弦楽器系歴史的版画の世界

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Title: LA CIGALE. (セミ)/ Gaetano de Martini (1840-1917)/ GEBBIE & Co. /1882年 / PHOTOGRAVURE

 

使い込まれたギター、どこか奔放な表情で歌うジプシー風の女性。後ろには皿とコインが見えます。
19世紀にはよく見られた版画技法で、油絵を撮影した写真を元に銅版画(エッチング)を作成したフォトグラビュールです。

作品の細部をよく見るとこの技法ならではの階調表現が素晴らしい! 腕の皮膚や衣装の立体感 / 明暗と質感が良く出ています。
19世紀当時は著名な油絵作品を写真から銅版画へコンバートする専門的な出版社がいくつもありましたが、細かい作業手順やノウハウが工房ごとにあったのでしょう。私も写真を撮ってその画像からフォトグラビュールの銅版画をいくつか作りましたが、銅の腐蝕は白黒二階調になりがちで非常に難しいのです。
現代のフォトグラビュールと比べると、この時代は階調の広さとトーンの深さが圧倒的です。いったいどうやって製版したのか、当時の版画工房のレベルの高さを思い知らされます。
 

原画は1882年に Getano De Martini によって描かれました(1840年5月28日 イタリア・ベネヴェント生まれ、1917年ナポリにて没)。それを元に1887年、アメリカ東部フィラデルフィアの Gebbie & Co 社 によって銅版画が製作されました。
この画家は実態を捉えて写し取る能力に優れており、弦の配置、サウンドホール内部の描写、エクステンションフレット、表面板の摩耗度合い、装飾の劣化、ニスの剥がれ、袖のフリル、右手の複雑な構え方などがとても良く描かれています。筆の運びの速さも見て取れますな。
逆に言えば、この版画を出版した工房は元の油絵を忠実に再現(撮影・製版・エッチング・刷り)できていることになります。 非常に高い水準にあることがわかります。

ギターは18世紀末頃のイタリアン。10フレットジョイント、フラッシュフィンガーボード、装飾様式などから18世紀以前に製作された楽器でしょう。
印刷面サイズが約29.5cm x 19.5cmと、このテのモノトーンの版画にしては比較的大きな作品です。歌声が聞こえてきそうな迫力と確かな存在感がありますな。タイトルは「セミ」となっており、限られた短い人生において、歌い踊るにぎやかな短い夏が夢現のごとく描かれています。

この作品、絵画の世界では珍しいことにギターが非常にリアルに描かれており、たいへん気に入って同じモノをもうひとつ入手したほどです。
現在でもたまに海外のサイトで売りに出ていることがあります。当時も人気のあった作品で、比較的たくさん刷られています。根気よく探すべし。

 

 

 

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