|
■ Title: Castile(城) / From
Paintings, by Various Artists, After Sketches by W. PERRING. /
Engraver: E.Finden / Print:1843年 / Publisher(Proprietors):Finden -
T.G. March, 4 Hanover Street, London / Steel Engraving
● 弦楽器系版画シリーズ 今回は「城」です。
しばらく忙殺されていたおかげで版画コーナーの更新がおろそかになってしまいました。気がつけば梅雨もたけなわ、寒暖の激しい今日このごろ......じきに7月になろうとしています。
今回の版画作品はお城のバルコニーから遠くを眺める姫君とその仲間達。満月の夜にいったい何を想うのか? よく見ると遠くに小舟が見えます。小舟の上では男女が乗っており、男性は松明(たいまつ)を焚いて城の姫君に合図を送っているようです。ベランダの姫君は豪華な装いで容姿も美しく、しかもグラマー!?(当時はたいていの女性をグラマラスに描いたのですが) 傍らにはギターが置かれており、さらによく観察すると姫君の脇には手紙が見えます。かの舟上の紳士からのものでしょうか?
果たしてこの姫君とボートの紳士とはいかなる関係が?
【謎の7弦ギター】
今回描かれている楽器はギターです。ライオンさんに隠れて全体は見えませんが楽器の構造にいくつかスペインの特徴が見られます。ギターのヘッド特大写真をよく御覧ください。7弦にも見えます。CRANEのフレンチConcept-5とは全然スタイルが違いますが面白い楽器です。1,2,3弦のペグは一般的なギターと同様ですが4,5,6弦のすぐ隣に7弦のペグが付いてます。しかもその7弦のペグのグリップ部分は他よりも小さい。謎です。よくわかりません。画家のたんなる描き損ねにも思えます。考えすぎでしょうか。ギター製作や修復をやっていると、ついつい気になってしまいます。真剣に観察すると他にも謎が噴出します、例えばスペインの楽器ではヘッドにあるべきストラップ用の穴が描かれておらず、ヒールのジョイントはフランス式、ネックが黒檀巻き?、ブックマッチされていない1枚の裏板、その他モロモロ....
。ライオン君もさぞ不思議に思っていることでしょう。
この版画のロンドンのファインデン社は19世紀当時はよく知られた出版社。いろんな画家の絵画をペリング氏がスケッチして、それを版画化して出版・販売していたようです。ちなみにファインデン社の出版物のなかの書籍の1ページに含まれるFlorenceという作品にもギターが登場します。同社の多くの原画はおそらく18世紀以前に描かれた油絵がもとになっていると思われます。今回の「Castile」の印刷面サイズは18.6cm
X 24.6cm
姫君の背後ではギャラリー・モードのお友達が約二名。他人の崩壊する恋路を傍観することほど面白いものはありません(笑)。二人の女性は何か言いたげな表情。
■
弦楽器系歴史的版画の世界に戻る