Copyright (C)2003 Makoto Tsuruta / CRANE Home Page / AllRights Reserved
http://www.crane.gr.jp
TOKYO / JAPAN


(1) ファブリカトーレ一族の家系略図

ジョバンニ系、ジェンナロ系、ビンチェンツオ系

 


 

ジョバンニ系

 

ジョバンニ・バッテイスタ・ファブリカトーレ(Giovanni Battista Fabricatore)

5コースギター、6単弦ギター、リラギター、マンドリン、マンドリーノ系の複弦楽器からヴァイオリンに至るまで様々な弦楽器を製作しており、当時ナポリはもとより世界に知られた重要な製作家でした。多才なことでも知られ、例えばたんにマンドリンといってもジェノバ型マンドリンやマンドリーノなどの様々なスタイルの楽器を幅広く製作していたのです。1750年頃に生まれ(1745年に生まれたともいわれる)、1824年以降に没したとされています。当初の工房とみられるAjuto91番(Aiuto 91)のラベルを持つ楽器が現存します。のちにAjuto32番(Aiuto32)で息子と同じ工房にて製作していました。

ラファエロという名の息子がおり文献によると1824 年のギターが親子の共作とされてきましたが当時の年齢的にみておそらくラベルは共作であっても実質は息子ラファエロの作と思われます。ジョバンニ・バッティスタの楽器は世界中の博物館などが数多く保管・展示しており、同年代の他の製作家と比較して現存する数は多いといえます。今回は約28挺を確認しました。

 

 

ラファエロ・ファブリカトーレ(Raffaele Fabricatore)

ナポリの製作家。ジョバンニ・バッティスタの息子であることが今回の調査で明確になりました。同時にジェンナロ1世は Giovanni Battista Fabricatore の息子ではなく弟子であることが明らかになりました。

「S.M. dell' Ajuto32番」に工房を確認。今まで1821年が現存する最も古い楽器とされていましたが今回1813年のラベルの付いたギターが現存することが確認できました(現物調査)。そしてその楽器の状態からみて1800年代初期の時点ですでに製作技術は熟練されて高度な域に達していたことがうかがい知れます。現存する楽器のうちラベルの解読に至らず父の作とされているものもいくつか見受けられるようです。生没年は明確な記録がありませんが父との関係からCa.1770年〜? であろうと推測しました。ラファエロ以降の子孫に関しては記録が残っていません。

 

 

 

【2004年11月追記】 ジョバンニ・バッテイスタ・ファブリカトーレはいつ死去したのか?

Giovanni親子が1783年〜1814年にかけて製作した楽器のラベルデザインの変遷について考察してみました。父Giovanniは製作家の生涯において少なくとも6種類以上のラベルのデザインを持っていましたが、それらはラベル周囲を取り囲む模様で区別することができます。このうち最晩年と思われるラベルの模様は1811年頃から徐々に息子ラファエロのラベルの模様に似通ってきています(写真資料を御覧ください)。

ラベル資料

そしてまた現時点では息子との共作ラベルでない、つまりGiovanniの名前のみ記載されたラベルの最も最後の楽器は1811年です。これらのことから私はここにGiovanni Battista Fabricatore の死去した年が1812年頃と推測します。一説では1815年頃ともいわれていますが、ナポリの役所で根気強く戸籍を調査すれば具体的な死亡年月日が判明するかもしれません。

 

 

 

 


 

ジェンナロ系

 

ジェンナロ・ファブリカトーレ(1世と2世)(Gennaro Fabricatore (I and II) )

 

Gennaro 一族に関しては約40本の楽器を調査しました。親子であるGennaro I と Gennaro II は明確な区別が困難です。基本的にGennaro I と Gennaro II は1つのラベルを共有していたのです。 ジェンナロ系は少なくとも4つの工場を持っていました。これらは従来の説によれば移転を繰り返したとされてきましたが、今回の調査でいくつかの工場が同時に稼働していた可能性が得られました。 別図「ファブリカトーレ一工房の概歴と所在地」を御覧ください。

ジェンナロ・ファブリカトーレの1世と2世は大小2種類のラベルを使い分けていました。ギターを弾く女性像が描かれた大きなラベルと、ヴァイオリンによく見られるような小さなラベルです。

・大きいラベル:工場の大量生産品
・小さいラベル:個人製作家の立場で本人が製作

 

 

【2004年11月追記】 20世紀まで続いた「ファブリカトーレ」ブランド

1890年代に製作されたGennaro Fabricatoreのラベルを持つ楽器を1890年代にいくつか確認しました。とくに1899年製のヴァイオリンに注目すると、小さなサイズの個人ラベルが貼られていました。つまりGennaroの楽器でよく見かける大きなサイズの量産ラベルではありません。このことは工場生産はともかく、少なくとも個人ブランドで19世紀末期まで「Fabricatore」の楽器が存続した証であるのです。家系図から想像すると、Gennaro本人は死去してその子孫によって弦楽器が製作され続けた可能性もありますが、1899年製のヴァイオリンが最後の1挺でなければ「Fabricatore」ブランドが20世紀まで存続していた可能性は高いといえます。

 

 

 


 

ビンチェンツオ系

 

ビンチェンツオ・ファブリカトーレ(Vincenzo Fabricatore)

ビンチェンツオに関してははほとんど記録が残っていませんが18世紀後期にナポリでリュートとギターを製作していたとされます。生年はおそらく1750年頃と考えられますが没年は不明。現存する楽器も私は今回確認できませんでした。

 

 

ピエトロ・ファブリカトーレ(Pietro Fabricatore)

ビンチェンツオの息子とされています。18世紀にマンドリンとギターの製作家として知られていたようです。工房はナポリのオルソラ教会166番に位置し、1799年の楽器とラベルが確認されています。ほかに1790年と記されたMandole(おそらくマンドリーノ)も現存します。

 

 


Back


 

 (C) 2003 Makoto Tsuruta / CRANE Home Page / Since 1995  


Back to CRANE INDEX PAGE