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毎年夏になると無性にに写真を撮りたくなり、わけのわからないカメラを買っては、くだらない作品を撮り自己満足にひたる。まったく弦楽器とは無関係に思われそうだけど、じつは意外なところでかかわりがあったりする.... それがCRANEの私的素敵頁(してきすてきぺい)のコーナー。
今年の夏も静かに激しくナイス・ペイっ!
● 今回の私的素敵PAYは「パノラマ写真を撮るためのカメラ」です。
ん? パノラマっていえば、広〜〜〜〜〜い風景とかを撮るアレね? ん? それって「広角レンズ」とか、魚眼(フィッシュアイ)レンズを使った撮影とどこが違うの? ワンちゃんのでっかい鼻の写真撮るアレでしょ? 三脚使ってコマ撮りしてつなぐ方法もあるけど? いいの、いいの。今回はそんなこまかいことは置いといて、わかりやすくいえばフツ〜のカメラでは撮れないようなワイドな写真が一発で撮れるのさ! もちろん苦労してつながなくてもいいぞ。人間の両目で見えるすべての範囲、いや、その限界を超えた範囲を写せるのです。人間の最大視野角は水平(横)方向には200度程度、それに対して垂直(縦)方向はおよそ125度。また、注視したり周囲の状況を確認する時などは注意が向いたぶんだけ視野角が狭くなり、水平方向で110度前後といわれています。しかし、一般のカメラではなかなかそんな広範囲には撮影できません。たとえ撮れても収差(ゆがみ)がひどくて....。
今回のブツは「SONY DSC-W380」です。ちっちゃい! 届いたときに箱を空けて「こんなにちっちゃくて大丈夫なのか!?」と思ったほど。いままでソニーのデジカメって個人的にはあまり縁がなかったのです(吸収合併されたミノルタやコニカも含めて)。でも、ウリであるスイングパノラマ機能が案外良さそうだし、値段もこなれてきたようなので早速ゲットしたというワケ。
・写真1:まずはコレを御覧ください。東京都内の代々木駅。W380でフツーに撮ったものです。
(35mm版カメラ換算の焦点距離24mmで撮影。画角は75度ぐらい)。以下、人物の顔はボカシが入る場合があります(CRANEではいつもそうしてますが)。
・写真2:はい。次が問題の「スイングパノラマ」の写真です! 上の写真と同じ位置に立って撮影(画角は160度ぐらいかな)。どうです? 上の写真と比べてかなりワイドでしょ?
・写真3:こちらは横須賀美術館。今年の夏は記録的猛暑。広々とした芝生の庭から海を望む... 画角は260度ぐらいかな。背後の建物が左右に写ってます。
・写真4:これも横須賀美術館。屋上です。画角は260度ぐらい。あ、ちなみに撮りっぱなしの未加工のデータはこんな感じです。7152px X 1080px
・写真5:これは神奈川県川崎市の尻手駅近辺の踏切。画角は260度ぐらい。自動露出:ISO320 シャッター速度:1/100秒 絞り:F7.1
・写真6:渋谷駅にて。横方向だけでなく上下方向にもスイング撮影できます。激しい人波のために人物は流れて撮影されます。未加工データはココ(人物の顔はぼかしてあります:1920px X 4912px )。上の黒い部分は撮影が中断した証拠。上下でも左右でも時々起こりますが、スイング撮影の途中で手ブレがひどかったり、のんびりやってるとエラーになって中断するわけですよ。あとでトリミングすればOK.
・写真7:新宿駅南口(甲州街道)。フツーのカメラでフツーに撮るのと違って、ここではW380のカメラを横に90度傾けて右から左(下から上)に振って撮影しました。画角は170度ぐらい。未加工データはここです。逆光でフレアの発生する厳しい条件。イヌイミートってワンちゃんの肉ぢゃないよ(笑)。
自動露出:ISO250 シャッター速度:1/1600秒 絞り:F7.1 4912px X 1920px
● 画角が問題なのだ
それを解決するのが「スイング」という概念。フィルムカメラでも昔からパノラマ写真(カメラ)は作られていたわけですが、21世紀のデジカメはホントよくできてるんです。この機種で260度の周囲が1枚の写真となるのです。しくみはといえば、シャッターを押して右から左へとカメラをグイ〜〜〜〜ンと降ってやると100枚ぐらい撮って、それをカメラのなかの小人さんが自動的につなげる... お疲れさんです。短冊状に100枚撮影するのですが、ときどき撮影に失敗するとそのしくみがわかります(以下の作例にも失敗例がいくつか登場します)。
● 撮ってみて気付いたこと
・垂直方向の収差が目立たない:一般の広角レンズで撮影すると建物は樽型に歪んで電柱や建物は傾いて写るのですが、上記掲載の全ての写真を見ればわかるとおり、どれもほぼ垂直が保たれています。
・逆光ではスミアがヒドイ:渋谷で撮影。撮像素子CCDから信号を読み出しているときにCCDに強い光が当たると起こるスミア現象。逆光気味では御覧のとおり、紫色の光の筋が見事に発生します。まぁ、パノラマ撮影なので、どこかにお日さまが映り込むのはやむおえないことですけど。
・動くものは撮れない:撮れないというより「写りにくい」といふべきか。でも、それがけっこう楽しいのだ。動く物は連続的に映り込みます。こういった写真、我ながら渋谷の雑踏をよく現していると思うんだけど...。ちなみにこのカメラではモノクロ撮影はできません。色合いが不自然な作品はあとでモノクロ化したほうがスマートに見えます(この作例ではPhotoShopで私が加工)。
・よくみるとにじみが気になる:撮影した写真を縮小してWebサイトに掲載する場合は全く目立ちませんが、拡大してよく見ればにじんでいるワケです。パノラマ撮影でも同様です。
・ときにガタガタに写る:パノラマ写真は縦長の短冊状に100枚ぐらい撮影して自動合成されるしくみなんです。だからなめらかにスイングしないで手ブレが起こるとガタガタになっちゃうわけです。自動:ISO400 1/80秒 F7.1 0EV
・パノラマで撮ると色が変:この作品は渋谷駅。パノラマで撮ると画質も落ちて退色したように写ることがあります。おそらくホワイトバランスが自動のためでしょう。未加工データはココ(人物の顔はぼかしてあります)。
● ちょっとしたコツでうまく撮れるのだ
・なるべく小さい半径でまわして撮る。理想は三脚を使ってグルリと回転させる。回転半径が大きいと広範囲に撮れません。
・フォーカスロックとAEロック(露出固定):撮影でぐるりと回転させると明るい景色と暗い景色がある場合、暗くなりすぎたり明るく飛んでしまいます。それを防ぐには撮影を始める直前に中間の明るさの方向にカメラを向けて「シャッターを半押し」します。そして撮影開始点の位置にカメラをもっていってから、シャッターを押し込んでグルリとスイングします。つまり、シャッター半押しして明るさを覚えさせて撮るわけです(ピントも固定される)。
・このカメラはマニュアル撮影ができないので、好みのピントの位置や、好みの明るさは「シャッターの半押し」でコントロールするといいでしょう。とくに意識せずにパノラマ撮影すると「取り始めの位置」の明るさとピント位置が固定されます。
● フツ〜にも撮れるけど
このカメラ、ふだんはおまかせオート撮影モード( 自動 )にしておけば、何も考えずにカメラを向けてシャッター押しただけで、けっこう緻密に写るのです。さすが1400万画素。しかし撮像素子(センサ)が小さいこともあって、拡大すると「にじみ」が気になります(背景もなかなかボケてくれない!) 便利なところは、被写体に近づくと勝手に接写/マクロモードに切り替わるのでよけいな心配をしなくてもすみます。
撮影例1(未加工データ 4320px X 3240px):背景はなかなかボケません。拡大して等倍表示させればシャープなハズの部分のにじみ具合もわかるでしょう。
撮影例2(未加工データ 4320px X 3240px):がんばってもこんなカンジ。F2.4のレンズでも撮像素子が小さいので背景をぼかすのは困難。
おまかせオート撮影モード( 自動 )は案外よくできてます。たとえば、P自動モードにして、少し暗く設定すれば絞りF値が増えるハズだから、しっかりピントの合った描写になるであろうと期待したのです.... が、逆効果でした。以下の作例の比較のように余計なコトをしないほうが綺麗に撮れてます。にじみ具合に注目。
おまかせオート撮影モード( 自動 )でなにげに撮影:ISO80 1/250秒 F3.2 0EV。それと、ちょっと欲を出して、綺麗に撮ろうとP自動モードでちょい暗く設定:ISO100 1/80秒 F9 -1EV この2つを同じ被写体で比較したのが次の写真です。
撮影比較例
手ブレ補正機能もなかなかです。次の写真は同じ建物をおまかせオート撮影モード( 自動 )にて、めいいっぱいブームアップして撮影した例です。おおむね100ぐらい離れています。夕方とはいえ天気が良かったこともあり、手ブレは良く補正されてます(にじみはけっこう出てるけど)。ISO80 1/250秒 F5.9
ズームアップ撮影例(光学ズーム) 未加工データ
● スイングパノラマが撮影できる機種
2010年9月1日現在
以下の表だけでなく、NEX-3やNEX-5でもスイングパノラマ機能が使えるようになりました。
おそらく今後も新機種が発表されるでしょうから、最新情報はメーカーサイトで確認してください。
【機種別ワイドサイズ】
SONYのデジカメではかなりのモデルでスイングパノラマ機能を搭載しています。モデルによって撮影できる角度が異なります。 高速連写枚数、合成時間も各モデルにより異なります。機種が多すぎて比較が面倒です。
DSC-WX5 最大295度
DSC-TX9は最大281度
DSC-HX5Vは最大270度
DSC-W350/DSC-W350Dは最大268度
DSC-T99/DSC-T99Dは最大265度
DSC-W380は最大260度 ←わての(合成はおおむね1秒程度)
DSC-TX7は最大258度
DSC-TX5は最大258度
DSC-H55は最大244度
DSC-HX1は最大224度
DSC-TX1は最大185度
● 今日のPAY
メーカーの発売日が2010年1月頃になっており、価格ドットコムでさかのぼって調べたところ、2010年 1月18日の時点で29,800円。まだ1年も経っていませんが、今日(2010年9月2日)現在で16,400円(税込)です。
半額ぐらいで購入できます。今後さらに安くなっていくのでしょうね..... 。
私は16700円+5%で5年保証を付けたので 18245円 でした!
購入以来、毎日のように持ち歩いて撮ってます。
● 楽器をパノラマってみる?!
グフフフフ.... そうさ。接写のスイングパノラマも撮影できるのさ。未加工データはこちら 4912px X 1920px
御覧のとおり、ちょっと失敗。いかにW380が小さいとはいえ、ギターのサウンドホールからカメラを入れるのはタイヘン。
(1)まずはLEDライトと木片を用意します
(2)テープでライトをカメラに合体! 海底探査船みたいでカッコイイ!?
(3)カメラをギターのボディ内へ入れ.... は! 入らん!
なんとかボディ内にカメラを入れても、スムーズにスイングさせるのが難しく、どうしても以下のような段差のついた写真になります。角度もまだ不十分ですね。もうひとつ問題点としてはシャッター半押しにして、撮影開始位置に戻してからスイングするのも困難です。なんらかの治具を作ればもっとうまく撮れるでしょう。
● SONY DSC-W380のおもな仕様
スイングパノラマ撮影はもちろん、画角が24mm(35mm換算)、動画も撮れちゃう。手ブレ補正もアリ。これらがウリ。
個人的にはサイズが小さくて軽いので、いつも持ち歩いているのだ。
・ひとふり「スイングパノラマ」機能:最大260度パノラマ写真
・4方向のパノラマ撮影に対応:上下左右。それぞれ標準幅とワイド幅が選択可能
・光学式手ブレ補正:内蔵ジャイロセンサーが感知、シフトレンズで補正
・光学5倍ズーム:35mm版フィルム換算で24mm-120mm (F2.4-5.9)
・高性能「Gレンズ」デジタル一眼レフカメラα用ソニーの最高峰レンズと格付けされている
・有効1410万画素1/2.3型CCD:ソニーSuper HAD CCD
・画像処理:デジタル一眼αにも搭載、ソニー独自の画像処理エンジンBIONZ(ビオンズ)
・高感度ISO3200:高感度で発生するノイズは「クリアRAW NR」で低減。
・Dレンジオプティマイザー:逆光時での黒つぶれや白とびを大幅に軽減。でもスミアは消せない。
・おまかせシーン認識:これはホントにおまかせできるかも!?
・ハイビジョン動画(720p)を撮影可能。高圧縮のMPEG4に対応:最大29分
・撮影距離(レンズ先端から)5cm-50cm-∞
・シャッタースピード:2-1/1,600秒
・自動/80/100/200/400/800/1600/3200
・SONYメモリースティックのほかSDメモリーカード/SDHCメモリーカード/SDXCメモリーカード
・内蔵メモリー: 約45MB 私は2GBのSDHCメモリーカードを使ってます。Rawでは撮れないカメラなので充分です。
・連写:約1.5枚/秒(最大4枚)
・パノラマスクロール再生可能
・バッテリー:NP-BN1 リチウムイオンNタイプ 現時点ではまだ互換バッテリーは売られていません。待ち遠しい....
・ 外形寸法(幅×高さ×奥行) 91.7×51.9×20.9mm
・質量:約124g このサイズと重さが命!でかくて重いなら買わん。
● 関連サイト
【SONYのサイトより:W380】
・SONY http://www.sony.jp/cyber-shot/products/DSC-W380/
【機種別ワイドサイズなど】
・SONYのパノラマのサイト:搭載モデルなど:2010年9月2日現在
おそらく今後も新機種が発表されるでしょうから、最新情報はメーカーサイトで確認してください。
【パノラマ写真をパノラマ印刷する】
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SONYのサイトにも案内されていますが、全国にこのパノラマ写真をプリントして額装してくれるお店があります。
ソニー「スイングパノラマ」対応店一覧:http://www.refocus.jp/photostudio/search/panorama/
・オンラインで申し込むことも、もちろんOK
インターネットプリントサイト fotofoo:http://www.fotofoo.com
※ 写真の撮影はプライバシーに配慮しましょう。
記事掲載:2010年9月2日 各製品の最新情報はメーカーサイト等で御確認ください。
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