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 タイプの検討:その1

ひとことにリュートといってもじつに多くの種類・分類やタイプがあり、製作された時代や地域、製作家によっても様々な特徴が見られます。一般的にリュートの分類は時代ごとに「中世リュート」、「ルネサンスリュート」、「バロックリュート」と大別するほか、弦の数や弦長(音域)や国・地域の独自スタイルなどで分類されます。共通する構造としては洋ナシというかラッキョウというかアーモンドのようなものを二つに割ったボディ形状で、製作のポイントのひとつはそのボデイをいかに成形するかという点にあります。

おっと、その前にあらかじめリュートを時代別に分類しておきましょう。

参考:ちなみにくびれたひょうたんのような形状はヨーロッパを象徴するカタチで、らっきょうの形状はイスラムを象徴するカタチといわれています。

 

 

・中世〜ルネサンス初期:         〜1490年

・ルネサンス期:          1490年〜1550年

・ルネサンス後期:         1550年〜1620年

・ルネサンス期〜バロック期過渡期: 1620年〜1660年

・バロック期:           1660年〜1750年   

 

 

時代ごとにリュートがどのように進化(変化というべきか)していったかをたどることは非常に興味をそそる部分です。残された挿絵や文献、写真、既存の図面などといった資料を収集し、製作する楽器を検討していきます。絵画等の見方としては描かれた時代や地域はもちろんのこと、周辺にある静物のサイズや色も、製作や図面を描く際に参考になります。楽器のサイズやペグボックスの形状、ペグのグリップ部分の形状や仕上げの程度、ブリッジの高さ、リブ(裏板)の枚数、ネックの長さやボディとのジョイント位置、ナットの色......とにかく製作を前提に絵画を見るとおもしろいことを発見できることも少なくありません。描かれている楽器自体がすでに修復や改造されていることもあります。挿し絵はデフォルメされていたり、緻密に書かれているようでも楽器をよく知らない画家が間違って描いている部分もあったりしますから注意が必要です。私としても古楽器製作にかかわるようになってからというもの、すっかり「疑いの眼差し」が身についてしまったのではないかと思えるほど現在残されている楽器には改造や修復が多いようです。こういった研究熱心な?習慣がついた人々のことを今日から「古楽な人」と名付けることにします(^_^)。

 


 

さて、さっそく様々な絵画や挿し絵を見ていきましょう。1400年代の古い時代の多くのリュートはボディからネックにかけてタマネギのような形状で、ロゼッタも円盤状のものをはめ込んだ構造が多く見られました。プレクトラム(今でいうピック)で演奏されることもあって表面板にはピックガードが貼られている楽器もあったようです。現代のマンドリンみたいですね。

 

 

 

以下の写真をもとに楽器を製作した例が海外のホームページに写真で掲載されているのを見かけたことがあります。こちらもネックとボディの接続部にタマネギのような反りの形状が見られます。よくみると複弦ではなく単弦に見えますが本来は7本のペグを持つ4コース複弦の楽器なのかもしれません。リュートは基本的に複弦で、単弦は例外的なものとされています。絵画や博物館の楽器には弦の幅 を一様にしてしまっているものも多く見られ、絵に描かれているからといってその形態を鵜呑みにはできません。あ、下の写真の中央の女性はなんだかイヤがってませんか? 気のせい?

 

 

以下の絵画のリュートも単弦の6本で描かれています。この時代のリュートの多くは真円でボディを設計したらしく、ロゼッタ(ギターでいうサウンドホール)の位置や大きさものちのリュートとは異なることに気付くでしょう。G.A.L(No.12/1987)の季刊誌にこの絵画と同時代の楽器に関するファクシミリや記述があります。

 

 

 

初期のリュートは丸っこいボディに4コース(4組の弦)から存在したようです。以下の絵画では5コースに見えますが、ネックも現代のクラシックギターなどに比べると指板の幅は弦の数に対して細く、左手の親指が見えています。ネックの断面形状もおにぎりのような太いものが一般的のようです。指板幅に対してはそのほうが握りやすいのでしょう。ロゼッタ(サウンドホールの彫刻やパーチメントの飾り)の模様はゴシック・パタ ーンで統一されていたようです。

 

 

 


さらに時代に沿って見ていきましょう...。

 


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