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■ Title: L 'Inamorata / H.O'Neil
/ H.Bourne / VIRTUR & Co., London c.1860 / Steel Engraving
(67/266)
ワタクシ思いまするに美しい女性と楽器というのは絵画としては無敵のテーマではないかと思います。バルコニーから物憂げな表情で遠くを見ている御婦人の版画であります。
さて、イタリアのヴェニスといえば水の都として知られますが、背景のゴンドラにその雰囲気があらわされています。やや霧のたちこめた空間表現とみえて空のトーンが微妙に再現されています。 ん? たしかナポリも地理的には海が間近なんですよね。ひょっとしてここはナポリでしょうか。
マンドリンのデッサンはブリッジ位置がやや下寄りでヘッドの形状がちょっと不可解です.....(しかしまぁ、こういったテーマにしては脇役である楽器の特徴を良くとらえてある部類でしょう)。サウンドホールにはヴェラム/パーチメントのロゼッタらしき構造が確認できます。装飾を控えた比較的シンプルな仕様の18世紀のマンドリン。指板がフラッシュ(表面板と同一平面)である点も見逃せません。シルク風のストラップがお洒落。左手でそっと支えた楽器が油断して海にポチャンと落ちやしないかと心配するのは私だけでしょうか(笑)。
彼女の額の上のベールから察しますと喪に伏していると思われます。バルコニーで奏でるのはセレナーデか? 悲しみとチャーミングな愛らしさを兼ね備えた複雑な表情。女性のため息が感じられるような作品です。
印刷面サイズは約 18.5cm x 23.1cm。裏面に67/266のエンピツのサインがあります。