工程説明ページ


 はじめに

 

じつは今回の「リュート製作ちょ〜入門」は一般的なテナーリュートを作ろうかと当初考えていたのですが、どぉ〜〜〜〜しても変わった楽器を作りたい私としてはリュート族*1 の楽器のなかでも最も小さくてカワイイ「マンドリーノ」を作ることにしちゃったのです。6コースまたは7コースのテナーリュートのほうが入門者の演奏用にもオススメなのですが.......まあ、全般にわたってリュート製作の基本手順はほぼ同じですからおおいに参考になろうかと思います。もちろん製作の途中でタイプの異なるリュートを製作するのに参考となるように可能な限り注釈を入れていくつもりです。本来なら「中世リュート製作ちょ〜入門」とか「ルネサンスリュート製作ちょ〜入門」とか「バロックリュート製作ちょ〜入門」とか、あるいは「マンドリーノ製作ちょ〜入門」などと分けたほうがいいのかもしれません....(じつはそれぞれ細部の作法が異なるのでひとくくりに説明するのは困難)。

さて、さきに述べたように今までギターを弾いていてリュートに興味はあったけど楽器がなかなか入手できなくて......そういう人いませんか? いるでしょ? いるでしょ? また今回も白状しなさい、ゲロゲロっと.....。中古でも入手が容易ではない楽器なので、リュートをやるなら作るのも一つの方法というわけでこのコーナーで説明していくわけです。

さて、まずギター製作と違ってリュート製作の手順を解説した「まとまった文献」はなかなか見あたりません(2000年現在)。研究論文としてはフォムリの論文が知られているほか、G.A.Lのバックナンバーにいくらかの写真と解説(もちエイゴ)がありますが説明途中で楽器が入れ替わっていたりしてちょっと読みづらいです。あとはEMS社のリュートキットも基本的には簡易的な文字だけですから総合的なものとしては頼りがいがありません........。現在ヴァイオリンの製作文献は山ほどあるというのに、かつて楽器の王として君臨したリュートの立場はどうなるのでしょうか?? プロのリュート製作家は世界中に数十人? は存在するはずですが、彼らのなかで製作書を出版している例は無いのでしょうか?(海外をよく探せばあるらしいです、絶版が多いかもしれませんが)。

そう思ってこのコーナーを公開すべく?製作を続け、記録をとり、写真撮影して、また作り......などどやっていると作業はゼンゼンはかどらないのはもちろんのことスタイルや作法を検討していると迷いが出たり不安がよぎったりするわけです。私は考えがまとまらないと作業が手につきません.......(よくわかっていない証拠でもあります)。撮影はデジタルカメラで行うわけですが露光も難しく、撮り直しも数えきれないほどありましたし、製作手順も幾度となく変更を考えました。いまようやくまとまりつつあり、ひとまずホッとしています。

今回は前記のような思いもあってテッテーテキに詳細な製作過程の解説を試みたのですが、気がついてみるとリュートの製作文献がいまだ世界中に少ないのは「撮影・作図や編集の手間」がそれを阻んでいたこともさることながら、リュート自体が信じられないぐらい莫大なデータを持っているということに気付きました。そうです、たんに丸いボウルを作って複弦を張ればいいというわけではなくじっっっっっつに奥深いのであります。ステップごとに解説し、あれこれ工夫をこらし、わかりやすさを最優先に豊富な写真と説明図で構成したつもりですがたぶんこれらは本来なすべき解説のごく一部にすぎないかもしれません。それでもひととおり読んでいただければ製作を考えている方々には必ずや参考になろうかと(なってほしいと)思います。

ここでは写真から図面を描き、材料を手配して切削、組立、塗装、仕上げ、調整までをキットではなくゼロから作ろうというものです、キットでの製作コーナーも当クレーンホームページ上ですでに(かなり昔に書いたアヤシイ記事で現在は削除してあります)紹介していましたがここではゼロから作るリュート製作ということで御理解ください。

なお当クレーンホームページのバックナンバーをはじめとして各コーナーを御覧いただければきっと素晴らしいヒントが得られるでしょう。使用する工具や材料の入手法については工具紹介コーナー個人輸入コーナー、あるいは姉妹編の「ギター製作ちょ〜入門」なども参考にどうぞ。そして鶴田の描いた楽器の図面もフリーウエアとして配布していますので合わせてご利用ください。今回の記事は息も絶え絶え書いていますので?いつものくだらないジョークや小ネタで笑いをとろうというような余裕が見られないかもしれませんが最後まで辛抱強く?御覧いただければ嬉しいです。

例によってギターやリュートの製作に関しては私も目下勉強中ですので不備もあろうかと思います、御覧になってご感想や御意見などありましたらお寄せ下さい。

 

 

製作開始:1999年1月16日(資料収集と検討、材料準備、図面製作....)

製作完了:1999年10月28日(10月29、30、31日に弦楽器フェアに出展)

ホームページ編集:1999年11月15日〜2000年1月15日Ver0.7から公開

補足:記事は基本的に1999年から2000年に書かれたものです。

 


*1 :「リュート」という言葉による意味と定義はいくつかあります。例えばウードを起源としてボウルバックのリブを持つ楽器の総称としてマンドリンやサズやリュートギターなど、構造上の大きなくくりで「リュート」とよぶこともあります。また、一方では調弦規則のいわゆるリュート調弦をする楽器としてマンドリン調弦と区別する意味で「リュート族」と呼んでくくることもあります。ほかにも弦楽器製作家の仕事の範囲として古楽器的ボウルバックという意味でモダンなクラシカルマンドリンと区別して「リュート」とくくる場合もあるようです。このコーナーではボウルバックの構造上の分類とお考え頂いたほうがいいでしょう。 [ 2004.5.16更新 ]

 


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