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■ 29. 表面板の塗装と仕上げ 塗膜は薄くしたい
さて、仕上げです。リュートのなかには表面板を塗装しない製作家もまれにみられますが、塗装はすべての弦楽器製作者の悩む課題でもあります。特にクラシックギター系の製作家ではあれこれと議論もされているようですが、私は今回の楽器は必要最低限の塗膜にしょうと決めました。リュートの表面板の塗装方法が日晒し亜麻仁油(ひざらしあまにゆ)を使う方法です。テンペラで下地を処理してからこれを塗っていこうと思ったのですが、この楽器に関しては日晒し亜麻仁油のみで仕上げることにしました。
日晒し亜麻仁油はSunthickend Linseed Oil(サンシックンドリンシードオイル)といって油彩の画用液としてホルベインから市販されています。
ともあれ、画材店でそのサンチックドなんとかってヤツを買ってくればいいわけです。今回は表面板の切れ端を使ってそれを使おうとあれこれ試し塗りしてみたのですが、じつは下の写真のTru-Oilを採用することにしました。えっ?さんざん説明したサンチックドなんとかは使わないのかって? じつはそのTru-Oilの中味はサンチックドなんとかってヤツとほぼ同じもののようです。臭いといい乾き具合といい、非常に近い組成のものです。但し、若干光沢などに差が見られます。大差ないとは思うのですが、今回は実験的な意味もあってさんざん迷ったあげくサンチックドなんとかってヤツではなくTru-Oilを使ってみることにしました。
注意:2011年頃からTru-oilの成分が変更されています。今までサンシックンドリンシードオイルと同じ香りがしていたのですが、2012年4月にアメリカから購入した新品は色も薄い赤っぽい色になり、臭いは石油系のヤな臭いになってしまいました。臭い!! 成分が変わったのか、精製法が変わったのか? 参考までに。(2012年6月補足)
Tru-OilはL.M.Iで入手できます。Tru-Oil用のシーラーもありますが、試してみたところこちらは楽器には使えません。キャップが独特で開け閉めしにくいのが難。押しながら回して空けます。
塗り方はそう難しくありません。布に含ませて表面板を拭きあげていきます。独特の臭いがありますが乾くとほとんど無臭です。ベトベトにならないように気をつけます。
鶴オイル、いや、Tru-Oilは乾くのも早いのですが私は塗って1日乾かし、表面にわずかに色がついてカサカサになるのでサンドペーパ(#1000)で表面をならします。そしてもう一回塗り1日乾かし、翌日もう一回塗って終了です。つまり3回塗ったことになります。表面はほとんど木肌そのものといった感じです。とにかく量産のギターにありがちなツヤツヤテカテカの厚塗り表面板だけは避けたい鶴田であります。
Tru-Oilは他の塗料と比較して極端な褐色になったりしません。もっと塗ってもよかったかもしれませんが3回でやめておきました。
これでもかといわんばかりの巨大な写真。
塗装が表面板のパフリングにかかっているのでスクレーパその部分を削除します。とにかくていねいに作業します。
(注:その後、この楽器は表面板をセラック塗装でやりなおしました)
あとはフレットの接着剤のはみ出した部分の処理や塗装での不具合の処理、ペグのゆるみ具合、ナットの溝などを調整します。
さあ、次は塗装の仕上げ、研磨作業です。
注意:2011年頃からTru-oilの成分が変更されています。今までサンシックンドリンシードオイルと同じ香りがしていたのですが、2012年4月にアメリカから購入した新品は色も薄い赤っぽい色になり、臭いは石油系のヤな臭いになってしまいました。臭い!! 成分が変わったのか、精製法が変わったのか? 参考までに。(2012年6月補足)