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はじめに神は天と地とを創造された。
地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。神は「光あれ」と言われた。 すると光があった。
神はまた言われた、「カメラあれ」。 神はそのカメラを見て、良しとされた。第一日である。
神はまた言われた、「電池の要らないちっちゃい露出計あれ」....... 第二日である。
私的素敵頁 / Shiteki Suteki Pay のコーナー。
地味に好評なのが、めんどくさくて楽しい鉄カメラシリーズです。
今回はフィルムカメラでは有ると便利な露出計(Exposure meter)の修理です。
なんのことはない、100円均一ショップで売っている電卓をバラして光電池を交換するだけです。
同じ原理で自動露出(EE)の古いカメラも修理できます。 ※ 露出の精度はいまいちです念のため
ただ、ここで登場する露出計はヤシカの超小型で少し作業にコツが要ります。
光の強弱を電気的に捉えて絞りやシャッター速度に反映させれば適切な露出が決まって便利。
暗すぎたり明るすぎたりといった失敗を避けられるというスグレモノ。
P型半導体とN型半導体をくっつけて光をあてると起電力を発生する現象を利用しています。 電流計をつなぐと明るさに応じて針が振れる。
単体の露出計として使うだけでなく、こういったいわゆる太陽電池とメーターをカメラ内部に搭載することを昔の人は思いつくわけですな
。
オリンパスペンはそんな自動露出(EE)カメラのひとつで、レンズの周囲にサークルアイと呼ばれるドーナツみたいなセレン素子を備え、ボディ内部にメーター(電流計)があって、その針の振れで露出(いくつものシャッター速度と絞りの組合せ)をコントロールする仕組みです。
おかげで1960年代当時はメカに弱い婦女子の皆さんやお子様でもシャッターさえ押せば暗すぎず、明るすぎず、ちゃんとした写真がカンタンに撮れることになったとさ。メデタシ、メデタシ ...。
上の写真 OLYMPUS PEN EE-2 は内蔵するメーターが故障しちゃって、やむなくマニュアル撮影するべく外付けの単体露出計を付けてあります。
こういった仕組みが登場する前の時代のカメラではシャッター速度と絞りは撮影者がいちいち設定して撮っていたワケで、光の強さを定量的に知るために太陽電池と電流計をセットにした単体の露出計が作られ、重宝されたのですな。
そのうち欲が出てきて、うんと暗い場所も測りたいということで硫化カドミウムを使ったCdSという素子を使うようになりましたが、それは光を受けて抵抗値が変化する仕組みであるために別途電池が必要でした。しかも当時は水銀電池(もちろん有害)。私に言わせると露出なんておおざっぱな目安でいいじゃないか、ということで露出計は無くてもいいのですが、たまに難しい環境光で撮ることもあるので、やはりあったら便利。でも、そんなときに電池切れなんてことになったら残念感も倍増するというものです。しかも当時の電池は現在では販売されておらず、互換の型番の電池を探さねばならんので余計に面倒です。
だから ... 電池のいらない、ゴミも出ない、環境にも優しい、エコなセレンの露出計をワタクシは愛用しておるのです。
ついでにいえば電池を使うカメラもあまり好きじゃない(理由は同じです)。
露出計は基本的に中古で古い時代のものを入手することになるので、太陽電池 / 光電池 が死んじゃった固体もあります。メーター(電流計)が壊れたものもあります。修理するより別の固体を買ったほうが安いのですが、世間に出回っている露出計は手のひらサイズがほとんど。ここに掲載したような超小型のものは限られるのです。カメラの頭の上にアクセサリシューというのがあって、そこに挿して使うちっちゃいタイプが自分としてはアリガタイ(#両手が使えるしね)。
この写真に写っている YASHICA の露出計は幅 2.5cm 奥行き3cm と、やたらと小さいのです。
オークションで(1000円ぐらいだったかな?)この露出計をやっと探して入手したものの、ホントに壊れて使えない状態。ひとまず分解して接点を磨いたりすれば甦生することもあるのですが、試したところどうやら難しい。幸いなことにメーターは生きてます。
それなら太陽電池を交換すればいいのですな。
(1)ダイソーで100円の電卓を買ってきます。余計な機能が付いていないオーソドックスなヤツ。
前後のパネルを分離すれば基板が現れます。この電卓には電池も入っていて、それを取り出すとネジがあって、
そのネジをゆるめてケースを剥がしました。
赤い矢印で示しているのが太陽電池。多結晶シリコン系でしょうな。半田ゴテで液晶の両脇にある赤と黒のリード線を外して取り出します。
(2) メーターは誤って壊すといけないので、本体ケースから出さないほうがよいのですが、
ここでは構造理解のために取り出して電卓の太陽電池をつないでいます。
本体ケースに組みなおして光に向けて針が振れるのを確認します。
校正用に他の露出計を並べて、振れが大きいようであれば抵抗を直列に入れて調整します。
今回はなぜか抵抗無しの直結でほぼ適正な振れでした。メーター下のマイナスネジのトリマーで微調整して可能な限り正確に合わせました。
抵抗器を交換するのであればカラーコードの読み方ぐらいは覚えておくと便利です。
(3)ひとつ問題発生。露出計本体があまりに小さすぎて電卓の太陽電池の幅がケースに収まりません。困った。
それなら、ということで力技です。電卓の太陽電池の両端を金属用ヤスリで削ります。乱暴にやると割れてしまうのでゆっくり丁寧に。
半田付けの部分は残さねばなりません。ガラスの粉が出るのでこまめに掃除機で吸い取ります。
(4)このヤスリ以外にも目のこまかい精密ヤスリを併用して削ること2時間。
やっとケースに収まりました。疲れた ....
(5)フレネルレンズやダイヤルを組み付けて完成。フィルムを入れて試写へ出掛けます。
結果は良好! 満足のいく仕上がりです。小型なのがイイ!
これを一度使うとライカの露出計なんてデカくて重くて電池も必要でとても使えん ....
ここに挙げたオリンパスペン(EE-2)は内蔵のメーターが壊れていて、それで露出計を付けて使うことになったのですが、
その場合はレンズ周囲のリングをオレンジ色の Flash の絞り選択設定で使います(シャッター速度は1/30秒固定)。
● 今日のPAY
アクセサリシューに取り付けられる小型のセレン式の露出計としてはセコニック(SEKONIC)もあります。
海外にも小さいものはありますが、セレン式でアクセサリシュー対応のモデルとしては、たぶんこのヤシカ製が世界最小だと思います。
今回は単体露出計を修理しましたが、同じ要領でEEカメラも修理が可能です。
光起電力が足りないときは電卓の光電池を2つつないで使います。光起電力が大きすぎるときは抵抗を入れます。
ソーラー電卓(百均ショップにて) ¥100
ヤシカ 超小型露出計(ヤフオクにて) ¥1000
この露出計の使い方というか、読み方も書いておきますね ...
ダイヤルの刻印はちょっと独特でクセがありますが、慣れればどうってことはありません。
LVシステムも併記されているのでカメラによっては便利です。
まず被写体に向けて振れた針を読みます(反射式です:受光式としては使えません)
この例では13から14の黒い目盛(LV値)ですので、お手持ちのカメラがLVシステムを備えていればこの数字にカメラのリングを合わせます。
一般的なカメラ(LVでない)の場合は赤い目盛(ここでは11)が絞り値です。他の絞り値を選びたいのであればこの露出計の外側のリングを回してF5.6とかF22などを選ぶとよいでしょう。F1.4からF32までカバーします。
そしてフィルム感度を下のASAから選びます。 ISO感度のことです。例えば ISO100 のフィルムを使っているなら シャッター速度はその下の赤文字の 1/8秒 になります。
ISO 400 のフィルムを使っているのであれば 1/30秒 です。ISO25のフィルムを入れてあるなら 1/2秒ですな。
老眼同盟の同志のためにデッカイ画像も用意しました。 画像をクリックすれば拡大表示します。
記事:2019年11月22日
しばらく使ってみて、そこそこ撮れるものの、少し使いにくい .....
従来のセレンと比べてみると明るさに対して針の振れ方(光起電力)が直線的ではないようです。弓なりの特性に見えます。
暗い場所と晴天では振れの範囲こそ同じように振れていますが曇りや暗い場所ではピーキーで露出を決めにくいのですな。
セレンは案外リニアな特性に近いのだとあらためてわかります。
まぁ、参考程度に。
2019年12月20日追記
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