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■ Title: THE PRELUDE / Charles S. Pearce / S. A. Schoff / Magazine of Art / 1888 / ENGRAVING
うって変わってしっとりと落ち着いた深みのある作品。印刷面サイズは約 19cm x 25cm。実物は典型的なエングレイビングで比較的荒削りな彫りに見えるのですが、むしろそのおかげで実物以上に臨場感と表現力の高さを感じさせられます。ここでは19世紀ギターも各部の特徴をうまくとらえて描かれており当時の楽器や演奏スタイルの一例としても貴重で価値の高い作品といえるでしょう。とくに右足を左足の上に組み、右手の小指が表面板に支持され親指と人差し指で低音弦をつまんで発音している様子がつぶさに確認できて興味深いです。また、ヘッドに目をやると3弦(または4弦)のペグにシルクか木綿製と思われる帯のストラップを結わえてあることから立奏にも使われたことが想像できます。
楽器の構え方からしてこの女性、おそらく相当ウデのたつ奏者やもしれませんぞ。右手に注目.... ムムッ! できるな! おぬしっ! ロケーションはタブラオ風ですが背景がうまく処理されて主題が明確に表現されています。ちなみに原画の油絵もよく世間では知られています(たしかギター店の月光堂さんでも見かけました、CDのジャケットにもありましたね)。背景の陰影と女性像の見事なバランス。これは私の大好きな作品のひとつです。
画家Charles Sprague Pearce (1818-1904)は1883年にパリサロンで入賞しており、この原画の油絵は現在は個人所有。ムンソンウィリアムズ プロクター芸術学会美術館 にはPearceの習作がいくつか所蔵されているようです。彫り師のAlthough Schoff は紙幣彫刻の技術を持つ職人でした。画家Pearceの監修の元、Schoff が忠実に彫り、1886年に完成されました。その後出版社のマガジンアート社によって復刻されたのがこの現物です。