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■ ペグボックスの加工 彫刻家をめざすか?
さて、リュート族のペグボックス加工には大別して3つのスタイルがあります。以下の写真のように彫り込んで裏を残す(つまり木彫りの箱船みたいな)もの。そして貫通させて向こうが見えてしまう方法、そして横・裏板を別途パーツとして切っておいたものを組み立てる方法の3つです。
6コース(あるいは7コース)のリュートやアーチリュート、テオルボといったリュートでは彫り込んで裏を残すスタイルが多く見られ、8コース以上のルネサンスリュートや長尺でないバロックリュートの多くは組立式が一般的です。バロック後期にはペグボックスの裏板に彫刻を施したりジグソーで模様を切り抜いたりしたものもあります。
マンドリーノでは古い時代のものは彫り込んで裏を残すのが普通で後のものは貫通させて向こうが見えてしまうもの(あるいはハシゴを入れたものもある)が多く見られます。組み立て式は私はまだ見たことがありません。
エイコラ、エイコラと彫っていけばいいのですが宮大工さんなどがよく使う差入れ用のノミを使うほうがいいでしょう。但しペグボックスの先端部はかなり狭くなっているのでこのような小型の細工ノミも併用したほうがいいかもしれません。彫り込んで裏を残すにはこうやっていけばいいわけです。
で、今度は貫通させる方法を説明します。まず3〜4カ所に穴を空けてそこから糸のこで切り抜いていき、あとでノミを使って仕上げるという手順で行います。
糸のこでの切り抜き作業は作業の安定を考慮して両サイドの加工の前に行います(そうしないと不安定)。切り抜いた木片はハシゴに使うことも可能です。
糸のこの入りにくい箇所、特に先端部は角度もついているのでこのようにハンドビットで切り崩していけば作業はらくです。
あとは両サイドのカットとヘッドのカットです。切れ端はまだ捨てないでください、あとでちょっとした作業時の固定台に使えるのです。
はい、こちらはヘッド先端の湾曲部分。慎重に作業しましょう。
さて、おおむねの糸のこカットの作業はここまでです。
ノミや小刀で根本部分を成形しているところです。
このように湾曲した3次元の立体切削はじつに楽しみ深いものがあります。決して人にやらせてはいけません、ふふふふふ.........。
彫りの作業は平刀と丸ノミだけで私は充分ですが、みなさんは必要に応じていろんな彫刻刀を試してみてもいいでしょう。あ〜〜〜〜〜楽しい。
全体をささっと仕上げたところです。あとは軽くサンディングしますが、最終仕上げではないのでここで滑らかにする必要はありません。
あ、先端部の湾曲部でぐるりっと巻の入っている部分はこのように紙ヤスリを丸めてクルクルやればいいでしょう。「長いものには巻きつけ」と昔からいうように.....。
はい、ひとまずこの段階ではこんなもんでいいでしょう。
特に「長いものに巻きつく」部分はゆがみや対称の具合をみておかねばなりません。
それから、今のうちに高音側と低音側の弦が巻取りやすいように以下の写真のような加工を行います。
細部はデザインナイフを使ってもいいでしょう。おおむねのペグ径にしておくためにここまできたらペグリーマを使ってテーパをつけて削ります。
次はこのペグボックス(というより貫通しているのでたんにヘッドといったほうがいいかな?)をネックと接続する準備にはいります。