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■ Title: LA
SARABANDE(サラバンド)/ F. ROYBET /March 14,1896 Print from "THE
GRAPHIC" / Antique art print (ENGRAVING)
たとえば旅行先で家族揃って写真を撮る、なんてのは現代においてどこにでも見られる光景ですが、その昔は家族の肖像を残すというのは決して気楽なものではなかったわけです。王族や貴族、あるいは裕福な商人や司祭は肖像画という形で多額の費用をもって画家を雇い、その勇姿をのちの人々にしらしめたわけです。ネーデルラント地方では人物の背景処理や対面角度、油絵の具の使い方などで飛躍的に肖像画が進歩・普及していったといわれています。肖像画のスタイルも長い歴史のなかで様々なものが登場するわけですが、レンブラントなどは仮装した人物を演出して集団肖像画を描いたことで知られていますね。今回は「家族の版画」、いわば記念写真的な作品の御紹介です。
まずは作品を御覧ください。とある家族が描かれています。集団肖像画としては楽器が主人公ともいうべき構成で、ユニークな作品です。中央のお父さん?
はよっぽどリュートがお好きと見えてサラバンドを熱心に弾きつつ自己陶酔状態にあります。おそらく、ただ呆然と立ったままの肖像画に飽き足りず、演出を試みたのかもしれません。対照的に左のお母さん?は少々お疲れの御様子。肖像画のためにじっとしているのも楽ではないのでしょう。また、見方によっては教育ママが子供達に対して音楽教育をほどこしてしている現場にも見えます。子供達は演奏には関心がないのかよそ見をしたりおしゃべりしたり.........。
みなさん豪華な衣装で着飾って、おそらくは裕福で名のある家系と思われます。このポーズでずっと立ち続けて絵のモデルとなるのは子供にとっては苦痛かもしれませんね。坊やはすでに集中力を欠き、お嬢ちゃんはモデルに疲れたのか飽きたのか、御機嫌を損ねていらっしゃるように見えます(笑)。後世に残るとはいえ、肖像画のモデルも楽じゃないんですねぇ....... お父さんはあいかわらず弾きまくって自分の世界に浸ってますが........。
そんな家族をうしろでヤサシク(あきれて?)見守るばあや.......。
原画はF. ROYBETによる油絵で、衣装や楽器のスタイルからみておそらく17世紀に描かれたのが最初でしょう。その油絵を模写した銅版画(もしくはスチール版画)が制作され、さらにそれを1896年に「THE GRAPHIC」誌に印刷されたもの(アンティーク・アートプリント)。印刷面サイズは約 21.8cm x 30cm
・これはオマケ画像。