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■ タイトル:Mandolinata(マンドリン奏者) / PHOTOGRAVURE
この作品の原画(油絵)の作者はハーバート・ダンマンという19世紀後期のニューヨーク(ブルックリン:1855年生まれ-1903年没)の画家。パリで絵を学びアメリカに帰ったのちに幅広く活躍しました。原画をもとに模写して版画が彫られ、ニューヨークのフォトグレーバー社によって製版され、1890年頃に印刷されたもの。およそ100年前の版画です。
ここではソファに腰掛けてマンドリンを奏でる女性が描かれていますが、白く美しいドレスやお揃いの白靴といった装い、束ねて置かれた楽譜などからみてコンサートの指ならしの練習風景と思われます。敷物や家具の特徴から見るとサロンでの1シーンとも考えられますが詳細は不明です。ソファの脇にはリボンのついた花束が置かれ、テーブルの花瓶と花は主人公を引き立てるかのごとくひっそりと地味に描かれています。おそらくオリジナルは1890年前後にダンマン氏による油彩画であったと思われますが女性の持つマンドリン自体はもっと古い時代の1700年代後期〜1800年のスタイルです。女性の豊かなプロポーションについ目が行ってしまう(^_^)かもしれませんが楽器についてもう少し注目してみましょう。こういった作品(楽器と共に描かれる人物)では主人公と比較して楽器のデッサンの崩れたものが多いのですが、これは比較的忠実に描かれています。上部ブロック側がやや深いボディ、木ペグ仕様、ボディジョイント部分までの指板、M.O.Pによる幅広ロゼッタと高域の装飾、サウンドホールはちょっと大きすぎるかな? 女性も左右の指や肩のフォーム、楽譜を追う視線などからみてアート専門モデルさんではなくちゃんと楽器の弾ける女性でしょう。100年を経ても今なお目の前から鮮やかに旋律が聴こえてくるような作品です。こうやってあれこれ想いにふけるのも絵の楽しみのひとつです。絵の鑑賞というのは自分の目で見てそのまま感じればいいのだと基本的に私はそう思って楽しんでいます。
用紙サイズ:約24cm x 31cm 印刷面サイズ:約16.5cm x 22.3cm(タイトル含む高さ:24cm) ちなみに版の押型の痕跡サイズは約18cm x 24.5cm