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■ Title : EXLIBRIS for JINDRICH BENDA/ STANISLAUS KULHANEK (1885-1970) / CopperEtching / CZECH 1949
● 蔵書票:ハープと角笛で歌う天使 / スタニスラウス・クルハネク
STANISLAUS (Stanislav) KULHANEK (1885-1970)
スタニスラウス・クルハネク (チェコ共和国)1921年:教育者/グラフィックデザイナー
クレーンホームページ名物、弦楽器の登場する版画作品のコーナーです。
はい! 珍しく前回と同じ作家の作品を紹介します。テーマもよく似てますね。天使が楽器を奏でながら歌うというスタイル。
しかしこの銅版画が制作されたのは1949年。和暦でいえば昭和24年ですから敗戦で連合国軍の占領下にありましたな。湯川秀樹が日本人として初めてノーベル賞を受賞し、穴の開いた五円硬貨が生まれた年でもあります。ヨーロッパでは東西のドイツ分裂が決定した年だそうです。この作家スタニスラウスは1885年5月28日生まれですから64歳のときに制作したことになります。すごいなぁ。分厚いメガネをかけて頑張って描いたに違いありません。私も老眼が進んで他人事ではありません。すでに楽器もカポも老眼鏡無しではまったく話になりません(笑)。去年買った iPhone 5s は かろうじて裸眼で使えていますが、それもいつまで続くやら ... 。
この銅版画も前回紹介したように「蔵書票」の様式で作られていますが、用紙はハガキより少し横幅が広いぐらいのサイズなので、本に実際に貼るためのものではなさそうです。印刷面/版のサイズは10cm X 7cm 程度。前作に負けないぐらい緻密に彫られた作品です。ちゃんとトリさんも登場してます。
今回の弦楽器はハープ。ほんとにポロロンと音が聴こえてきそうな構え方ですね。アイリッシュでしょうか。19本の弦が張ってあり、フレームには鷹?と思われる強そうなトリの彫刻があります。ハープについては詳しくないので馬脚を現さぬよう、楽器の説明はここまで!
じつはもうひとつ弦楽器が描かれているんです。版の中央下部をよく見ると ... マンドリンです!
以下の超拡大した画像をとくと御覧あれ。スロテッドのヘッドに機械式糸巻きを備え、リブの組み方は奇妙ですが、ボウルは中世のリュート風でしょうかね。フレットレス指板、バロック式のブリッジに4単弦というマニアックな仕様です。テールにはピンはありません。ロゼッタは版画技法でいえばハッチングに近いものですが、実際にあり得るマンドリンからすると、かなりブリッジ寄りに配置されています。約1cm幅のなかに描かれているので、かなり省略してありますがムード溢れる良い絵ですな。
むしろ気になるのがこれを弾いている3人のみなさん。こどもなのになんとなく大人びた顔だち。体型がちょっとメタボな感じもしますが(笑)、これも他人事ではなく。まぁ、3人とも元気そうなのでヨシとしましょう。
印刷面サイズ:69mm x 98mm
用紙サイズ:116mm x 150mm
裏面:ブランク
記事:2014年10月1日