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■ Title : 不明 作者:Marcel Julien Baron (1872 - ?) 銅版画 1900年代初頭?
Artist: Marcel Julien Baron/ Engrave(Etching) / Ca.1920?

● サン・リュスティック通り
さて、今回は珍しくモダンな銅版画であります。今までは18世紀の作品を多くとりあげてきましたが、たまには雰囲気の変わったものも面白いでしょう。
この作品は2012年5月にカリフォルニアの個人から購入した銅版画(エッチング)です。その売り主によると、100歳間近の御婦人がカリフォルニア州北部に住んでいた頃に購入したものとのこと。ただ、何歳の当時に入手したのかは不明です。木製の額は茶色に焼けた裏紙で額は裏打ちされており、束ねたスチールワイヤーが両サイドに渡してありました。開いてみると貼り替えた痕跡は無く、おそらく入手当時の状態でしょう。
じつはこの御婦人、バロンの版画3作品(すべてBaronのサイン入り)を所有しており、3作品がまとめて売りに出ていました。そのうちの2作品を私が入手したのです。ヨタヨタとした線と独特の陰影感は私の好みで、淡い色調は手彩色によるものです。ギターが描かれていなければ購入しなかったかもしれませんが、手元に作品が届いて現物を見ると、なかなか味があってヨロシイ。
でもコレ、場所はどこ? ...... そう思って調べてみたところ、フランスのモンマルトルにあるサン・リュスティック通り/Rue St-Rustiqueです。中央に見えるのはサクレ・クール寺院。画題としては頻繁に取り上げられる名所のようで、例えばモーリス・ユトリロ(1883 - 1955)が「雪のサクレ・クールとサン・リュスティック通り」と出して油絵を残しています。版画では路面をよく見ると歩道の縁石脇に雨水が流れるように作られています。路面が弧をなしているのでしょうか。同じ地点における2010年の現地の写真がRachel の散歩道(個人ブログ)にありました! 写真からみると石畳の路面は現在では改装されているのがわかります。
● 楽器
なにしろ主題はサクレ・クール寺院とリュスティック通りですから、ギターを弾く男性は脇役でしょう。かろうじて「ギター」らしきものが見えますが、この作品の場合はこれでいいのです。ギターだけ緻密に描いたのではアンバランスで奇妙ですからね。ギター製作や修復をやっている人から見ると、ブリッジや弦を描いて欲しい気もしますが、この作品ではあくまで、「作品のなかの一部分」ということで.....。リュスティック通りは様々な画家がテーマとしてとりあげていますが、ギターが登場するものは珍しいでしょう。個人的にとても気に入ってます。

● 19世紀後期の版画家 Marcel Julien Baron らしいが....
さて、作者を Marcel Julien Baron (1872 - ?) と記しましたが、詳しい情報がみあたりません。もっとよく調べてみるべきだと思っています(御存知の方は情報モトム)。なにしろフランスでバロンと名乗る画家はほかにも存在したようなのです。ちなみに、私が入手したもうひとつのバロン版画はコレです。これも題名は無く、エディション(限定数)も記されていません。ギター弾きの作品よりも線が真っ直ぐでより緻密に描かれています。どちらの作品もたんに路地を描いたのではなく、人物を登場させ、建物の影が意識的に描かれています。
どちらも手彩色で路地のムードがヨロシク、お気に入りなのです..... 。

紙のサイズ:270mm x 215mm
印刷面サイズ:210mm x 158mm
裏面:ブランク
備考:鉛筆でBaronのサインのみ