|
● セラックって?
セラックニスをご存じですか? シェラックとも呼ばれています。楽器や家具などに塗料として使われている......ぐらいのことはご存じかもしれません。あるいはみなさんも「虫の分泌物を精製して作った塗料」というような話を耳にしたことがあろうかと思います。
ギターやヴァイオリンでは古くからオイルニスやセラックニスが使われてきましたが、現代では楽器の塗装といえばアクリル/ウレタン ラッカーやポリウレタンといった強度優先の分厚い石油系の化学合成樹脂の塗料が主体です(ニトロセルロースラッカーは植物由来)。
シェラックニスは紀元前2000年にはすでに染料などに使われていた昆虫由来の天然樹脂です。化学的に安定なうえに環境にも優しく、何より独特の深い艶が特色です。セラックで塗装された楽器を一度知ってしまうとラッカー塗装やウレタン塗装が玩具の塗装に見えてしまうほどです。また、美しいだけでなく塗装膜を極限まで薄く塗ることが可能であり、19世紀初頭のルネ・ラコートなどは表面板に軽く一拭きした程度のセラック塗装がなされているほどです。19世紀のC.F.Martinがそうであったように1925年以前のMartinもほとんどはシェラック塗装でした。
ウレタンのスプレー塗装に比べるとセラック塗装は技術を必要とします。そのため量産楽器には用いられず、たいていは個人の弦楽器製作家がオーダーメイド品で採用していることが多いのです。
じつはこの「セラック」、以外とその実態を知られていないようです。かくいうワタシも今まであいまいな知識でありました...。ここでは初心に戻り、セラックについて正しい理解を得るべく読者の皆様とセラックの真相に迫ってみようというわけです。
● 写真:「アメリカネムノキ(マメ科)」の枝に付いたスティックラック
● セラックの語源
【資料提供】 (株)岐阜セラツク製造所 ■「PART.1 天然樹脂・天然物製品案内」 ■「RETROF LETTER」第1報〜第5報 / 技術部
|
ここまでの記事:1998年11月
● 楽器の塗装(2011年8月追記)