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■ Title : EXLIBRIS / Gennady Aleksandrov / 2005? / Copper Etching / Czech Republic
● 蔵書票:嵐に立ち向かうギタリスト / Gennady Aleksandrov
さて、鶴田の版画コレクションのなかから弦楽器に関する作品を紹介するこのコーナー。今回はさらに時代を下って現代の作家です。鉛筆サインで 05 とあるので 2005年の作と思われます。
この版画の作家はGennady Aleksandrovさん。JiAi KLAPKA さんのために制作された蔵書票スタイルの銅版画(エッチング)です。表題は私が勝手に付けたものですが、他に適切なタイトルがおもいあたりません。嵐のなか髪を振り乱しギターを弾きながら果敢に立ち向かう男性が生き生きと描かれています。見方によっては舞っているようにも見えますね。つま先で立って片足をピョコンと跳ねて、なんとも愉快なポーズ。ふんばっていないところが良いのです。完全に脱力して立ち向かってますな。力強いタッチでリズム感のある構成。塔は大きく傾き、いまにも吹き飛んでしまいそうです!
ギターは簡略化されていますが、よく見るとスロテッドヘッドです。なんとなく弦らしきものもちゃんと描いてあるのです。左右の腕や手の構えも不自然ではないことに気づくでしょう。版面に故意に傷をつけたような痕跡もあり、乱暴に描いたように見えてじつは案外細部までよく描いてあるんです。器用な濃淡や効果的なベタの技法も興味深いです。ラフなタッチですが迫力があります。モノクロ作品ですがトーンも豊かで色彩を感じます。
この作家はギターやリュートなど弦楽器の登場する蔵書票がいくつか見られますので、御本人も演奏されるのではないかと勝手に推察しまする。精力的に制作されていたとみえてじつに数多くの蔵書票作品が現存します。
しかし、わたしが唯一気に入ったのがこの蔵書票のみ。ほかの作品は趣味が合わないといいますか、好みの違いでしょうか、購入に至ったのは唯一コレのみ。でも、アートというのはそれでいいのです。むしろ、気に入った1品がみつかった喜びのほうが大きいです。
著名な作家の作品でもつまんないものはありますからねぇ ... 偉大な製作家や有名な演奏家が弾いてもダメな音楽もありますなぁ。逆に、無名無冠の「ただの人」が残した作品でも胸を打つものはありますね。版画や絵画も音楽も同じですな。写真や文学もそうかもしれません。
じつは、Gennady Aleksandrovさん。チェコの版画家としかわかっていません。
名前で検索すれば数多くの蔵書票(EXLIBRIS)を見つけることができるので、おおむねの作風やテクニックやクセや傾向はわかるのですが、出生年や没年(健在?)や活動履歴など、いまのところ見あたりません。もっと時間をかけてじっくり探す必要がありそうです。どなたか情報モトム。
紙のサイズ:200mm x 120mm
版サイズ:133mm x 68mm
裏面:ブランク N8
記事:2015年2月3日