溝の深さをこの木片で決めているわけです。
名付けて「TSULTRA FRET SAW」.....キマッタぜいっ!

 

ゆっくり、丁寧にノコをひきます。力まかせにやるとガガガッ!と軌道を外れて指板に傷が付き「ひぇ〜〜〜〜っ、やめちくり〜〜〜!」という惨事になりかねません(自分でやってんだけど)。もっと楽に正確にフレットを切りたいのであれば専用台も海外では市販されています。自分で専用台を作ってもいいでしょうね。

しばらく並行に挽いているとノコが軽くなりますのでそこで切るのをやめます。あ、そうだ、クランプにはコルク板のようなものでネックを挟む面を保護しておくことも忘れずに。

 

7フレット付近まで切れたところです。コーラでも飲んで一息........。スティーブ・ジョブズとビル・ゲイツと鶴田誠の共通点はいずれもコーラが大好きだということです。

 

10フレットあたりからクランプは使えなくなります。ここで鶴田は3日ほど考えます.....う〜〜〜ん。そして考えついたのが長い板を指板にクランプする方法。じっくりゆっくりスローハンドで製作しているだけのことはあります、こういう変なことを考案するのは得意です。

高音域フレットを切るときは厚紙などで保護しておくのを忘れずに....。私はネックをボディにジョイントしてからフレット加工の作業を行っているのですが、みなさんは最初にフレットを切ってからネックに接着してもかまいません。

 

 

さて次はフレットを溝に埋めていきます。この接着剤に何を使うかで鶴田は再び3日ほど悩み、考えます。タイトボンドでもかまわないでしょうけど今回はL.M.Iで販売している特殊な接着剤を使うことにしました。

ここでも接着前に予行練習です、あらかじめ溝に挟んでみて、具合が悪ければサンドペーパでフレットの形状を修正します。こんなことやってたらいつ完成するかわからないぐらい時間をかけています、写真をとってメモしては考え.....悩めるちょ〜スローハンドと化しております。

 

次に悩んだのは(またか?)どうやってピッタリ指板にフレットを密着させるかという点です。現代のフレットと比較して19世紀の板フレットのじつに優れた点だと思います。

ちょっと疲れてきたので.....しばらく休憩....。

・・・・・・・・・・・・

はい、復活! さっきうどんを食べてきました(ウマカッタ!)。え〜〜〜〜と、何の話でしたっけ? 
そうそう 宗兄弟、フレット接着時の密着方法でしたね。以下の写真のように大型のクリップを使うことにしました。但しバネの力が強いとフレットを折ってしまいますから注意が必要です。他にもいい方法があるかもしれません。

 

フレットが浮いた状態ではぜ〜〜〜んぜん楽器は鳴りません。試してみればわかりますがこんな小さなことでも音には大きく影響します。現代のフォークギター(とはいわないのかな?)の製作家でG.A.LのG.Majkowski&B.Elkayam両氏は丸棒のフレットで指板に密着させるという方法をとっているぐらいです(下図参照)。え?こりゃ英和っっつうわけでマネする? 特許が出ているかもしれませんので念のため確認したほうがいいかもしれませんよ。

 

さて、フレットをすべて接着したら乾燥させて、あとはフレットの高さを調整します。私はサンディングブロックを使って長尺で反り具合を見ながらならしていきます。ときどき弦を張って確かめます。スチール製の角パイプも市販されています。

 

フレットのエッジを滑らかにするためのサンディングです。こういったこまかい部分を丁寧に処理しておかないと使いづらい楽器になってしまいます。

 

この状態で弦を張ってみましょう。楽器が完成して最後にまた細部を調整します。

 

指板は黒檀を使っていますがフレットを打ったばかりの状態だと汚れていてカッコワルイのでオイル仕上げにしておきます。これは前から決めていたことですが「椿油」を使うことにしました。チマタではオレンジオイルやレモンオイルがよく使われていますね。

 

はい、高音部のフレットまで拭きあげて1日乾かせばおしまいです。

 

ここまでくればほぼ完成といえます。あとはラベリングと細部のファインチューニング、弦の選択などです。ここで喜ぶのはまだ早いのです、弦楽器は弦によってまったく違った楽器になるからです。

 

 


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