工程説明ページ


 塗装準備  テンペラメディウムづくり

 

いよいよ最後の難関、塗装であります。

 

【塗装の手順】

1. 塗装面のサンディング

2. 下地作り(目止め)、下塗り

3. 本塗装

4. 研磨

 

 

ここでは 1. はすでにスクレーパでならしているので良しとして、 2. ではテンペラ塗装の技法を採用します。タマゴによるテンペラメディウムを使って下地処理を施します。 そして 3. にはニスは使わず「日ざらし亜麻煮油(サンシックンドリンシードオイル)」にて仕上げ塗装という手順でまいります。

リュートではこういった塗装方法のほかストラディバリのマンドリーノのようにヴァイオリン系のニスを使うこともあります。すべてのリュート製作家がテンペラメディウムの手法を使っているわけではありませんがいくつかの製作家が採用している塗装法です。まずは下地となるテンペラメディウムを作らねばなりません、さて........。


【テンペラとは】

色彩の表現は古来から洞窟の壁画にみられるように様々な方法があります。色のついた岩石や土を粉にしてそれを水や樹脂やニカワ液とまぜて練り、絵の具としてきたわけです。岩壁だけでなく、のちにはしっくいの壁画、あるいは布(キャンバス)あるいは羊皮紙や木製の板、レンガなどにも描かれるようになります。このへんは絵画の歴史を調べれば興味深い記述が多く見られます。現在でも日本画では岩絵具をニカワ水で溶いたものが使われていますね。つまりなんらかの線や色を表現するときに色のついた粉とそれをへばりつかせるためのねっとりとしたものが必要なのです。この色のついた粉のことを一般には顔料といい、ねっとりとした粘着物を糊剤といいます。

この2つを練り合わせてチューブに入れたのがみなさん小学校からなじみの深い「チューブ絵の具」です。水彩絵具とは顔料をアカシア科木の樹脂(樹脂アラビアゴムといふ)の糊剤で練ったもので、油彩絵具とは顔料を油の糊剤で練ったものです。また、一方では固めて棒状にして使うのがクレヨン(油性糊剤)やパステル(水性糊剤)であるわけです。

糊剤は布や壁に顔料を塗りつけ、固定するのに必要なわけですが、顔料との混合比を調整すれば薄く塗り広げて展開しやすく、また逆に濃くしてデコボコの表現を与えることもできるわけです。そうです、糊剤は顔料を付着させるための媒介物(メディウム)としての役目を果たすのです。

糊剤のひとつにタマゴがあります。タマゴを使って顔料を練り、描いていく画法をテンペラ画といいます。テンペラとは本来複数の原料を計量するという意味ですが絵画の世界ではテンペラといえばタマゴを糊剤として使った絵の具を指します。ここのリュート製作における塗装では顔料を混ぜないで下地としてこれを使うことにします。

タマゴは動物性蛋白質からなり、速乾性で硬化後は強力な皮膜となります。タマゴの君、いや、黄身だけを使うこともあれば、白身のみを使う場合、あるいは両方を混ぜる場合、他の混ぜ物を一緒に使う場合などがあります。これらをテンペラメディウムと呼びます。今回はタマゴの黄身とサンシックンドリンシードオイルを先に混ぜ、これに白身をさらに混ぜて水で薄めたものを作り、これをテンペラメディウムとします。

(参考:ホルベイン社ガイドブック)


さあ、はじまりはじまり! お立ち会い! まずはタマゴ1個とジャムの空き瓶2個、そしてつまようじと容器などを準備します。布巾があればこすときに便利です。

 

タマゴを割って白身だけをジャム瓶に移します。みなさんは片手でタマゴが割れます? ここでは左手にデジカメ、右手にタマゴというハイパーメディウム作り! (謎)

 

黄身はカラザを除去し、手のひらでころがして表面の白身をはがして瓶に入れます。右手と左手を交互にころがすのがコツです。家の人に見つかるとそのまま晩御飯のオムレツづくりを手伝うことになりますので作業の時間帯には注意が必要です。

 

ほとんど白身をはがしたら、つまようじで卵黄を開いて中味だけを取り出し、小皿に入れます。今度は右手でデジタルカメラを持って撮影しながらの作業なのでちょ〜難しい.....。

 

おっと、手にかかってしまった。こうやって卵黄膜は取り除いておきます。

 

 

さあ、さきほどの白身のほうは瓶にフタをしてカクテルのごとく振ります。

 

卵黄1に対してサンシックンドリンシードオイルを0.5の割合で別の瓶にて混ぜます。サンシックンドリンシードオイルは国内ではホルベインのほか(株)クサカベなどが画材店にて市販されています(粘度がやや異なる)。もちろんこのかわりにTru-Oilでもかまいません。はい、フタをしてよく振ってください。

注意:2011年頃からTru-oilの成分が変更されています。今までサンシックンドリンシードオイルと同じ香りがしていたのですが、2012年4月にアメリカから購入した新品は色も薄い赤っぽい色になり、臭いは石油系のヤな臭いになってしまいました。臭い!! 成分が変わったのか、精製法が変わったのか? 参考までに。(2012年6月補足)

 

白身は布巾でこして別の器に移します。おっと、こしている写真を撮りませんでしたが、まあいいでしょうね。べつに布巾がなければこさなくてもかまいません....。

 

こした白身とさきの「黄身 + サンシックンドリンシードオイル」を混ぜます。

 

これらをよく振って混ぜます。水を少し加えてさらに振って混ぜれば卵黄メディウムのできあがりです。保存は冷蔵庫でしばらくOKですが早めに使いきったほうがいいでしょう。冷蔵庫に置いておく場合は食用でないことを明記したラベルを貼っておきましょう。

 

さあ、これを使って下地塗装にとりかかります。

 

 


 リュート製作ちょ〜入門の目次に戻る



 (C) 1999 CRANE / TSULTRA info@crane.gr.jp 


 Back To CRANE Index Page